第88ページ 戻りて後の一騒動
それからは、地球の話をして過ごした。
ティア女王は、悲しそうな顔を取り繕うように、俺の話を笑顔で聞いていた。
時間は過ぎ、気づけば朝だという。
アステールは家に入らず、妖精たちと遊んでいたはずが、俺が外に出てみると一緒になって寝ていた。
アステールをベッドのようにして寝ている妖精たちを見ると、なんだか微笑ましくて、女王と顔を合わせて笑ってしまう。
「妖精は、疑うという心を持ちません。人によって狩られていた時期もありました。しかし、どうにかこの世界を創り、逃げ込んだのです」
話す女王は、また何かを憂う表情をしていた。
まるで、それが自分の責任であるかのように語る。
「ここでは笑って暮らせますが、だからこそ人にはここの存在を秘匿せねばなりません。しかし、妖精とは人と共に生きるモノです。私たちは、本来ならば自然に棲み、家に住み、人と共に在るモノなのです。ここでの暮らしは所詮、仮初の幸せでしかないのですよ」
「…」
ここに来たとき、妖精たちはそれはもう楽しそうにしていた。
それは人と会うのが久しぶりであったからなのか。
妖精と共に生きる筈が、人が関わり方を誤ったせいで追いやられてしまった。
その悲しみはいかほどであったのか。
想像もつかない。
「俺でよければまた来るよ」
そう言うと、女王はそれはもう幸せそうに微笑んだ。
「是非いらしてください。貴方の旅路に、幸あれ」
《「妖精女王の加護」を獲得しました》
《称号「妖精の友」を獲得しました》
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目を開けると、朝日が眩しい。
池は静かに動かず。
花々を風が揺らしている。
二人の子どもの姿はなく、人の気配もしない。
まるでさっきまでのことは夢であったかのように思えるが、胸に輝くペンダントが現実であったと伝えてくる。
女王の話では、妖精郷への入口はここだけというわけではなく、自然に囲まれた池や湖からならばだいたいは行けるらしい。
このペンダントは、その通行証も兼ねているそうだ。
「綺麗な場所だったなアステール」
「クルゥ」
眠そうに欠伸をするアステールを撫でながら呟く。
綺麗な場所で…綺麗な人だった。
口に出しては言えないが。
「戻るかアステール」
「クル」
俺たちは、宿屋へと戻る。
もう朝なのであまり寝れないが、昼には出発すると言っていたから少しは寝ておきたいところだ。
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ベッドに戻り、一眠りすると何やら外が騒がしくなっていた。
またトラブルか、とヤレヤレと思いながら部屋を出る。
俺の部屋は、一応護衛ということなのでラッセン辺境伯の隣の部屋だ。
俺とギルバートで挟むようにして辺境伯は休んでいる。
隣の部屋をノックし、名乗る。
入れの声が来てから部屋に入ると、ギルバートとフランチャー子爵がいた。
「ちょうど呼びに行こうと思っていたところだ」
「何かあったので?」
「それがな…」
「私から説明致します…」
フランチャー子爵によると、今朝方早くのことだが、何者かがビークイーンの巣に攻撃をしたそうだ。
まだ解析が済んでいないが、何らかの魔法薬によるもので、幸い巣に目立った被害は出なかったが、蜂達の何匹かが身体を痙攣させた。
命に別状はないようだが、当分は安静にしておく必要がある。
ビークイーンはこのことを怒り、フランチャー子爵に犯人を差し出せと要求。
子爵はこれを受け、現在調査中であるということだ。
「それで?」
「それで…シュウ様に調査を依頼したく…」
なるほどね。
俺はチラリとラッセン辺境伯を見る。
現在俺は、辺境伯の依頼を受けている身だ。
どうするかは辺境伯が決めることだろう。
その視線を受け、辺境伯は少し考えたあと頷いた。
「わかりました。お引き受けいたします」
「ありがとうございます!」
報酬は蜂蜜がいいな。と思いながら、俺は差し出された子爵の手を握る。
黒葉周 17歳 男
冒険者ランク:A
HP:11100
MP:12000
魔法属性:全
<スキル>
格闘術、剣術、槍術、棒術、弓術、刀術、棍術
基本六魔法、氷属性魔法、空間属性魔法、無属性魔法、神聖魔法、暗黒魔法、魔法陣術、召喚術
馬術、身体強化、魔力制御、完全回復、天足、覇気、解体、看破、隠形、危機察知、魅了、罠解除、指揮
耐魅了、耐誘惑、耐幻惑
礼儀作法、料理、舞踊
<ユニークスキル>
天衣模倣、完全なる完結、全知眼、識図展開、竜の化身
<称号>
「知を盗む者」、「異世界からの来訪者」、「武を極めし者」、「すべてを視る者」、「竜殺し」、「下克上」、「解体人」、「誘惑を乗り越えし者」、「美学に殉ず者」、「魔の源を納めし者」、「全能へと至る者」、「人馬一体」、「無比なる測量士」、「翼無き飛行者」、「竜の友」、「神掛かみかけ」、「破壊神の敵」、「半竜」、「湯治場の守護者」、「妖精の友」(new)
<加護>
「創造神の期待」、「戦と武を司る神の加護」、「知と魔を司る神の期待」、「生と娯楽を司る神の加護」、「鍛冶と酒の神の加護」、「炎竜王の加護」、「大海と天候の神の加護」、「妖精女王の加護」(new)




