序章
勉強、勤勉、勉学、どれもこれも同じ意味。どこぞの有名私立学校では勉強の二文字なんて日常茶飯事、なにが楽しくて勉強なんかしているのだろうか。物事を知れば良い、応用できる頭を作ればよい、そんなこと誰が決めたのだろうか。知って良いことと知らなくても良いものがあるのに。
あったのに。
「思われにきび」
ある女の子が同じクラスの男の子に思いを寄せていました。
日に日にその思いは強くなっていきました。
しかし、その男の子は美形で多くの女子から人気があり常に女子に囲まれていてあまり話す機会がありませんでしたした。
そんなある日、思いを懸けられていた男の子の鼻に大きく目立ったにきびができました。
きれいに整った顔がにきび一つで台無しになり、自己管理もうまく出来ないという理由でその日を境に人気は無くなりみんな彼から離れて行きました。
それでもあの女の子だけは彼を思い続け、ついには思いを伝えることができ今も幸せにしていました。
めでたしめでたし。
どこかで聞いたような都市伝説じみた話で目を覚ました。今は昼休憩の時間だろうか、生徒はまばらでお弁当を広げているものもいる。そして隣で屈託のない笑顔で呪文を唱えていた奴がいる。男子であるが身長は低くクラス内ではこびとと呼ばれることもある、同じクラスの天草玲人だ。
ふつう面白くても面白くなくても話を語り聞かされたら気持ちよく安眠できるはずなのだが、今回の場合は話が話、気色が悪くなりそうな話で起こされた。しかし、このこびとは屈託のない笑顔で聞いてくる。
「どうだった今回のおとぎ話?僕的には今までで一番の自信作なんだよね」
「何が一番の自信作だよ。人の安眠邪魔しておいて」
おとぎ話、本人が言うには現代版の童話を自分なりに作っているらしい。それが高校入学当初に出会ってからもう一年と少し、もういい加減飽き飽きだ。この学校に入ってまさか俺の昔の幼馴染みと再会して、天草が感化されるとは思っていなかった。その幼馴染みというのが学年トップの成績を誇る栖原 才。身長も高くスタイルも良いので女子からは人気がある。昔、といっても小学校時代は仲が良かった。童話や絵本が好きでよく話してくれた。そのうち自分でも物語を作っては聞かされていたのはいい思い出だった。小学校を卒業し、別々の中学校へと進みまた高校で一緒になった。以前は明るく活発であったが、今では見る影もなくおとなしめになっていた。そんなことを思い出しつつ彼の席を見たが、休み時間も半ば過ぎたのに彼の姿はなかった。
「邪魔しておいてって言ったってもう授業終わってるよ?お昼を食べようよ!考えたおとぎ話はまだまだあるから聞いてほしいし」
「・・・断る」
「えーひどいなぁ、ていうかさっきのおとぎ話の感想もまだ聞いてないんだけど」
「あーはいはい、面白かったよ」
「感想もひどかった!」
気色が悪かった、と本心を言わなかっただけありがたいと思え、と言うのがめんどかったため心の中に収めつつ休み時間の残りを無駄にしないようまた眠りにつこうとする。次の授業は体育のため教室で寝ていることができないからだ。
「っていうかお昼一緒に食べようよ、休み時間終わっちゃうよ?」
「うるせぇなぁ、俺は寝る」
「女の子が汚い言葉使っちゃだめだよって何回も言ってるのに。それに授業中ほとんど寝てるのに学年順位の上位に入ってるのもすごいよね」
次から次へと言葉の減らない奴だ彼女は思う。自分のことを俺と呼ぶ海藤 雪は女だが汚い言葉を使うかは俺の勝手だと思う。そして彼女にとって、教科書を読めば解けるレベルのテストで点数が取れない意味がわからなかった。女子であるが身長も高く、男勝りであるため女友達は少ない。とっつきやすいという理由からか男子からのうけは良かった。好きなものはカレーライス。
「そうだ!放課後になったら僕に勉強教えてよ。期末近いし点数取れる気がしないんだよね」
「・・・断る」
「そんなこと言わないでよ、coco1のカレー奢るからさー」
「・・・その言葉取り消すなよ」
「やった!雪に教えてもらえれば赤点は免れる!」
浮かれている天草だったが余鈴のチャイムが鳴り呆然としていた。そういえば昼ご飯を食べようと催促されていたことを思い出した。
「次は体育か、食っとけばよかったな」
後悔してもしょうがないので体操着をひっつかんで教室を後にする。ふたすら開けてもらえなかった弁当箱と別れを惜しむような後ろ姿の天草を置いて更衣室に向かう。この時、パトカーと救急車がけたたましいサイレンを鳴らしながら学校のそばを通り過ぎたが海藤には興味なかった。
他にも面白い作品がある中この雑な物語を読んでいただきありがとうございます。この話の終わりはちゃんと考えてあるので書こうと思えば書けるのですがいかんせん中の人が忙しいので気がむいたらの更新になります。なんにせよ読んでいただきありがとうございました。