第5話
Would you like to dance with me?
――私と一緒に踊りませんか――
welcome! dancepartyへ
「……メ」
声が、する
誰の……?
うっすらと瞳を開けるとぼんやりとした視界が広がる。
「ヒメっ」
……って
「ロイッ!?」
がばっと勢いよく起きあがると少し吃驚したロイが居た。
「ロイ私なんで?」
こんなところに。
ここは病院。元の世界よりちょっと殺風景かも。
ロイが居るからそこまで怖くはないんだけど。
コレが一人で居るんだとしたら絶対怖いよな、うん。
「ていうかもう気に―――」
答えてくれなかったから話を淡々と続け、言おうとする。
“あの事は気にしなくていいよ”って。
でも言う事が出来なかった。
何故って?
ロイが私を抱きしめたから。
「ロ、イ……? どうしたの……?」
ロイの胸にすっぽり入った顔を横に向けて聞く。
「……良かった」
ロイは安心した様にボソッと呟く。
「……間に、あった」
「? 何が?」
そう言うとロイはハッとした様に
「ルカにされたの覚えてないんですか? 貴女危うく吸血される所だったんですよ」
こんなことを言う。
って
「……吸血!? もしかしてあの……」
刺さった様な痛み……
アレが吸血される前だったの!?
「そうです、ヒメの悲鳴が聞こえたから僕急いで駆けつけたんですよ、吸血はされてないんで大丈夫です」
“ヒメの悲鳴”ダジャレかよ!!!
……はい、すみません、本人全くもってそういう意味って顔してませんな。
「っていうか吸血されたらどーなんの?」
「貴女もヴァンパイアになります」
「……はぁ!? 私危なかったじゃん!!!」
「ですね」
「……っていうかロイ、ルカは?」
こんなことした原因の人物が病院に来てないなんておかしくね?
「ルカは―――」
?
「ルカは何?」
言いにくそうな顔をしてロイが口を開く。
「……処刑所です」
って。
って……??
「は……? なんでルカが処刑所?」
あんだけで処刑されんの?
……って“あんだけ”じゃないじゃん!! そういえば!!
危うくSMプレイされて吸血されてヴァンパイアになる所だったんだから!!
「……も、もちろんそれもあるんですが……ルカに聞いたんです、ルカは僕の為ではなく自分が気にいってこの世界に連れてきたのだと」
「うん……それで?」
「……この国ではそれは違法になります」
……違法?
「……でもそれをルカは処刑する人達に言ったの? ロイに言っただけならバレてないんじゃ――――」
「言ったんです」
……は?
「何、を? 誰が……」
「ルカの事を僕が」
なんで?
伝える必要があったの?
「許せなかったんです。僕の為とか言いながら僕をかき乱してあげくの果てには自分の為だなんていい加減にも程があります。この位の処罰あの人には必要なんですよ」
淡々と続けるロイに私は心底腹が立って怒りが、……爆発。
……ありえない
「そ……れだけで殺すっての!?」
「え?」
「ありえない! この国は可笑しいんじゃないの!?」
「お、落ち着いて下さい、ヒメ……」
「大体ロイもおかしい! その位許せばいいじゃない! そしたらルカも死なずに済んだのに――」
「……勝手に殺さないでよ、姫」
「あ、ルカ処刑はどうでしたか?」
……え
「ああ、大変だったかなちょっとだけ」
「あのぉ……」
「その位大した事ないですよ♪」
「ルカって……」
「……お前なぁ」
「死……」
「まぁお大事にってとこですかね」
「~~~……ッひ人の話を聞けごら―――!!!!」
二人は唖然と私を見る。
構わず私はルカに聞いた。
「し、死んでなかったの!?」
「ご希望道理死んでないけど?」
ルカは鼻で笑った様にして、いけしゃあしゃあと言う。
「処刑って……」
「死刑じゃないんだから、つかただ姫が馬鹿なだけじゃん?」
「馬鹿じゃないし! 誰だってあんな真剣に言われたら死んだと思うよ!!」
「まぁそういう勘違いも可愛いよ♪」
「ふ、ふざけないでっ!」
そう言って反論してるとそれまで黙っていたロイが口を開いた。
「……お二人の世界に入るのやめて下さいませんか?」
……はい笑顔怖いですよーロイさん。
――――
―――――
私はロイの昔の恋人(通称:ヒメ)、実羽さんの事について聞いた。
なんでも大きな城の姫でありながらこの異世界へと自然に導かれたヒメであると言う。
ロイはその時今みたいに真面目じゃなく荒れていてそれを変えてくれたのが実羽さん―――
……でその実羽さんは心臓病で死んでしまった。
「……そういう事だったんだ……」
ドラマみたい……
「……すみません黙ってて」
「イヤいいんだけど! ……けど顔が似てて間違ったって事だよね……」
それはそれで複雑、だよな……なーんて。
「本当にごめんなさい……自分でもあまり意識が無い内にそんな事をしていて――――もうなんで自分があんな事したのか……」
そこまで言って俯いた水色の瞳には零れそうな程の涙が溜まっていた。
……そんな表情にもキュンときちゃう私は本当に最低だな。
「大丈夫だから! もうお互い忘れよっ?」
「……ありがとうございます……」
ロイは不安そうに上目遣いで私を見る。
……その顔反則だってば……!
