第3話
城の中を歩きながら考える。
ロイのあの異常さを。
……アレは一体なんだったのかな……
「――――ぅぶっ!? ルカッいきなりとまんないでよ!」
「着いた」
は?
「ここが俺の部屋」
……え
えぇ!!!?
ひ、ひひひひ
「ひ 広ッ!!!!」
「そう?」
そう? って……!
「アンタ相当甘く扱われてるんだね……」
ずりーぞコノヤロー
私の家はそんな金の余裕なかったぜオイ
「この世界の人達の部屋は皆こんな感じの広さだけど」
……世界自体が金持ちなのね……
「入れよ」
ロイもこんな感じの部屋なのかな
「――――え? あ うん お邪魔しまーす!」
本当広い……つかベッドでかすぎだろッ
何人寝れんだコレ
「紅茶いる?」
ロイもこんなベッドで寝てるんだろな
「……姫」
ルカの低めの声が部屋に響き渡る。
「えっ? ゴメン何?」
「紅茶いるって聞いてんのに」
「あ! あぁうん!! いるいる~」
そういうとルカは紅茶をコポコポといれる。
……そして手を止めた。
「……そんなに好き? ロイのこと」
……え?
ロイ??
「好きなんだ?」
ルカは私の瞳を見つめたまま逸らさない。
「ちょ ちょっと待って! ソレどーゆー意味……」
「姫が恋愛感情でロイを好きかって事だよ」
……れ、恋愛感情……?
「……何言ってんのルカ……?」
そんな一日だけでロイの事好きになる筈ないじゃん
それに吸血鬼だよ?
「真面目に聞いてんだよ」
「だからッありえないし! 本当何言ってんのルカ―――」
意味分かんない……
「じゃあ今何を考えていた? 何を考えてて俺の声が聞こえなかった?」
「――――違う! 私はただロイが――」
ロイが?
なに……
「……もう黙れよ」
ドサッと柔らかいベッドに落とされ近づいてくる顔。
「な なにすんの」
わざと口調は強めに言う。
だけどルカにはそんなの動じない。
「なんだと思う?」
そうやって言うルカの顔にはさっき見た意地悪な顔――
……だけど何かが違う。
「……なに? ルカ……どうかしたの……?」
――――本気で心配して言った言葉だったのに。
「どうもしねーよ」
「だってルカ――――ん……っ!?」
口唇に当たる感触は初めてのもので
ソレがコイツの唇と気づいたのは数秒後。
「……っ……!!!」
手足も掴まれていて動きが取れない。
「……っ……ふ」
一緒だ、ロイの時と
……でもまた何かが違う。
「……やめっ……――――っ!?」
唇が離れた隙に言おうとしたけれど。
それも許してもらえなくて再び歯と歯がぶつかりあい激しくキス。
も……う意味分かんない
唇が離れたと思ったら次は耳。
「……やっ……あ」
「ここ弱かったもんね? 初めて逢った時から」
耳の中に入ったルカの舌のせいで、くちゅっと鳴り響く。
「……っは……っぁ……」
もう意識も朦朧としてて。
「……もっ……本当やめて」
涙でぐちゃぐちゃになった顔をどうにか隠そうとしながら言う。
すると
「……なら、やーめた」
呆気なくやめた。
なんでこんなことするの?
どうして?
そんな風な疑問形の言葉が頭に浮かんでは消えて。
聞きたいのに聞けない。言葉が……出ない
初めてだ。こんなの
「出て行くなら出てけば?」
こんな時に聞こえるのはそう冷たく言った一言だけ。
「……っ……!」
……もう、いい
嫌いルカなんか
――バタンッッ――
荒々しく閉めた扉にさえも怒りを感じる。
なんでこんなことになっちゃったんだろ……
「……ありえない」
そう言った小さな言葉は広い城の中では全く誰にも伝わる事はなくて―――
呆気無く消える。
*
「な なんでいんの……」
朝起きて発したのはこの一声。
――昨日、泣きながら壁に寄り添っている所をキャメロンさんに見られた私は部屋をもらい、夜の幻想的な雰囲気に包まれようやく眠る事ができた。
――朝、ふかふかのベッドから目を覚ますと同時に誰かの瞳に映る自分が見える。
“誰か”その誰かがルカだった。
――――というわけだ♥
……って、というわけだ♥ じゃねえ―――!!!
なんでルカがいんの!!!!
「いちゃダメだった?」
意味わかんない
「だ、駄目に決まってるじゃん……!」
昨日の今日でなんでそんなあっさりしてる訳?
こっちは
「……まだ許してないんだからね」
あんなことして……変態にも程がある。
「許してない? 姫が俺をあんな風にさせたのに?」
……は?
「私が? ルカを?」
「ん、させたよ姫が」
……って
「わ 私そんなエロいオーラ放ってないし!!」
「オーラじゃないよ」
本当に分かんないの?
そう言ってルカは私の瞳を見つめる。
「そんなの……分かんないに決まってるじゃん」
分かる筈がない。
ルカをあうゆう風にさせたのが私だなんて想像もつかないのに……
「鈍感だね姫は」
……ど? どどどど、鈍感!?
「鈍感じゃない!!!!」
そう言った時には時既に遅し
ルカは部屋を出ていった。
「なにアイツ……!」
やっぱムカツク。
そりゃ鈍感って言われたの初めてじゃないけど……
アンタみたいに会ったばかりの人に言われたのは初めてなんですけど……!!
そんな事を考えていたら更に怒りが込みあげてきた。
あの……変態S男ルカがぁああ……っ!
「どうしたの? ヒメちゃん♪ そんな険しい顔してー」
ぎゃー!!
「キャ キャメロンさん!」
「おはよう♪」
「お おおはようございます! あっ……あの! 昨日はどうもでした……っし しかもあんな恥ずかしい姿を……すみません!!」
「いいわよー♪ 人生山アリ谷アリだものね♪ それと敬語じゃなくていいのにー」
ふふっと笑ってキャメロンさんは言う。
畜生可愛いなオイ!
「で でもやっぱダメっす!」
キャメロンさんには従わないといけない様なオーラが……!
「まあ慣れたらでいいわよ♪ あ それよりもっ! その寝巻みたいなのでは駄目だわ!ドレスにしましょ♪」
ど、どどどドレス!!!!?
(↑さっきからどもりすぎ)
「いっいいです! そんな高価なもの私には似合いません!!」
ぜっったい私が着たらキモさ100%になる!!!
「大丈夫だからー絶対似合うわよ♪ これとか! はい着させてあげるから!」
「……あ、あの……?」
い・やぁあああぁあ━━━━!!!!!!
――――
――
――数分後――
「ホラやっぱり♪ 似合うと思ったのよねぇ」
こ、これ私……!?
「可愛いわヒメちゃん♪」
いやいやキャメロンさんのが数百倍可愛いけど!
ヘアメイク、髪のコテ巻き、ドレス
……などを施してもらった私は明らかに別人になった様に変わっていた。
「すっ凄い!! キャメロンさん!」
こんな私をここまで変えてくれるなんて……!
神だ……!
「そーお? ヒメが元々可愛いからよー♪」
「かっ!? かかか可愛くないです! キモいです!!」
思いっきり否定するとキャメロンさんは微笑んで言う。
「じゃあ行きましょ♪ 皆が朝食を待ってるわ」
……そう言えばお腹空いたかも……
コーヒーも飲まなきゃ
「は、はい!!」
私は満面の笑顔で頷いた。
文字数が少ないので二話を一話にまとめましたm(__)m