美濃のマムシ(加納口の戦い)(2)
「申し上げまーすっ! 斎藤道三の軍勢、引き上げ中の我が軍の背後から攻撃を仕掛けて参りました!」
「なんじゃと! くそー、美濃のマムシめー。ワシが兵を引いている時に仕掛けてくるなど、武士の風上にも置けぬわ」
「はっ。しかも美濃の軍勢の士気は高く、意気盛んなように御座ります。我が軍は不意を突かれて応戦もままならず、続々と討たれている模様!」
「おのれー、美濃のマムシめー。やはりワシは卑怯者のマムシと戦う前に、赤マムシドリンクを飲んでおくべきであったか。さすればビンビンのギンギンになって自慢の槍でガンガン突きまくって、このように無様な中折れなど……。この信秀、一生の不覚ぞ」
「殿。これは中折れとは、ちと違うかと……」
「うーん。そして翌朝までには、さらにもう一戦交えることも出来たはずなのじゃが……」
「って、聞いてねーし……。殿! そのようなお戯れを申されてる場合ではありませんぞ。まぁ、いかにも12人の息子と10人以上の娘をもうけた殿らしい発言では御座りますが……」
「当然であろう。何を隠そう、ワシはほぼ毎晩、赤マムシドリンクを飲んで女子の寝床を次から次へと渡り歩いておるからの。これが本当の蛇ーローテーション。なんつってな」
「やかましいわ。こんな時に冗談を言ってる場合ですか。調子に乗んな、この子作りマシーンが」
「誰が子作りマシーンじゃ」
「あ、いや。何でも御座りませぬ。それより殿。わが軍の士気は壊滅的に御座りますぞ。何か手を打たねば、このままでは損害が大きくなるばかり……」
「分かっておる。敵の追撃を防ぎつつ、速やかに全軍を退却させるのじゃ」
「全軍退却ー! 退却ーっ!」
………
………
「……どうじゃ、皆は無事に退却できたかの?」
「はっ。未だ交戦しながら全軍が退却中に御座ります」
「そうか。相分かった」
「殿! 殿ーっ!」
「誰じゃ、ワシを呼んでおるのは。一体どうしたのだ、そのように慌ておって」
「殿! 私は殿の弟君の信康様に仕える者に御座ります」
「おお。信康の手の者か。して、何とした」
「はい。信康殿は美濃勢の急襲に会い、劣勢の中で奮戦されておりましたが、四方を敵に囲まれ……討ち死になされました」
「何? 討ち死にだと?」
「はっ。無念に御座ります。信康様は敵と切り結びながら、この私に『今の状況を兄上に伝えよ』とお命じになったので御座ります。私が信康様の元を離れた直後に、殿は……、殿は……」
「分かった、もうよい。下がって休め。おのれー、美濃のマムシめ! いつの日か、ワシが弟の仇を討ってやるからな。のう、政秀」
「そうですとも、殿。その意気に御座りますぞ」
「ワシは絶対に美濃のマムシを倒すぞ。そうじゃ、ワシはマングースになってやる。ワシはいつかマングースになって、マムシの腹を食いちぎってやろうぞ。うわーっはっは! うわーっはっはっは……」
「殿、マングースが食いちぎるのはマムシではなくハブに御座ります。あと、この時代にマングースは日本に居りませんぞ」
「細かい事は気にするでない」




