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狂愛  作者: AGEHA
9/12

第9話

 ~ルカside~


「……はい?」


 間抜けな声を出したのは紛れもない俺。


「だーかーらー! 可笑しいんだって! レンと秋山さんがっ! 今さっきだってレンが泣き笑いしながら追いかけてきて怖かったんだからね!?」


 姫は上目遣いに睨みながら俺を見る。

 なんか色々な疑問が出てきて頭の整理がつかない。


「え、と? 結局レンは死んでないってこと?」

「なんで死ぬのよッ! 今もあそこで何かしてるじゃない!!」


 え? あそこ? と首を傾げながら姫が指差す方を見ると秋山がレンに漫画で良くある『あーん』とやらをさせているのが見えた。


 レンは泣きながら口を開けているが秋山は心底楽しんでいる様だ。

 ……いいの? アレほっといて。


 唖然としながら見ているとレンが俺達に気づいた様で顔を真っ赤に染めた。


「あははー☆ レンってホンマにおもろいわー」


 ……可哀相過ぎるレン。

 一体秋山はどんな心境でこんな事をやり始めたのか知らないけどレンは明らかに玩具にされてる。


「……たすっ助けろルカ! ロイっ」

「ごめんね? レン」

「様を付けろと――じゃなくてッ待て! ……待て――――い!!」


 レンの叫び声も虚しく、俺達はソソクサと自室へ戻った。


 ――パタン――



 ――数時間後――


「……悪かったってーそういうつもりじゃなかったんだけど……」

「じゃあどういうつもりだッ!」


 目の前に居るのはムスッとしたレン。

 何故か血も出てるし手首に何らかの跡がついている。恐らくレンが逃げようとしたのを秋山が布かなんかで結んだんだろう。……あくまで推測だけど。


「悪かったよ……でも死ななくて良かったじゃん」

「あんなんされるなら死んだ方がマシだッ! 生殺しじゃないか……っ」


 レンは思いだした様に瞳にうっすらと涙の膜をつくる。

 暫くの沈黙の後、口を開いたのは俺だった。


「……親に、会ったよ」

「え」

「何で会わせたの?」


 強くそう言うとレンは口籠りながら言った。


「……お前を……夢から醒ます為だ」

「はっ、夢って? 俺はとっくに目なんか覚めてるけど」

「……覚めてなどいない。俺は……お前が家族と会う事で何か変わるんじゃないかと思って会わせたんだ。……結局ソレも失敗に終わったがな」

「……『何か変わる』ってなんだよ。お前等が引き離したんじゃねーのかよ!!」


 はぁはぁと息を切らしながらレンを睨みつける。

 レンは笑みを浮かべた。でもその笑みは楽しい時の笑みでも無く、嬉しい時の笑みでもなく


「そうか……俺が引き離したんだよな。……ごめんな」


 ――――苦しさを交えた笑みだった。


 なんで


「……っ……んでそんな笑い方すんだよ」


 背を向け、歩いて去ろうとする俺にレンは呼びとめた。


「……! 待て……っ母には! 母親には会ったのか……!?」

「会ってないけど」


 そう言うとレンは曇らせていた表情を更に曇らせて


「……分かった。お前はもう自室に戻ってろ」


 その一言だけを残し去っていった。


     *



 『ご家族は貴方の事覚えてませんからね』


 『夢から醒ます為だ』


 ロイやレンに言われた言葉は、今でもこだましていて、ベッドでゴロゴロしながら今まであった事を考える。

 ――――俺だけじゃない……そんな事分かってた筈だ。

 俺に連れられてきた姫だって、どんな思いで……


 『なにそれ……ふざけないで!』


 『たまたまって何よ……私にはお母さんが居る、友達が居る』


 ――あの時どんな思いでそう言ったのだろう。

 涙ぐんで声も震えていた。なんで一番分かってやれる筈の俺が何も助けようとしなかったのだろう。

