part6
暗い室内で死神こと、このゲームの支配者は笑ってた。
黒いフード付きのマントを頭までかぶり薄気味悪い仮面をつけている。
「ハルスティンさん……はは、愉快です。勝者は願いを一つだけ叶えることができる。それをどのように使用するかはその人次第……。きっと勝者はハルスティンでしょう。彼女は依頼のためならなんでもしますし……そうですね、さしずめ護衛対象が死んでいた場合、復活でしょね。死んでいなかったら……なんだと思いますか?」
彼は誰もいない部屋の中で質問する。
――否。そこには湧いて出たように一人の男がいた。
暗い室内で一人だけ神々しく光り輝いている存在……正しく神だ。
「まずわたし的にはハルスティンさんは勝者じゃありませんよ。きっと……」
神は死神の意見に賛成はしなかった。それどころかこんなことも言い出した。
「鍵は羽島くんでしょうね」
「は? 羽島ってあなたがこの世界に連れてきた何の取り柄もないただの高校生ですか?」
死神は、さもわけがわからなさそうに仮面のついた顔を傾けた。
「わからないんですか? ま、知らなくていいのかもしれませんね」
神はやや試すように、挑発的に死神に言放つ。
そして死神も挑発的に返した。
「あなたの予想が当たってたらその人物は願いを二つ叶えられるようにしましょう」
「それじゃあ、七姫星歌さんでお願いします。……期待しています、達也君」
そう言って、神は去っていった。
そう。この『JOKER GAME』は、双方の神が手を組んで作り出したゲーム。
「準備は出来たか?」
さっきまでは星歌も裕太も重装備なうえ、ふざけていた様子だったので、半ギレの状態で迫ったのだが、今回は大丈夫そうだな。
「バッチリだよ!」「こっちも準備オーケーです」
軽量化に成功した二人はさっきよりも真剣な様子で立っていた。
二人とも拳銃を左右のポケットに一丁ずついてれて、後ろのポケットにはマガジンが二、三個入ってるように見える。
さらには、背中にアサルトライフルを背負っていた。
「じゃあ……行くか!」
俺はというと、銃より近接戦が良いかと思ったので、刀と一丁の拳銃と、グレネードを何個か持っている状態だ。
(やっぱり刀じゃ重いか……一本くらいナイフ持ってくか)
そう思い武器置き場を再び物色する。
そのとき裕太が声を上げた。
「――誰ですかっ!? 出てきてください!」
慌てて俺と星歌が振り向いた。
だがそこには誰もいなかった。
「……おい、誰もいないぞ?」
「おかしいですね。確かにいたんですけど……」
首をひねってさも不思議そうにしている裕太をみると、どうやら嘘を言って騙そうとしているようには見えなかった。
「裕太くんも疲れてたんじゃない?」
優しく声をかける星歌をよそにもう一度、裕太が見ていた方向を見る。
そこで達也は地面に何か光っているものが目に入った。
「……?」
ゆっくり近づくと、銀色の首飾りが落ちてるのがわかった。
「なんだろ……武器なわけはないから、誰かがおとしたも……」
そこで台詞は止まった。
達也が立っているところから裏路地のように狭い道があり、その奥からこちらをじーっと睨んでいる同年代くらいの少女を発見したからだ。
「これ、お前のか?」
首飾りを拾い、その少女に見せる。
そうすると少女はこくりと小さく頷いた。
「そうか。ここは危険だからあんまり動いちゃダメだぞ? 死神が来たら逃げたほうがいいけど」
「あなたたちは襲わない?」
少女は俺の忠告も聞かずに唐突に妙なことを聞いてきた。
「あのな。襲うのは死神だぜ?」
「違う。少し前におじさんに襲われた事ある」
あ、こいつ……もしかして襲われたって、レイプされそうになったてことか。
咄嗟に思いついたものが俺の中の日常ではニュースやネットの中だけでのものだったがどこにでも被害者はいるものだな。
「大丈夫だ。俺は襲わないよ」
確かにこの少女は可愛いと思うが、俺は非常識じゃない。
「お父さんのお友達のおじさんもそう言って襲ってきた」
「お父さんの友達? お前の家ってなんか複雑な事情なのか?」
もしかしたら家が貧乏で、親に売られたとか……?
そう考えて思考を中断した。
今すごく失礼な質問しちゃったんじゃないか、俺?
「わ、わりぃ。俺にいうことじゃないよな」
すぐに詫びを入れたが、少女の反応は俺の思った反応とは違った。
「別にいい。私の家はお金持ちで、なにも複雑なことはないけどお父さんがいないことが多かったこともあったよ。私が襲われた時、お父さん用事で出かけやって残ったお父さんのおじさんが……うぅ」
「お、おい。言いたくないなら、無理するな!」
突然泣き出しそうになった少女のそばに駆け寄り背中をさすってやる。
「……ありがと。大丈夫だから。……それでね、あとは私のところに近づいてきて、頭を撫でたり、背中とかお尻とか、足とか触ってきて……とっさに私は身の危険を感じて、近くにあった花瓶でおじさんの頭ぶっちゃって……赤い血が、血がぁ」
再び、思い出して泣きそうになった少女を抱きしめた。
「大丈夫。安心しろ、今は俺がついててやるから安心しろ。お前を襲おうとするやつは俺が追っ払ってやるから」
「うぅぅ……うわぁーーん」
張り詰めていた糸が切れたのか、彼女は泣き出した。




