雑記
今回の登場人物は、またしても織田信秀と平手政秀である。
あとは織田信秀の弟の死を報せる報告役のエキストラが若干一名。
会話の中に出てくる美濃のマムシとは、言わずと知れた斎藤道三の異名である。
斎藤道三は油売りの行商人から身を起こし、最終的には戦国大名となって、美濃(現在の岐阜県相当)の国主にまで上り詰めた人物だ。
ただし、そのやり口は裏切りと謀略の繰り返しであり、時には毒殺という手段も辞さないといった悪役ぶりで、地道に実績を積み上げて国主に上り詰めたのではなく、ずる賢く国主の座を掠め取るようなものであった。
まさに国を盗んだとも言える訳で、彼を題材にした『国取り物語』という小説や大河ドラマを知っている人もいるんじゃないかと思う。
斎藤道三が美濃のマムシと呼ばれた背景には、彼のこのような狡猾さをヘビになぞらえると同時に、卑怯者といった蔑みのニュアンスも含まれていたものらしい。
ちなみに聖書には「蛇のように賢く、鳩のように素直でありなさい」とイエスが言ったとされる箇所があり(マタイによる福音書10:16)、ヘビは狡猾と言うよりは賢い動物という認識のようである。
僕自身は、ヘビが賢いかと言われると「うーん」と首を捻ってしまう。
だって、爬虫類だよ?
例えばカラスなら、クルミを車道にわざと落とし自動車に轢かせてその殻を割る程度には賢いけれど、ヘビなんて本能と条件反射だけで生きているようにしか見えないし、思考能力があるようにも思えない。
いったいヘビのどこが賢いというのか。
あと、鳩が素直というのもピンと来ない。
パンくずを撒いたら寄って来て食べる、という程度の状態を素直と呼んでいるのなら分からなくもないけど。
まぁ、シルクハットから鳩を出すといった手品があるくらいだから、扱いやすいのは確かなのだろう。
(単純に白いからよく目立ってステージ映えする、というだけの理由かも知れないが。ひょっとして、鳩をハットから出すというダジャレだったりして)
そういえば、手品によく出てくるあの真っ白な鳩を、マジシャンは一体どこで調達してくるのだろう?
無論、野性ではなくどこかで繁殖させているのであろうが、真っ白な鳩なんてせいぜい手品の小道具くらいにしかならないし、鳩をペットとして飼うというのも一般的ではない。
つまり真っ白な鳩の繁殖や販売がまともな商売になるとは到底思えない。
ではそんな中、マジシャンはどうやって真っ白な鳩を調達しているのか。
もしかすると予想とは反対に希少価値が高く、想像以上の高額で取り引きされていたりするのだろうか。
さぁ、これを読んでるそこのキミ。
この機会に始めてみないか? 白い鳩の繁殖を。
僕は興味無いけど。
さてこの時代、斎藤道三が居た美濃と織田信秀が居た尾張とは隣接していたため、尾張の織田家が勢力を伸ばしていくにつれて、お互いの存在が無視できない状況となっていた。
先に仕掛けたのは織田信秀の方だったのだが、逆に手痛い敗北を喫してしまう。
これが今回取り上げた加納口の戦いで、信長公記によると織田軍は5000人の戦死者を出す結果となっている。(この辺りの記述は文献によって異なるらしい)
参考までにWikipediaでこの戦いにおける両者の兵力を見てみると、信秀軍26000に対し斎藤道三の軍は4000となっており、実に6倍以上の兵力差があったことが分かる。
まぁそりゃ籠城するわな。
だが、仮に信長公記にあるように信秀軍が5000人討たれたのが事実としても(そして斎藤道三軍の損失が仮にゼロだとしても)、なお21000対4000の兵力差であり、まだ信秀軍は道三軍の5倍強の兵力を持っていた計算になる。
数字だけを見れば、織田家と比べて斎藤家の兵力は心許ないが、それでも籠城からの奇襲で勝ってしまうのだから、さすがは美濃のマムシといったところであろうか。
ていうか、いくら兵を引き上げていたタイミングとはいえ、26000の兵を動員しておきながら、たった4000の兵に5000もの兵を討たれて負けている信秀軍もどうなってんだって話だ。
尾張の兵は弱いことで有名だったらしいが、さすがに弱いにも程があるだろ(笑)。
いずれにせよ、この加納口の戦いは、斎藤道三にとっては織田軍の兵の多さを、織田信秀にとっては稲葉山城の堅固さと道三軍の強さを再認識させる戦いとなった。
それを裏付けるかのように、この加納口の戦いの後、織田家と斎藤家は和睦の道へと向かうのである。
そしてこの和睦のために、織田信秀の嫡男である信長と斎藤道三の娘の帰蝶とが駆り出されて結婚させられる事になるのだが、それはまた次回の話。




