爺の説教(2)
「ん? いま爺、何か言った?」
「い、いえ。爺は何も申してはおりませぬぞ」
「そう? ならいいけど」
「それより殿。爺は覗きの話をしに来たのではなく、当家の状況について話をしに来たのです。まずは当家の歴史からお話しさせてもらいますぞ」
「分かったわよ。手短にね」
「どうしても長くなってしまいますが、短くなるよう努力は致します。ではまず、我が織田家に御座りますが……」
「ぐがぁー」
「おいっ! 寝るの早っ! 何たる無様。この大うつけのオカマ野郎!」
「……聞こえてるわよ」
「いや、絶対寝てたでしょ」
「オカマ野郎が何だって?」
「げっ。聞こえてるし。……あ、いえ、それはおそらく空耳に御座りましょう。そんな事より話を続けますぞ。現在、この織田家は決して一枚岩ではなく、織田一族の親戚たちが尾張内の各城の城主となり、それぞれ独立しているような状態となっているのです」
「織田家って、以前から子だくさんの家系だからねー。まぁそうなるわよね」
「ちなみに信長様は『弾正忠家』という家柄に御座ります」
「ダンジョンが何だって?」
「ダンジョンでは御座りませぬ。『だんじょうのじょうけ』に御座ります。清洲織田家に仕える清洲三奉行家のうちの一つなのです」
「何なのよ、その清洲三奉行家って」
「因幡守家、藤左衛門家、弾正忠家の三家に御座ります。この清洲三奉行家は守護代の大和守家の配下になっておりまして、また守護代には伊勢守家も御座ります。要するに、織田は大きく五家に分かれて尾張を統治しているという事です」
「そんなに細かく枝分かれしちゃうと訳が分からないわね。家系ラーメンかよ」
「そうそう、元祖が吉村家でそこから枝分かれして……って、おい。今そんな話してねーだろ」
「あら、爺もノリツッコミが出来たのね。つか今、タメ口じゃなかった?」
「あ、いえ、決してそのような……。そうそう、織田が五家に分かれて尾張を統治していると言っても、形の上では尾張の守護職は斯波氏が担っており、今は斯波義銀がその職に就いておられます」
「で、あるか」
「唐突に織田信長みたいなセリフをおっしゃいますね」
「何言ってんのよ。アタシがその織田信長だっつーの」




