弟・信勝の謀叛(稲生の戦い)(1)
「殿、一大事に御座ります!」
「何なのよ、恒興。朝からうるさいわね。こっちは朝食バイキングで限界まで食べ過ぎてお腹がパンパンなのよ。いま3杯目のコーヒーで粘っているところなのに」
「当主のくせに、なにセコい事してるんですか。つか、この時代にそんなものあるわけ無いでしょ。時代設定を無視した発言はやめてくれませんか」
「いいのよ別に、細かい事は気にしなくて。どうせこの作品はフィクションなんだから。今回だって、いい加減な想像で適当に書いてるだけだから何でも有りなのよ」
「何だかよく分かりませんけど、ひとまず状況だけ伝えときますね。殿の弟君の信勝様が反旗を翻しました」
「反旗? ひるがえす? 昼がSって事は、夜はM?」
「そんなわけ無いでしょ。殿みたいにSとMどっちでもOKの人なんて滅多に居ませんよ。って今、誰もそんな話はしてないですよね?」
「あら、そうなの? でもアタシはそれだけじゃないわよ。アタシはXも有りだから」
「何ですか、そのXってのは」
「Xvideoに決まってるじゃないの。アタシはね、一人の夜はXVideoを見ながらバットを握って素振りしてるのよ。本番に備えてね。プロは素振りを欠かさないものなのよ」
「格好良くプロ野球選手みたいな言い方してますけど、中身は下ネタじゃないですか。数少ない読者がまた離れちゃいますよ?」
「どうせアタシの作品に読者なんか居ないのよ。これまで頑張って57話も投稿してきたのに、未だに総合評価は0点よ、0点。どんだけ嫌われてるのよ、この作品。野球で言えば57イニング連続無得点みたいなもんだわ。このままだと59イニング連続無得点のプロ野球記録を更新しちゃうわよ? どうせみんなランキング上位の作品か、お気に入りの作者様の作品しか読まないんだわ」
「またそんなこと言って。こんなところでグチるのは止めて下さいよ」
「そうね。ここでグチっても仕方がないわね。ま、所詮は読まれたところでただの自己満足で、アタシには一銭の得にもなりゃしないんだから、どうでもいいっちゃどうでもいいけどさ。それでも中には飽きずにほぼ毎日、せっせと投稿している作者様も居るんだから不思議よね。それとか、気に入った作者様にFAを作って贈ってみたり、自分で企画を立てて作品を募集してる人も居るらしいじゃないの。オマエら、他にする事ねーのかよ」
「またそうやって敵を作るような発言をして……。そもそも他の人たちだって、別にそれしかしてない訳じゃないですからね。そんな事より、弟の信勝様が挙兵してこっちへ向かってますよ。どうします? 籠城しますか? それともこちらも打って出ますか?」
「あんな弟相手にいちいち籠城してたら、引きニートになっちゃうでしょ。もちろん打って出るわよ。撃って撃って撃ちまくる、全弾撃ち尽くし外交よっ!」
「鳥肌実ですか。また懐かしいフレーズをぶっ込んできましたね」
「うるさいわね。それじゃ、今すぐ出陣するわよ! 年上のアタシが年下なんかに負けるもんですか! 世の中は年功序列なのよ。石野陽子より石野真子、荻野目洋子より荻野目慶子、中山忍より中山美穂の方が偉いんだからーっ!」
「それ、兄弟の話じゃなくて姉妹の話に入れ替わっちゃってますよね。ていうか、一体いつの話ですか。そんな古い事ばっかり書いてるから誰も付いて来れないんじゃないですか。自業自得ですよ」
「じゃあ、misonoより倖田來未…」
「少しは最近になりましたけど、その二人も今じゃ見かけないですね。っていうか、そんな事より話を進めてもらっていいですか」
「分かったわよ、うるさいわね。それじゃ、ごたごた言ってないで出陣よ! 広瀬アリスの方が広瀬すずより清純だってことを教えてやるのよ!」
「私は広瀬すずの方がタイプですけどね。って、もうそれ全然関係無い話でしょ。あまりにも関係が無さ過ぎて、思わずツッコミを忘れそうになったじゃないですか。自由に書くにも程があるだろ。あと、固有名詞を出すなって何度言わせるんで……」
「それーっ! あのバカな弟を叩きのめすわよーっ!」
「だから人の話を聞けっての。つか、バカはアンタの方だろ」
………
………
「ねぇ、あの信勝の部隊の先頭で騎馬に乗ってる、おっかない顔したヒゲ男は誰かしら?」
「あれは柴田勝家様に御座ります」
「信勝と勝家ねぇ。どっちもカツが付いてるじゃないの。ダブルカツバーガーかよ」
「別に無理してボケようとしなくていいと思いますけどね」
「そんな事より、いつの間に弟はあんな怖そうなヤツと手を組んだのかしら」
