避難計画
災害が発生すれば政府や自治体は様々な対応が必要となる。
被害情報といった情報収集。必要な物質の連絡、やり取り。関係機関との連携や調整など。
防災訓練をやっても、実際に起きてしまえばとても難しい。
だから訓練をする。
では、戦争やテロが起きたら?
備えている機関や団体は少ない。
果たして、防災訓練ばかりででいいのか? 防災訓練をやる数も少ないのに。
「もしも。」
そんなことが起こらないとは限らないということを、忘れてはいけない。
危機管理は、やり過ぎでいい。
(メテオ襲来から5日後)
日本
メテオが襲来したのは全て海からということから、海の近くにいる人は海から遠くに逃げようとする人々が交通機関に押し寄せ、麻痺を起こした。
こんな状況にも関わらず政府や自治体が避難勧告が出さないこと。実際に死傷者が出てくることや海外でも同じようなことが起きていること、報道でも情報発信が追いついていないこと、AIなどを使用したフェイクニュースといったことから、人々の不安や焦りを引き起こした。
道路は、防衛出動が発令されたことで自衛隊などの移動にて一部が通行止めや車線封鎖などが起き、渋滞や事故が発生するなどの問題が生じた。
他にも、鉄道や空港でも混乱が起きた。
鉄道では普段から利用している学生や社会人だけでなく、観光客が大勢いる。新幹線にも多くの利用者がいるため、そこに避難しようとする人が押し寄せればどうなるか分かるだろう。駅に人が溢れ、バスやタクシー乗り場にも長蛇の列ができた。道路の混乱もあるため、バスやタクシーも駅に着かない悪循環になっている。また、道路や鉄道が混雑したために、帰宅困難者が発生した。歩道は徒歩で帰ろうとする人で溢れた。
一方で空港も同様だった。空港も普段から利用客が多いところに、避難しようとする人が押し寄せた。海外でもメテオの襲撃があったこともあり、国内線が特に混雑した。日本に到着する航空便もあるため、日本の空港は混乱状態。その後、機能不全に陥った。
これを受けて、翌日には日本政府は内閣府、防衛省、国土交通省、国家公安委員会などを中心とした避難計画を立てた。
まず、襲撃してきた未知の存在はメテオと呼称されることを国民に説明。
一番最初の領海に侵入したメテオや、上陸したメテオは自衛隊により安全になったことを伝えた。
現状、防衛出動は発令されているが日本の存立危機事態ではないため、避難勧告は日本政府は出さない。しかし、メテオはいずれも海から襲撃しているので、海に面していたり海が近い地域は自主避難という、各自の判断に任せることになった。
避難希望者は、政府及び自治体が設定した場所に基本的に向かい、内陸部の地域に避難するとした。移動拠点は、高校や大学、公民館、公園などの規模が大きい施設である。なお、自家乗用車での自主避難も認めるとした。移動拠点から避難先へは民間の路線バスや観光バス、警察や自衛隊などの車両を使用して移動する。なお、移動拠点の規模によっては陸上自衛隊の輸送ヘリコプターも投入される。
鉄道は政府が計画を出さなくとも、本数を増加させて運行した。事故が起きないように駅員や警察官と連携をした結果、駅内は大混雑しているものの、大きな混乱は他の交通機関とは異なり起きなかった。帰宅困難者も減少したため、路線バスやタクシーがスムーズに動くようになりつつあった。混乱が解消されれば、通常の運行に戻す計画だ。一番早く混乱が落ち着くのは鉄道だった。
空港においては、警察や自衛隊、消防が投入されて誘導を実施。国内線の航空便として、航空自衛隊の輸送機や海上保安庁の飛行機を投入。飛行機が滑走路に溜まるという状態となれば事故の危険となるため、人数分散にため車両や自衛隊などのヘリコプターで自衛隊基地に向かい、そこから別の空港へ向かうか、そこから移動拠点に向かう方針に
フェリーなどの船舶を利用した移動は、前述の通り海からメテオが襲来しているので、ほとんどの人が嫌がった。港にも人が押し寄せなかった。分散のために、人々が安心するように海上自衛隊や海上保安庁の護衛をつける方針で決定。
結果。