 ……自分勝手に連れてきて姫の気持ちを考えたりしていなかった。同じ様なことをして姫を傷つけたのは紛れもない『俺自身』――


「……――――っ」


 俺は声を殺して泣いた。

 その涙は誰からも拭われる事もなく、誰からも気づいてもらえる事もなく。

 ……ただただ頬を伝う涙はとても生暖かい涙だった。


 ~ルカside 終~



     *


 なんかルカ……元気なかった様な……

 そんな事を考えながら歩いていると、ふわふわとした金色の髪が目についた。


 ――――キャメロンさん、だ。


「こんばんは、ヒメちゃん♪」

「こ、こんばんは」


 しどろもどろにそう言うとキャメロンさんは、ふっと柔らかい笑みを浮かべる。


「何処かへ行ってるの?」

「いえ、何処か、というかちょっと散歩に……」

「へぇ? ねぇ貴女のお母さんって何やってる人?」


 ――――え、なんでいきなり?


「あ、えと……美容師を……」

「じゃあお父さんは?」


 ……一番聞かれたくない事を聞かれてしまった。

 ――なんて答えよう? 


「お、父さんは――――」


 私は困りながら俯く。

 だって何を言えばいいの? ……何から?


 もう居なくなった存在の人の事をどういえばいいの


「……ごめんね? ちょっとイジメ過ぎちゃったかな」


 「え?」と声をあげて聞くと、彼女は満面の笑みを浮かべながら言った。


「私ね? 貴女のお父さん知ってるわよ」


 ?


 どういうこと?

 目をパチパチとさせながらキャメロンさんを見つめる。


「ちょっと分かりづらかった? ――――貴女のお父さんはね、実はこの世界に居るのよ」





 ――――え、いま……。


「キャメロンさん……今なんて」


 私は、目を見開いて尋ねる。だって、嘘でしょ? 聞き間違いでしょ?

 お父さんがこの世界に居る筈なんて無い……。嘘に決まってる。


「嘘じゃないわよ、貴女の父親はこの世界に紛れも無く居るわ」


 話を聞いて、瞳を見て、嘘じゃないって事は、今思えば気づいていたのかもしれない。

 でも、それでも……どうしても信じられなくて。私は咄嗟に気づかないフリをしていた。


「……嘘です。父がこの世界に居るはずなんて無いです。父は……私と母を置いて……イタリアに行くって言ってましたから」


 常に冷静を保とうとする私に、キャメロンさんは少し顔を歪め、言った。


「信じられないかもしれない……だけど本当なの。貴女のお父さんは貴女には顔を合わせられないと言ってるけど……私は絶対に会うべきだと思うわ」


 一見普通に聞こえる会話だけど私には何かが引っ掛かった。

 だって。


「お父さん……私がこの世界に来たこと知ってたんですか……?」


 知ってて何も言わずに……此処で平然と暮らしてたの……?

 そう思うと今までお父さんの事を考えてきた自分が馬鹿らしく思えて。


「知っていたわよ。でも最初っから知ってた訳じゃ――――ってちょっと!? 姫ちゃん!? そっちは――」


 知ってたんだ、ぜんぶ。

 私がこの世界に来ていることも。なのにどうして会いに来てくれなかったの?

 ――――今まで私が悩んできた事って何だったの。

 

 思えばこの時、ちゃんとキャメロンさんの話を最後まで聞いてれば良かったのかもしれない。

 素直に従っていれば良かったのかもしれない。そうしたら――――こんな最悪な再会なんて無かったはずだった。走りに走って着いた所は……。


「……おと、うさん……」


 此処だったのだから。

それぞれに与えられた試練……どうなりますことやら。

ごめんなさい……ものっそ下手ですグダグダです…

誤字、脱字等ありましたら気軽にお伝え下さい。

評価、感想、お気に入り登録、レビュー等心よりお待ちしております(>_<)っ

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