「……ねぇ今日パーティーだって事忘れてない? そこのお二人」
……うんうん、ぱーてぃー……
……ってパーティー!!?
「わ、わわわ忘れてたッ!!!!」
「僕はもう大丈夫です」
「俺もー♪」
「ええ! ロイ準備終わってんの!? わ、私も着替えなきゃ―――」
「……俺無視かよ」
「あ、ドレス準備しておきましたよ、はい」
さっすがロイ! 気がきくー!
手渡されたドレスを貰い着替えようとする。
「……って出てってよ!!」
「「なんで」ですか?」
……わーハモったねー
じゃなくて!
「イヤ! 普通に出てくでしょ! レディーの着替えを一部始終見るつもり!?」
「……だって着替えられるの? 姫」
は、い……???
「ドレスそんなに頻繁に着てる?」
……そ、そうだった――――!!!! ど、どどどどうしよう!!
一人じゃ着れないっ!
「着せてあげる♥」
そう言ってルカは私のブラウスに手を添える。
そして一つ一つボタンを外していく。
「……ってちょっと!!! やめろばか!!!」
「姫の為にやってるんだよ?」
「ロイ! 助けて!」
ロイは、え? と惚けた顔をしてただ見ながら立っている。
……助けろよッ……!!
……どうしよう
これはマジでヤバいぞ
変態なコイツの事だから大人しく脱がされたりしたら絶対ヤられる……
かといって一人じゃ着れないし、ロイにさせるのも逆に私が心臓がやられそうだし……
どうし―――
「大丈夫ですよヒメ、メイドさんを呼べば」
ニコっと愛らしい表情で言ったのはロイ。
……!!!
……そっか!! その手があった!!!
でも
「そ、それもっと早く言ってよ……」
もう少しで下着見られる所だったぞ
「すみません」
「……」
なんか居づらい雰囲気になってしまった中、意気揚々としたルカの声が響く。
「あーあーバレちゃったー」
そんなルカに私は一発とび蹴りをかまして
「メ、メイドさんっ!」
即効メイドさんへの専用の電話で呼んだ。
「なんだ残念」
……そう呟いたルカの声は聞こえなかったこととしよう。
それと後から聞いた話だけどロイはあまり人の着替えや下着を気にしないタイプらしい。
*
「で、でかッ!!! 広!」
パーティー会場に着いて言った最初の言葉はこの一言。
……こんな所に私みたいな庶民が来ていいのだろうか。
皆煌びやかなドレス着てるし、なにより金持ちオーラがヤバい……
ルカに招待されたはいいけどコイツも顔はいいから囲まれてるし、ロイも来てるけどマダムキラーだし。
……なんか私だけ寂しくないか?
そんな事を思いながら青色吐息らしきため息をはいていたら後ろから声が聞こえた。
「アンタ今度のヒメ?」
誰この人。
アンタって失礼くない?
初対面の人に向かって!