道路の渋滞は多少緩和。しかし、移動拠点からの車両や自主避難において自家乗用車での避難と、情報の差があることや、不安やストレスなどの影響、誘導の混乱などで事故といったトラブルは少なからずが起こってしまった。
鉄道は、普段通りの運行には残念ながら戻りそうにないが、混雑は解消されつつあった。
空港では、大きなトラブルは起きずに順調に進んだ。しかし、依然として空港内は人で溢れている。また、パイロットの疲弊も激しく事故が起きないように対応が必要だ。特に、自衛隊や海上保安庁のパイロットは、避難希望者を運ぶだけでなく、部隊や物質などの輸送もあるためより一層疲弊しているという。
船舶での避難は他の交通機関とは異なり落ち着いていた。しかし、護衛にあたる海上自衛隊や海上保安庁の艦艇が足りなかったり、まず疲弊していたりしていた。また、タンカーなどの船舶の寄港や航行などにも対応も必要となった。
最終的に。
輸送に関する仕事をするドライバー、パイロット、乗組員。誘導や調整を行う部門が疲弊していた。
情報が行き渡っていない可能性もあるため、連携を密にする必要がある。
1300
某県 県庁
政府からの計画が自治体に伝わった。
海に面している都道府県や海に近い地域において、避難するための移動拠点を設定。避難を希望する人は拠点に向かってもらい、内陸部に避難をする計画。例として関東地方の場合、神奈川県、東京都、千葉県、茨城県が対象だ。海に面している、海に近い地域でない内陸方面か、内陸部の県に避難という形だ。
しかし、問題が発生した。
ある県庁では、住民だけでなく観光客などが多く避難希望者が予想よりも多かった。そのため、移動拠点に人が集中し、避難手段であるバスなどが足りなくなった。警察や自衛隊の車両を派遣されているが、最終的な現場の調整においては県庁指導となったため、混乱状態になった。
災害時と異なり、多くの避難希望者、民間のバスと警察や自衛隊車両の調整において、指揮や調整をする県庁庁舎と、移動拠点の現場は混乱状態に陥ったのだ。
「T大学で、バスが来ないとの連絡。」
「自衛隊車両の現在位置は?」
防災訓練でも、図上演習などでは情報が入り次第ホワイトボードなどに書いたり、メモを貼ったりする。もしくは、モニターに表示される。しかし、そのホワイトボードに書いたり貼ったりするほど余白もなくなり、モニターも表示される情報が増えて、情報過多になっている。電話も鳴り響き、話し終わって受話器をおいた途端にまだ着信音が響くを繰り返していた。
警察や自衛隊、消防の連絡員もいるが、彼らも混乱状態だ。
少しずつ口調が乱暴になってくる人も出てくる。至る所で喧嘩のように言い合っている人も出てきた。
「もしもし!?」
「だから! T大学へのバスは全て行ったの。少し待ってなさい!!」
「よく聞こえません、もう一度!」
自治体には都道府県、市区には危機管理に関する部署が設置されており、防災や弾道ミサイルなどの国民保護などの対策や対応をする。しかし、異動があったり職員が少なかったり、危機管理専門に学んでいる人も少ない。自分は何をすべきなのかも分からない職員も出てくる始末だ。おそらく移動拠点にいる職員の中にもいるだろう。
某県立S高等学校
公立高校であるS高校は私立高校のように施設や設備は優れており、グラウンドも広い。
高校は臨時休校となっている。政府からの避難計画は、県指定の移動拠点に設定された場所に民間のバスや警察、自衛隊などの車両を高校に入れ、自力で来た避難希望者を乗せて避難先に向かうというものだ。しかし、急に移動拠点に設定された場所には、高校や大学、大きな公園、公民館などであるが急に自治体からの連絡が入り、迎える準備も終えてない状態や生徒を下校できないまま避難計画が進んだ場所もある。
S高校では、一部の生徒が下校ができていなかったり避難用のバスが到着しなかったりしていた。
「はい、はい。バスが来てません。校庭に人が溢れてくるんです、どうなってます?」
最悪なことに県庁などの職員が到着した時には既に避難希望者が想定以上に押し寄せたことだけでなく、バスが到着しないことも起きた。また、避難希望者が学校の校舎に無断に入ったり外国人との意思疎通ができなかったり、喧嘩が起きたりもした。警察もいるが、対応しきれていない。
