尾張統一
「やったー! なんだかんだで尾張を統一したわよー! 地味に長かったわねー」
「いや、なんだかんだで、って殿! 話が雑すぎませんか? これじゃあ何があったか全くわかりませんよ」
「なによ、恒興。そんなこと言ったって、尾張国内の織田同士の親戚争いなんて、地味すぎて誰も興味無いでしょーが。そんな細かい話、教科書にだって載ってないわよ。詳しく知りたかったら自分でググれっつーの」
「そんな無茶苦茶な……」
「例えば織田信清がどういう武将か知ってる? ほとんど誰も知らないマイナーな武将じゃないの。だいたいアイツ、信清っていう名前のくせに、その性格からは清々しさとか清らかさなんて微塵も感じないからね。むしろ陰険な部類だわ。織田信陰の間違いじゃないの?」
「名前と性格は関係ないでしょ。べつに清廉潔白だから名前に『清』って付いてるわけじゃないですからね。殿だって名前は信長ですけど、別に何かが長いってわけじゃないですよね」
「何言ってんのよ、アタシはちゃんと長いわよ。しかも長いだけじゃなくて、バッチリ太いんだから。アンタみたいに誤解する人が出てこないように、この際だからアタシ、織田信長太に改名しちゃおうかしら」
「いったい何の話をしてるんですか。ていうかその名前だと、どう考えても太が余計に見えますけどね。宮川一朗太みたいになっちゃってますよ」
「あー、そういえば昔そんな俳優もいたわね」
「今もいますけどね」
「つか、今どき宮川一朗太なんて言っても誰も知らないわよ。もうちょっと発言に気をつけなさいよね。そんな昔のネタばっか持ってくるから、誰もこの作品を読まないんじゃないの」
「その言葉、そっくり返しますよ。発言に気をつけて欲しいのは殿の方ですからね」
「うるさいわねー。そんな事、いちいち気にしてらんないわよ。とにかく、もうアタシは尾張を統一しちゃったんだから、今さらごちゃごちゃ言うんじゃないわよ。詳しく知りたい人は、アタシの見逃し配信でも見てちょうだい」
「見逃し配信もなにも、最初からそんな配信なんかしてないでしょうが」
「えーっ!? アンタの兜にGoProか何かを仕込んでおいて、アタシの活躍をバッチリ撮影してたんじゃないのーっ? 使えないわね、恒興のくせに」
「そんな機材、この時代にある訳ねーだろ。このオカマ野郎!」
「アンタ、前々から気になってたけど、そのオカマ野郎って言い方ひどくない? 元はと言えば、アンタの母親にお釜で研いだ米の研ぎ汁を飲まされたせいでオカマになったんだからね」
「げっ。バレてたんですか」
「当然でしょ。味の変化ぐらい、すぐ分かるわよ。最初は8:2くらいの割合で母乳の方が多かったのに、最後の方なんて、ほとんど米の研ぎ汁だったわよ。相手が赤ん坊だからって調子に乗りすぎだっつーの」
「それが分かってて、なんで飲んでるんですか。よくそんなもの飲めますね」
「味が薄くても母乳は母乳でしょ。贅沢は言えないわよ」
「ほとんど米の研ぎ汁なら、それは米の研ぎ汁でしょう」
「ノン、ノン、ノーン! 違ぇですわ」
「だから、その言い方やめろっての」
「いい? オシッコはどんなに薄めても、薄めたオシッコなのよ?」
「何なんですか、その納得できるような納得できないような微妙な説明は」
「何でよ。分かり易い説明でしょーが。まぁいいわ。つか何で尾張統一の話が母乳の話になってんのよ」
「アンタが言い出したんだろ」
「そうだっけ? まぁいいわ。とにかく、もうこれで尾張はアタシのものよ。尾張統一はアタシの長年の夢だったからね。それがようやく叶ったわ」
「終わりの始まりですな」
「あら、アンタ上手いこと言うわね。今のは尾張と終わりを掛けたのかしら」