「……は、はい」
「……なんや、今度のヒメ! めっちゃ可愛いやんけ!」
……そこはスルーさせて頂きます
「……関西弁!!」
「ん? そーやで★ 俺大阪出身の元日本人!! やさかいな♪ ヒメの国はどこやったん?」
よく分からないガッツポーズを時々決めながら意気揚々に話すこの人はやっぱりテレビで見た関西人と一緒だ。
「同じ日本ですよ! 私すっごく関西弁好きですー!!」
だって! なんかよくない!?
あのつっこみ具合とか、ノリとか!!
「……え!! 外国人やと思ってたわー!」
「ハーフなんです!」
「ハーフ、かぁ……道理でキレーな瞳しとるわけやなぁ……水色やんけ……」
「っや、そ、そそそんな事ないっす!」
「そうか? めちゃめちゃ綺麗やで」
「あ、りがとうございます」
なんか改まって言われると照れるなぁ
「秋山様」
「あー呼ばれとるから俺行くわ! 俺の名前、秋山翔! 翔でええから! 覚えといてなー♪ 後次から敬語は無しやから!!」
長ったらしくそう言って秋山さん、じゃなかった翔は走っていった。
「なん、か台風みたいな人だなぁ……」
そう呟いていると耳元で囁かれた。
「姫」って。
「うひゃぁ!!」
変な叫びだったのは気にしないでね? その位吃驚したんだし。
囁いて“姫”なんて言うのはコイツ位しかいない。
「……ルカ」
「あったりー♪ ねぇ姫さっきの人と何話してたの?」
「別にアンタに関係ないじゃん」
「……そんな事言っていいの?」
そう言って吊りあがった口端。
なんか言いたい事が分かってきたかも。
でもいくらなんでもこんな所でしないだろう。
そう思いながらも冷や汗を流しているとルカは妖艶に笑った。
「ねぇ姫、キスして?」
……覚悟していたけどやっぱり頭がフリーズ。
「早く」
頭がついていかない内に私の口は勝手に動いていた。
「嫌だっ」
そう言うと無理矢理後頭部を掴まれ唇と唇がぶつかり合った。
……ルカの瞳が、冷たい
「……っん……~~っ!!!」
やめろ、そう叫びたいのに。
手をルカの胸に押しつけるけど全然敵わなくて。
気がついたらルカの舌が私の舌に絡んでる。
力が、出なくなってきた
「……っ……」
苦しい、息ができない。
こんなところでこんな風にされて。
羞恥心と息苦しさで何が起きているのかさえ分かんない。
すべてがぐちゃぐちゃ。
頭の中がぐちゃぐちゃ。
もうどうにでもなればいいんだ。
「……っはぁ」
そんな事を考えていたら唇が離れた。
ハッと我にかえる。周りの人がカナリ凝視してる。
そりゃそうだ。こんな所でこんなキス――――
……ありえない
「……何するのよッ!!」
コイツと、ってのがもっとありえない!
「何? 気持ち良さそうな表情してた癖に」
「~~ッ!!」
そんな事ない、なんて言えない。
本当にそうだったかもしれないから。
それをルカに、周りの人に見られたかと思うと顔に熱が集まってくる。
「……誤魔化せばいいよ」
「……え?」
「お手をどうぞ姫♪」
は……?
イヤ意味分かんないし。
しかも
「お、踊れないしっ!」
さっきまであんな事されてたから余計に足元がふらつく。
「まぁ任せて」
そう言ってルカは少し倒れそうになった私の腰を支えた後、手を差し出してくる。
こういう時って手の上に少しだけ自分の手を置くんだよね……
そっと乗せると同時に『花のワルツ』の曲が鳴りだした。
中途半端ですみません;;
そしてこの異世界では、どこの国出身でも言葉が通じる様になってます。
相手には何語を話しているのかって事は分かりません。ただ姫は日本に住んで居たので関西弁のまま聞けたっぽいですww笑(なんだそれ
外国出身の英語等は日本語の標準語に変えられますw
不思議ですねー(お前が勝手に考えたんだろ
……まぁ応援宜しくお願いします!!
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