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帰蝶との結婚

「信長様、お初にお目にかかります。斎藤道三の娘、帰蝶(きちょう)と申します」


「おぉ帰蝶。もっとこっちへ来ちょう。なんつって」


「……?」


「あ、べつに何でもないから。そのまま続けて」


「はい。えっと、こんな……ふつつか者ですが、どうぞよろしくお願いします」


「ちょっとぉー。なぁに言ってんのよー。二日ものも三日ものも気にしなくていいわよ。アタシのおパンティなんて、もう一週間も履き替えてなくて七日ものになっちゃってるわよ。お小遣い稼ぎにヤフオクへ出品しちゃおうかしら」


「……」


「あ、えっと……。あのさ、とりあえずアタシが冗談を言うたびに絶句して黙り込むのは()めてもらっていいかしら。地味にMP削られちゃうのよね」


「……」


「もー何なのよ、これ。お一人様でスキー場へ来た客みたいになってんじゃないの。アタシ一人だけスベり倒しかよ」


「……」


「もういいわよ。好きにしなさいな」


「あのー、信長様?」


「何よ」


「信長様は、いつもそのような話し方をなされるのですか?」


「ええ、そうよ。だってアタシ、オカマだから」


「えぇっー!? マジでぇー? ちょーウケるんだけどぉー」


「ゲッ! 何よその変わり身の早さは。しかも、いきなりタメ口?」


「えー? えっとおー、だってアタシー、本当はコギャルじゃないですかぁー」


「あら。『アタシ、何とかじゃないですかぁー』って言うパターン、久々に聞いたわね。そんなもん、知らないわよ。つか、コギャルなんて死語よく知ってたわね」


「なんか信長様がオカマでホッとしたっていうか? 信長様は……大うつけ? そんなふうに毎日聞かされてた? みたいな?」


「うわ。そうやってムダに語尾を上げる言い方もちょっと懐かしいイライラ感だわね。昔を思い出すわー」


「じゃあ今日からアタシは信長様をノブって呼ぶから。よろしくね、ノブ」


「ちょっとアンタ、なに勝手に打ち解けてんのよ。アタシは自分の言った冗談がアンタに完全スルーされて、気分が悪いってのに。つかアタシんとこ、親も兄弟も親戚も全員ノブだからね。その呼び方だと全員が振り向いちゃうわよ」


「そんなの別に構わないわよ。きっといい友達になれるわ、アタシたち」


「どこをどう見てそんな事が言えんのよ。ポジティブの塊かよ。あとアタシたち、友達じゃなくて夫婦になるんだけど」


「分かってるわよ。とりあえず、まずは友達から始めましょうって事よ」


「なに体良(ていよ)く男子からの告白を断る女子みたいなこと言ってんのよ。なんで女子っていつもそうやってキレイ事で済まそうとするのかしら。『付き合う気はありません』って言ってくれた方がお互いスッキリするのにさ」


「なんですか、それ」


「べつに。ちょっと学生時代を思い出してグチってみただけよ」


「あ、そうだ。父の道三にはノブがオカマな事は内緒にしておくから、安心していいわよ」


「え? そうなの? 助かっちゃうわね。……ってそうじゃなくて、アンタ、人の話を聞きなさいよ」


「それよりさー、ノブの部屋汚くねー? ヤバ谷園でしょ。アタシが掃除してあげるわよ。もー、何でこんなにゴミが溜まってんのよー。ほんとにぃー」


「出た、ヤバ谷園。まだそんな事を言ってる人がいるなんて驚いちゃうわね。あと、無駄にキレイ好きをアピールする女。もしかしてアンタ、面倒くさい系女子?」


「ほら、なにボサっと突っ立ってんのよ。さっさとホウキとチリ取りを持って来なさいよ」


「何よそれ。掃除当番の中学生か。それくらい自分で取って来なさいよ」


「何か言った?」


「べつに何でもないわよ」


「あと、物を置くときは床板の向きときっちり平行か、きっちり垂直かのどっちかにして置いてちょうだい。斜めってたら承知しないから」


「げっ、几帳面かよ」


「そうよ。だってアタシは帰蝶だから」


「アンタの性格はダジャレで決まんのか。つか、なんで嫁に来たアンタがアタシに命令してるのよ。アタシは織田家の次期当主なんだからね」


「だって空の上じゃ、帰蝶が一番偉いのよ?」


「そりゃ帰蝶じゃなくて機長だろ。あと、ここは空の上じゃなくて床板の上だから。あーあ、この調子じゃ、これから先が思いやられるわ」


「これはダメかも分からんね」


「アンタが言うな!」

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