雑記(2)
話を信勝に戻す。
信長が「大うつけ」と呼ばれて家中の人間から不安視されていたのに対し、信勝は特に変わったところは無く、というかむしろ行儀良く、そのため、相対的に信長より信勝を高く評価する者も多かったようである。
そういった下地があるところへ、信長の後ろ盾となっていた斉藤道三が死んでしまったものだから、信勝はこれを好機と見て、「これ以上、兄には任せられない」との思いから挙兵に踏み切ったのであろう。
このとき信勝の味方についていたのが家老の林秀貞と、のちに鬼柴田とか甕割柴田と呼ばれた柴田勝家であった。
柴田勝家は、宣教師として日本を訪れたルイス・フロイスが「信長の時代の日本でもっとも勇猛な武将であり果敢な人」と評したほどの猛将だ。
その武力を頼みにしたのであろう、ついに信勝は信長に対して挙兵した。(一方、林秀貞は行政向きの人物である)
あるいは勝家が信勝に対し、信長に対抗するよう、けしかけたのかも知れない。
いずれにせよ、信勝は信長に対して挙兵へと踏み切り、信長がこの信勝を迎え撃つ形で、両軍はついに稲生という場所で戦をすることになる。
これが稲生の戦いである。
このように兄弟が戦に及んだ例としては、源頼朝と義経が有名だ。
(鎌倉時代のことだが)
当初、僕はここで上杉景勝と景虎の例を挙げようと思っていたのだが、これは僕の勘違いで、この二人の場合は養子同士の争いであった。
反対に、兄弟が仲良くしていた例としては毛利三兄弟が有名だ。
すなわち毛利隆元、吉川元春、小早川隆景の三兄弟である。(兄弟でありながら三人とも苗字が違うのは、弟二人がそれぞれ吉川家と小早川家の養子になったからだ)
もっとも、この三人が有名というよりは、父の毛利元就がこの三兄弟に対し、「一本一本の矢は容易に折れても、三本が束になれば折ることは出来ない。だから三人で力を合わせで生きてゆけ」的な、三本の矢の訓話を残した事で有名なわけだが。
近年では、安倍元総理が掲げた三つの経済政策が三本の矢に例えられた事が記憶に新しい。
それが経済にどんな影響を与えたのかは、もう皆さんご存知だろうと思う。(自分がよく知らない事は、こう言っておけば安心だ)
他に仲が良い兄弟の例を挙げるとすると、薩摩の島津兄弟や、豊臣秀吉・秀長の兄弟などが挙げられるであろう。
いつの時代も兄弟は仲良くありたいものだ。
勇猛果敢に戦う勝家軍に対し、信長は苦戦を強いられたが、このとき信長軍を支えたのが槍の名手として知られた森可成であった。
最終的に、この森可成の活躍により信勝軍は敗退。
これで信勝は打ち首かと思いきや、前にツッチーとして登場した土田御前(信長と信勝の母)の取りなしで、信勝は林秀貞や柴田勝家らと共に信長に許されている。
この戦いによって信長と勝家はお互いの強さを認め合ったのであろう、このあと柴田勝家は心を入れ替えて信長のために働くようになり、信長もまた、そんな勝家を重用することになるのだ。
一方、信勝の最後については、稲生の戦いのWikipediaには、次のように書かれている。
「弘治3年(1557年)11月2日、信長が病に臥していると聞き訪れた清洲城の北櫓・天主次の間で、信長の命を受けた河尻秀隆らに暗殺された。」
当然『オペレーション赤ずきん』なんてものは無く、信長が自ら手を下すということもなかった。
僕のふざけた創作を真に受けないように。
だが、この戦いで森可成が活躍したことは事実であり、これによって信長が森可成に対してさらに信頼を厚くした事は言うまでもない。
ここから先は余談になるが、残念ながら森可成はのちに宇佐山城の戦いで戦死してしまう。
その代わりと言ってはなんだが、信長は森可成の子を小姓として、特に可愛がった。
これが森蘭丸である。
森蘭丸については、もう皆さんご存知であろう。(便利すぎだろ、これ)
かなりの美少年だったとされており、いかにもBL好きの腐女子には人気がありそうだ。
美少年なのは羨ましい限りだが、この森蘭丸は17歳の若さで本能寺の変により信長とその死を共にする運命にある。
もしも僕がこの作品を最後まで書き続けることが出来たとしたら、最終話に予定している「本能寺の変」で森蘭丸くんにご登場願うことになるが、そこまで本作品が続くかどうかは神のみぞ知る世界、あとは僕の気まぐれなモチベーション次第だ。
ちなみに、稲生の戦いが起きた日は1556年9月27日である。
森蘭丸は1565年に産まれたとされているから、まだこの時点で森蘭丸は産まれていないが、いずれ彼らにはそのような未来が待ち受けているのだという話がしたくて、僕はこの余談を書いている。
ちなみに、この稲生の戦いに池田恒興の名は見つからない。
つまり参戦していなかったということだ。
じゃあ本編で信長にツッコんでいるのは一体誰なんだって話だが、そんな事は僕は気にしない。
べつに誰でもいいじゃんか、そんなの。