「大して上手くないでしょ。っていうか、これじゃあ結局どうやって尾張を統一したかが分からないままですよ?」
「そんなもん、分かってどうすんのよ。テストになんか絶対出ないし、アタシが尾張を統一した過程なんて誰も興味無いに決まってんじゃないの」
「それはそうかも知れませんが……」
「まぁ、ともかくこれで尾張を統一できた事だし、あとはのんびり鷹狩りでもして暮らそうかしら」
「何を言ってるんです。こんな吹けば飛ぶような一国を統一したくらいで安心してる場合ですか。殿には織田の領地をもっと大きく、強固なものにして貰わなくては困ります」
「あら、そう? しょうがないわねー。恒興がそんなに言うなら頑張っちゃおうかしら。アタシ、大きくしたり固くしたりするのは得意だからね」
「また何かおかしな勘違いをしてそうな発言ですね」
「大丈夫よ。まぁ見てなさい、恒興。こうなったら、アタシがTENGAを獲るわよ」
「殿、それを言うなら天下では? TENGAはオナホですぞ!」
「ふぅ。ようやくタイトルを回収できたわね」
「何の話ですか」
「何でもないわ、こっちの話よ。それにアタシは別にオナホだって構わないわよ。オナホだろうが電マだろうが、アタシは獲れるものなら何でも獲っちゃうんだからーっ!」
「また訳の分からないことを……」
「あらアンタ、もしかして電マを知らないの?」
「知ってますけど、この時代に電マは無いのっ! なぜなら電気が無いからっ! 何回言わせるんですか」
「そんな事より知ってる? 地獄には電マ大王が居るんだって」
「閻魔大王ね。どんな大王ですか、電マ大王って」
「そりゃ電マで感じ過ぎて膝をガクガクさせながら、真っ赤な顔してブルブル震えてるに決まってんじゃないの」
「閻魔大王の顔が赤いのは、そんな理由じゃありませんけどね」
「何言ってんのよ。もう感じ過ぎてガクブルなのよ」
「ガクブルの意味も間違ってますね」
「で、真っ赤な顔をしてると思ったら、そのうち電マ大王が絶叫しながらイッちゃうらしいわよ?」
「イクってどこへ? 東中野?」
「そんなわけ無いでしょ。なんで気持ち良くなるたびに、いちいち東中野まで行かなきゃいけないのよ。突拍子も無いボケをかまさないでくれる? だいたい、どういう発想をしたら東中野なんて地名が出てくんのよ。何にも無いでしょ、あんな所」
「ポレポレ東中野があるじゃないですか」
「そんなの知らないわよ。つか、何でアンタそんなに東中野に詳しいのよ」
「いやー、わりとよく聞く地名かなって。ちょっと調べたりしてたんですよ」
「それ、アンタの空耳じゃないの? 一人だけ違う世界線を生きちゃってるわよ」
「そんなことより、電マ大王は結局どこへイクんです?」
「そりゃ天国でしょ。昇天するとか言うぐらいだからね」
「地獄の番人が天国に行ったらマズくないですか? ミッキーマウスがサンリオピューロランドに行くようなものですよ」
「アンタもそういうこと言うようになったわね」
「殿に調子を合わせてるだけですよ」
「そんな事より、せっかくアタシが尾張を統一したんだから、アンタ一席設けなさいよ。アタシが皆の前で特別バージョンの『あ乳盛』を舞ってあげるわ」
「あ、べつに舞わなくていいですから。殿のチクニーとか誰も見たくないので」
「じゃあ、景気付けに皆で名物の味噌カツでも食べてパーッと祝っちゃいましょうか」
「この時代に味噌カツなんてありませんよ」
「えー? じゃあ名古屋コーチンの焼き鳥とかはどう?」
「名古屋コーチンも無いですね」
「本当にこの時代って何も無いわね。まぁでも、それならそれでいいわ。本当はアタシ、コーチンよりコーマンの方が好きだから」
「思いっきり下ネタじゃねーか。いい加減にしろ」




