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桶狭間の戦い(1)

「殿、いよいよ今川軍が攻め込んで参りましたぞ。その数およそ二万五千!」


「くそー、なんでよりによってアタシの領地に攻め込んでくるのよ」


「そりゃ、京へ上る道を織田の領地がガッツリ(ふさ)いじゃってますからね」


「まったく、いつもみたいに特技の蹴鞠(けまり)でもしてくれてりゃいいのに」


「それ、息子の氏真の特技だから。今回の総大将は義元に御座ります」


「なーにが義元よ。お笑いなら他所(よそ)でやんなさいよ」


「いったい何と間違えてるんですか。吉本芸人が二万五千人来るのとは(わけ)が違いますぞ」


「バカね、冗談よ。つか吉本芸人ってそんなにいないわよ?」


「こんな時に、よくそんな冗談が言えますね」


「冗談でも言わなきゃやってらんないわよ。どうすんのよ、これ。向こうの兵が二万五千なのに、こっちの兵は五千もいないのよ。絶対絶命じゃないの」


「殿! ここはひとまず籠城し、鉄砲を頼りに何とか耐え忍ぶ他はありますまい」


「いや、ここはイチかバチか打って出るべきでは?」


「しかし、この兵力差に御座りますぞ。ここは籠城すべきです」


「それでは戦わずしてこの織田家は滅びます。天下の笑い者になりますぞ」


「殿! 籠城か、それとも野戦に出るか、ご決断下され!」


「殿!」


「殿っ!」


「殿ーっ!」


「何よアンタたち、そんなに興奮して。無修正デビューかよ。とりあえずアンタたちは今のうちに眠っておいてちょうだい。アタシもしばらく横になるから」


「なっ、殿! お待ち下さい、殿ーっ! 」


「はいはい、おやすみ」


「……何と、よもやこのような切羽詰まった時に、眠ってしまわれるとは……」


「まさか、ふて寝じゃないですよね? 恒興様」


「殿のお考えは誰にも分からぬ。もちろんこの恒興にもな。だが、殿が眠れと言うなら我らも眠るまでのこと。お前たちも今のうちに眠っておくがよい」


「しかしそれでは……」


「もしも殿の気が変わって出陣する事になったら、それこそ眠る間も無くなるぞ。いいから今は頭を空っぽにして眠るのだ」


「は、はい。承知致しました」


…………

…………


「ほら、恒興! 起きなさい、恒興!」


「うーん、ムニャムニャ……」


「さっさと起きなさいよ、恒興! 常に起きてる恒興じゃなかったの?」


「無茶言わないで下さいよ。アンタが勝手にそう言ってるだけでしょ。私だって、寝なきゃ死んじゃいますよ」


「そんな事より恒興、アタシは奇襲に打って出ることにしたわ。やっぱりアタシは攻める側じゃなきゃダメなのよ。根っからのドSなの。アタシは攻められるより攻める方が性に合ってるのよ」


「なんで寝起きにアンタの性癖を聞かされなきゃいけないんですか。こんなに寝覚めが悪いのは久しぶりですよ」


「何それ。ちょっとアンタ。アンタさっきからアタシにアンタアンタって言ってるけど、アタシはアンタにアンタって言えてもアンタはアタシにアンタって言ったらダメでしょ」


「読んでいて目がチカチカするような事を言わないでくれませんか。まだ寝起きなんで」


「じゃあ早く起きなさいよ。さっさと今川義元に奇襲をかけるわよ」


「おぉ。では、やっとご決断なされたのですね。殿がご決断なされたのなら、この恒興はただ従うだけです。それでは、すぐに出陣の支度をして参りましょう」


「あ、いやその前に、景気付けに『あ乳盛(ちちもり)』を舞わないと、アタシの気分が乗らないわ」


「こんなときにチクニーしてる場合ですか」


「だからチクニー言うなって言ったでしょ。これは神聖な儀式なんだからね!」


「指で自分の乳首を1秒間に4回上下に弾く事の、どこが神聖なんですかね」


「あら、詳しいわね」


「アンタが無理やり教えたんでしょうが。しかも実演付きで」


「そうだったかしら。まぁでも、これが神聖な儀式に思えないなんて、恒興もまだ理解が足りていないわね。いい? 乳首は神聖な場所なのよ。乳首には神が宿ってるんだから」


「そんなの初耳ですよ。ていうか、何度も乳母の乳首を噛み破っておいて、よくそんな事が言えますね」


「あ、そうだ。恒興は(つづみ)を打ってちょうだい。アカペラじゃ、アタシの『あ乳盛(ちちもり)』は舞えないわ」


「だから、今そんな事をしてる場合じゃないって言ってるでしょ。人の話を聞けっての」


「聞いてるわよ」


「あー、もういいですよ。どうせ何を言ってもムダですからね。ていうか『あ乳盛(ちちもり)』って、前に一人でノリノリに舞っていたじゃないですか」


「それはそれ、これはこれよ」


「いったいどういう理屈なんですか。……まぁでも、ここでグズグスはしてられないですからね。じゃあ私が適当に(つづみ)を打ちますから、ちゃっちゃと舞っちゃって下さい」


「何それ。韻を踏んでんの?」


「いいから早く舞って下さい」


「だから、舞うから(つづみ)を打てって言ってんの!」


「分かりましたよ。打てばいいんでしょ。よーっ、ポン! いよぉーっ、ポン!」


「人間五十年〜アーチチアーチチ。下天のうちを比ぶれば〜アーチチアーチチ。夢幻の如くなり〜アーチチアーチチ。ほーら、だんだん気分が高まってきた。あともう少しよ」


「あぁそうですか。知らんがな。いよぉーっ、ポン!」


「一度生を()け〜アーチチアーチチ、滅せぬもののあるべきか〜アーチチアーチチ。あーイクッ、イクわよ恒興。あーイクッ、イクッ、イクわよーっ。それーっ!」


「どんな出陣してんだよ」

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