表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂愛  作者: AGEHA
10/12

第10話

「……な、んで……」


 此処にお父さんが……。

 私はキャメロンさんからの、話を避ける為に。

 ……逃げる為に此処に来ただけなのに。


「ゆず……き?」


 呆然として立ち尽くした私に、父が目を見開いて尋ねる。

 でも、私にはそんな問いに答える余裕なんてなくて……。


「ずっと……黙っててごめんな……」


 ただただそんな父の、弱々しい声を聞いてるだけ。


「お父さん、久々に柚姫に会えて嬉しいよ……」


 ……何言ってるの?

 嬉しい? 私と会えて? 私とお母さんを……裏切ったくせに?

 手の拳が震え、思わずぎゅっと力を入れる。


「ずっと後悔してた……」


 なにを。

 私達を置いていった事を……?

 淡々と続けられる言葉には疑問しか湧き出てこない。

 怒りに似た何かが込み上げてきて、お父さんを睨むようにして涙を溜める。


「会いたかった……」


 そういいながら父は、私のほうに手を伸ばす。

 と同時に、私の中で何かが切れた。


「……っふざけないで!」


 私は父の手を、思いっきり叩いて叫んだ。

 父は眼鏡の奥から見える大きな瞳を、更に大きくして見つめた。

 私はそんな父には、お構いなしで視線を落としながら言葉を発した。


「……なにが……『会いたかった』なのよ……私が居る事知ってて! 何も行動しなかったのはお父さんじゃない! 今だって……私がこうやって見つけなかったら……知らないフリできたんでしょ、大体……っ 私はお父さんになんて……」


 私、何を言おうとしてるの?

 ダメ、こんなこと言いたいんじゃない……。


 ……だめ。


「……会いたく、なかったのに……!」


 ……ダメだって分かってたのに。

 言ってしまった。一番悲しむ言葉を。

 今お父さんがどんな表情で、どんな瞳をしているかは分からない。


 でも、視線を落として見えるお父さんの指先は、微かに震えているのが分かる。


 今までずっと考えてきた。父に会うとしたら……とか、何て言えばいいかなとか。でもそれも結局は失敗に終わった。……本当は会いたくてたまらなかった。父が居ない事、それは幼い私にとってはとても悲しい事で、周りと比べて何度も母にすがる様に泣いた事もあった。だけど。


 ……もう泣かないって決めたはずなのに。

 もう考えないようにしようって思って。なのに……夢さえまだ消えてはくれなくて。

 

 ふ、とこのままでは駄目だと思い、顔を上げようとした瞬間。

 聞きなれた高い声が一つ響いた。


「……ヒメちゃんっ!?」


 ――――キャメロンさん。


「え、あ……」


 言葉にならない声で、一人しどろもどろとなりながらキャメロンさんを見つめる。

 そうすると、この空気に気づいたのかキャメロンさんは少し顔を歪め、一言言う。


「ヒメちゃん……アナタはもう戻って」


 らしくない表情を浮かべたキャメロンさん。

 それに従って私は自分の自室へと戻っていった。

 

 ――バタン――


「……は……?」


 部屋に帰ってきてからの第一声は、間抜けなこの声。

 だってしょうがないでしょ。誰でも驚くでしょ……。

 っていうか今そんな気分じゃないっていうのに……夢だと思いたい。

 

「ひーめっ♪」


 …………。


「姫ってばぁー」

「…………」


 黙っていたのが気に入らなかったらしい、ルカ(・・)は。


「返事しないとキスするよ?」


 こんなことを言う。


「……っ!?」


 反応が面白かったのかルカはクスクスと笑い、それもディープのほう♪ とか言いながらチラっと舌を見せる。……やっぱりこのルカの変態さは現実だ。


「……なんで居るの」


 観念した私は、ぶっきらぼうにそう聞いた。

 でもルカはそんな事では、しわ一つ動かさず、常に笑顔をキープしたままで言う。


 「もちろん貴女に逢うために」


 と寒い台詞を吐きながら。

 それに負けない様、私も冷たい言葉を、心底呆れたようにして返す。

 

「アンタはいつも元気だね、でも私は今、そんな気分じゃないの」


 でもそれにも動じないらしいルカは……。


「“今”なんだ?」


 とか妖艶に笑いながら私を見つめる。

 咄嗟に視線をズラした私だけど、ルカの視線は私に向いたまま。

 そんなの見なくても分かる。答える気力もないまま私は、視線を落とし続けた。

 でも。


「……きゃ!?」


 イキナリ後頭部を掴まれ、反射的に上を向いた瞬間、私の唇はルカの唇に完全に支配された。抵抗することも出来ず、もちろん抵抗しようにも敵うことなんてなく。『またか……』とか考えていた。

 

 ……でも、なんで……? ルカがもう片方で抱きしめる手からは、微かな振動が伝わってくる。

 そういえば。自分のことで一杯いっぱいになって、忘れてたけど確かにルカは元気が無かった。


「……っん……なにか……あったの?」


 唇が離れた隙に、私は精一杯の思いでルカに尋ねた。

 でもそれも聞いてくれることなんてなくて。少し顔を歪めたかと思うと、歯と歯がぶつかりあう位の勢いで、キスを続ける。


「……っは」


 そうして、舌が入ってきたかと思うと、私のに絡ませ逃れないようにと必死に必死に絡ませる。


 ……どうしたの……ルカ……。今まではこんなことなんて無かった。自由自在に私を操って、思い通りにしてきた。なのに、今のルカは焦っているようにしか到底思えない。


 ……どうして……? 何もかもが分からなくなった私は思わず、うっすらと開けていた瞳から涙が零れ落ちた。


「……姫?」


 ルカが慌てて唇を離し、私の瞳を心配そうに見つめる。

 そうして涙を拭いながらルカは言った。


「ごめんね……もう……姫には迷惑かけないから……必ず、必ず元の世界に戻れるようにするから……」


 ……え。ルカ……何言ってるの……?

 ルカは少し悲しい表情を浮かべたかと思うと、窓から見える月の光を浴びながら。

 ……出逢った頃の綺麗な横顔で、一言強く言う。 


「……この命にかえても絶対に」


 そう一言。射抜くような視線で。

 私が顔を見つめ続けるとルカは少し表情を柔らかくして窓から出て行った。




 

が、頑張りました……っ更新カナリ遅れて申し訳御座いません><

結構しんどかったです……。たぶん文章ぐだぐだです……。

すみません(´・ω・`) それとお気に入り登録数が増えていた事にとても感謝していますっ! こんな作者でよければ、これからもお付き合いしてくださいませ>< お気に入り登録、評価、感想、レビュー等心よりお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