「何を言ってるんですか。柴田様は元から信勝様の家臣じゃないですか」
「え? マジで? ……ふーん。それにしてもマジで怖い顔してるわね。あれ、鬼のお面を被ってんじゃないの? ナマハゲ? もしかして一年中、節分気分で浮かれてるとか?」
「そんなわけ無いでしょ。あれが素顔ですよ。柴田様は鬼柴田と呼ばれる猛将ですからね。やはり遠目に見ても迫力がありますね」
「なにが鬼柴田よ。鬼がなんぼのもんだっつーの。こんな事もあろうかと、いつでも撒けるように炒り大豆を持って来てるからね。それにこっちにだってサルと犬が控えてんのよ。サル顔の木下藤吉郎と犬千代の前田利家がね。皆で力を合わせて一斉に攻めかかって、バッチリ鬼を退治してやるわ! キジがいないのが残念だけど」
「それ、節分と桃太郎がごちゃ混ぜになってませんか? まぁ別にいいですけど。あと、キジは奇人の信長様って事でいいんじゃないですかね?」
「あ、そっか。キジは奇人のアタシ……って、おい! 人を奇人呼ばわりするんじゃないわよ」
「申し上げますっ! 信勝軍の足軽隊、我が軍の右備えに突撃して来ました!」
「いよいよ来たわね。こっちも負けてらんないわ。サルも犬もキジも一斉に懸かれーっ!」
「いや、キジはアンタだから」
「えーい、面倒くさいわ。全軍突撃ーっ! 信勝軍をぜーんぶ倒すまで、帰れまテン!」
「一体どんだけパクれば気が済むんだ、アンタは」
………
………
「殿、弟の信勝様と柴田勝家様が揃って降伏しましたぞ! 戦はわが軍の勝利に御座ります!」
「まったく二人には手を焼かされたわね。まぁ何とか勝てたから良かったけど」
「今度の武功者は森可成様に御座ります。さすが、槍の名手と呼ばれるだけの事はありますな」
「見るからにヤリチンだわね」
「槍の名手をヤリチンとか言わないでもらえますかね」
「ていうか、そんな有能な武将がアタシの配下にもいたのね。それならそうと先に言っといて欲しかったわよ」
「そんな事、言わなくたって皆に知れ渡ってますよ」
「まぁ何はともあれ、今回の見事な活躍でアタシもバッチリ名前を覚えたわよ、森よしのり君」
「可成ね」
「じゃあ、帰ったらしっかり褒美を取らせる事にするわ。褒美は、きび団子でいいかしら?」
「絶対ダメでしょ」
「まぁ褒美については、城に帰ってからゆっくり考えるわね。あとは信勝の処遇についても、どうするか考えなきゃね」
………
………
「というわけで、信勝。アンタ、兄のアタシに逆らうなんていい度胸してるわね。何か言いたい事があるなら言ってみなさいよ」
「……」
「黙ってないで何とか言いなさいよ」
「あ、兄上よりも私の方が優秀だから挙兵したのです。私の方が当主に相応しいですから。うつけ者の兄上に織田家の当主を任せるわけにはいきません」
「アンタがアタシより優秀? そんなアタシに、アンタは戦で負けてるじゃないの」
「そ、それは……」
「しかも、あの鬼の柴田勝家を味方に付けておきながら、よ。アイツ超怖ぇーわよ、特に顔が。思わず馬上でオシッコちびりそうになっちゃったわ。何なら少しちびってたわよ」
「殿!」
「冗談よ、恒興」
「いや、絶対本当だったでしょ」
「失礼ね、そんな事ないわよ」
「これ、信長」
「何ですか、母上」
「もう信勝を責めるのは、止めてやってはくれまいか」
「しかし、母上。ここは兄としてキツく言っておかなければ……」
「この通り、信勝だって反省しているではありませんか」
「これが反省してる顔ですか。どっちかと言えば半笑いじゃないですか」
「信勝は産まれつき優しい顔をしているからそう見えるだけです。私を睨みつけるようにして産まれてきたお前とは違うのですよ。そりゃあもう、信勝の可愛いこと可愛いこと。あの時ほど、子を産んで良かったと思った事は無かったわ」
「そうやって母上が甘やかすから、信勝がつけ上がるのです」
「あーもう、うっせーな。これ以上ガタガタ抜かすと、お前のケツの穴にポッキーを突っ込んでグリグリかき回して、チョコが付いてんだかウンコが付いてんだか分かんなくしちゃうぞ、コラ!」
「母上、そ、そんな無茶苦茶な……」
「信勝! そなたはもう下がってよい。あとはこの私が信長によく話しておくから」
「はっ。では兄上、私はこれにて」
「信長も、これで文句は無いわね?」
「母上がそこまで言うのなら、今回だけは目をつぶりましょう。ただし、二度目はありませんから。問答無用で切って捨てるので、そのつもりで」
「いいでしょう。その時はお前の好きになさい」




