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美濃のマムシ(加納口の戦い)(1)

「殿。こうして美濃に攻め込んではみたものの、斎藤道三軍は籠城したままで一向に攻めてくる気配がありませぬな。さすがは我が織田信秀様。敵はすでに戦意喪失しているかもしれませぬな」


「まったくよの、政秀。これが美濃のマムシと呼ばれる男のすることかの。まるで期待外れじゃわ。わざわざこちらから出向いてやっておるのに、なぜ正々堂々と戦わぬのであろうの」


「我らが(いささ)か兵を集め過ぎたために御座りましょう。この兵力差ではいかに美濃のマムシといえど、籠城を選択するのも致し方ないかと」


「いや、ワシもここまで兵を集める気は無かったんじゃが、ちと予想が外れての。これを友達同士の飲み会で例えると、大して仲良くないけど表面上は友達という程度の付き合いしか無い友達を、まったく声を掛けずに自分たちだけで飲み会をするとカドが立つから、『まぁどうせ誘ったって来やしないんだし、形だけ声を掛けておこうか』くらいな感じでタカを(くく)って誘ってみたら、いつもは誘いを断るくせに、なぜか今回は来るとか言い出し始めて『えっ、マジで来るの?』ってなっちゃって、でも自分から誘った手前、今さら来るなとも言えないし、仕方なくそのまま飲み会を開くことにしたら、案の定なんだかいつもと違う変な空気が流れてあんまり盛り上がらない飲み会になっちゃった、みたいな感じかの」


「説明が長い割には、あんまりピンと来ない例え話に御座りますな」


「うるさい。分かる人には分かってもらえるはずじゃ」


「そんなものですかな」


「しかし、こんなにガッツリと城に(こも)られては、まるで首をすぼめて頭を甲羅(こうら)に引っ込めている亀と同じよの。亀は頭を出してこそ、その価値があるというものじゃ。そうであろう? 亀の頭は出ていてこそ、亀の頭なのじゃ。姿を見せない亀の頭など、まるで皮を(かぶ)ったおちんち…」


「殿。もうそのくらいでよろしいかと……。あんまり亀の頭、亀の頭と連呼するのはお控え下され。つか、そこまでして強引にエロに寄せた表現をなさらなくてもよろしいのではないですか?」


「そちはエロが好きじゃからの。サービスじゃ」


(ひま)さえあれば女と寝ている殿には言われたくないですな」


「これこれ。人聞きの悪いことを申すでない。ワシは織田家の繁栄を願ってじゃな……」


「しかし、殿。これではラチが開きませぬぞ」


「まぁ出て来ないならそれでも良いわ。こうして村や田畑を焼いて回っておるからの。ほれ、村がムラムラと燃えておるわ。ガーッハッハー」


「それを言うなら、メラメラとでしょ」


「相変わらずシャレの分からぬ奴よの。ワザと言ってるに決まっておろうに」


「なるほど、そうでしたか。しかしよく燃えますな。殿は日頃、ツッチーにイジめられておられる(ゆえ)、これはいい憂さ晴らしに御座りましょう」


「だからワシの嫁をツッチー言うなと申しておるに。何度も同じ事を言わせるでない。まぁでも確かに御前(ごぜん)には日頃から何かとパシらされておるから、ムシャクシャしていたのは事実よの。これで少しは気分も晴れたというものじゃ」


「それは何よりに御座りますな」


「さて、気分が晴れたところで、そろそろ兵を下げて休ませるとしようか」


「承知しました。では全軍に兵を引き上げるよう、命じておきましょう」


「ワシらも早めに引き上げることにしようかの」

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