「不味いな、制御できてない。」
「校庭にバスを入れたくても、校庭は人で一杯。そもそもバスが数台しか到着してないという状態。こんなの無理だ。」
再度呼びかけなどをしようとすると、正門からOD塗装されているオートバイクが4台入ってくる。邪魔にならない場所に置いてからこちらに向かってくる。自衛隊だった。
「陸上自衛隊です。栃木方面への移動便及び誘導、これより参加します。私達は先発隊で車両の誘導準備を行います。」
陸上自衛官が言うには、民間バスの到着は他の拠点に行っていたり渋滞に巻き込まれていたりしているのでバスが到着できない状態になっていたようだ。
自衛隊は避難先である地域の駐屯地や基地。つまり、内陸部にある駐屯地や基地から車両を自衛隊車両や緊急車両が走行するための車線封鎖や通行止めしている道路を走行して、避難先である地域にある駐屯地や基地から車両が向かっているそうだ。また、ヘリコプターも投入されるそうだ。
校庭にいた避難希望者を取り敢えず体育館や、端に寄せさせて列を作る。
列が完成しつつあると、陸上自衛官が声をかけてきた。
「了解、誘導をする。車両、すぐに到着します。」
言われた通り、すぐに正門からOD色の3トン半トラックを中心とした車列が入ってきた。
校庭や駐車場、車両が通れるような場所などに停車していく。そして、避難希望者を乗せていく。
一陣の自衛隊車両隊の半分が乗せ終わり、出発した。残り半分もほとんど乗せ終わり、最初の混乱状態は解消しつつあった。
第2陣は、ヘリコプターだった。
「チヌーク、5分後に到着。」
話を聞く限り、自衛隊は政府の避難計画が作られている時には、既に統合幕僚長が独断で指示をして、最終的には各幕僚長、司令部、方面隊、師団や旅団へと伝わり、各駐屯地や基地に命令が行き届き、行動に移したということだ。統合幕僚長が政府からの指示なしに独断で命令後、統合作戦司令部と中心となり基本方針が決められた。
なお、日本政府。
内閣総理大臣が突然副総理に役職を委任した。
防衛出動を発令して、自衛隊が2度のメテオ襲撃を防いだ後のことだ。
その頃から日本では混乱が始まった。同時にアメリカといった多くの国でメテオの襲撃が始まった。
2日後。統合幕僚長が独断で避難計画立案指示。防衛省もすぐに加わった。
避難計画が正式に考案され始めたのは4日後。防衛省と自衛隊がだいたい完成させていたのですぐに日本中にて行動に移せた。だからこそ、自治体の対応にも混乱が起きたのだろう。
前述の通り、移動拠点の規模によってはヘリコプターも投入されている。
この高校を含む、ここら地域には群馬県にある相馬原駐屯地に駐屯する、那覇基地の第15ヘリコプター隊と並ぶ師団旅団保有の航空科部隊として最大規模を誇る空中機動旅団の第12ヘリコプター隊が参加している。近くに駐屯している第1ヘリコプター団や東部方面航空隊は、部隊移動や武器弾薬等の装備品輸送に割り当てられている。
3機のCH-47JAチヌークが接近してきていた。
陸上自衛隊の大型ヘリコプターCH-47JAチヌークには、人のみを乗せた場合には最大で55名乗せられる。
第12ヘリコプター隊はCH-47JAは6機配備されている。そのため、有事に備えて2機を残して残りの4機が参加している。
着陸してから、すぐに避難希望者を乗せていく。乗せ終わると、またすぐに離陸していった。
そんなまるで作業のように淡々と進み、このS高校に溢れていた避難希望者は、いなくなった。
勿論、避難勧告が消えるまでは移動拠点となっている。その代わりに日を追うことに自衛隊や警察は参加せず、民間のバスも数が減る。
そして、移動拠点は自衛隊に受け継がれる。ヘリコプターの離発着場や部隊の集結地なとに割り当てることになる。S高校の場合は、ヘリコプターの離発着場や武器弾薬など集積場、負傷者の救護所となる。
「どうなるなかな、これから。」
一人の職員が呟いたことは、全ての日本人。いや、世界の人々を代弁していた。
防衛省A棟地下 中央指揮所
「避難計画、順調に進みましたな。」
「えぇ。でも、これからが本番でもあるわ。生き残るために。」
「俺がやらねば誰がやる」
陸上自衛隊中央即応連隊 標語




