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鷹狩り

「さぁ、今日は鷹狩りよっ! 恒吉(つねきち)も遅れずに付いてらっしゃいっ!」


「若様。今や私も立派に元服を済ませ、池田恒興(いけだつねおき)という名に御座ります。もはや恒吉では御座りません」


「あら、そうだったわね。アンタの名前は、あそこが常におっきい『つねおき』ね。覚えておいてあげるわ」


「いや、そんなとこ常に大きくないから。別にそんな変な意味じゃないから。つか、まったく漢字が違うだろ。どんな覚え方してんだ」


「あら、そうなの?」


「そうですよ。それに、そんな事ばっかり言ってると読者が離れていきますよ。特に女性読者が」


「そんなもん最初から居ないわよ。それに、本当は男より女の方が数倍エロいっていう話も聞いたことがあるから問題無いはずよ」


「いや、そういう問題では……」


「うるさいわね。それよりアタシは今、目的の場所を思い出してる最中だから話しかけないでくれる? えーと何処だったかしら……あーそうだ、あそこだわ」


「あ、若様。お待ちください! くそー、あのオカマ野郎。こっちの話も聞けっての」


「おーい、早くこっちに来なさいよー!」


「……ったく。……はいはい、来ましたよ」


「あそこが常におっきい恒興、ここ、覚えてない?」


「あのー、私の名前の前に枕詞(まくらことば)みたいに『あそこが常におっきい』って付けるのやめてもらえますかね」


「そんな事より、ここを覚えてないかってアタシは聞いてるのよ」


「そんな事よりって……。まぁ言われてみれば、たしか前にも一度来た場所のような気もしますが……。でもここは獲物が少なくて、鷹狩りには適さない場所だったように思います」


「何よそれ。アンタ、アタシがなんでここへ来たと思ってるの?」


「鷹狩りに来たのでは?」


「ノン、ノン、ノーン! (ちげ)ぇですわ。そんなもん、建前に決まってるじゃないの。アンタそんな事も分からないの? アンタの脳みそはタケヤ味噌?」


「若様、その発言はメーカーからクレームが来ますぞ。あとその『(ちげ)ぇですわ』って言い方はやめてもらっていいですか? キメぇですわ」


「あ、ほら。あそこが常におっきい恒興、あれを見なさいよ」


「だからそれ、やめろって言ってんだろ」


「ん? アタシに何か言った?」


「あ、いえ、べつに」


「ほら、あそこよ。見えるでしょ」


「おぉ。敵の足軽部隊が訓練している様子が手に取るように見えますな。あれはおそらく、斎藤道三の部隊にござりましょう。なるほど、鷹狩りというのは偽りで、本当はこうして敵情視察に来たということなんですね? さすがは若様。この恒興、感服致しました」


「ちょっとぉー。何言ってんのよ」


「え?」


「見ている場所が違うわよ。ほら、もっと手前の茂みの中よ」


「えっ? 手前の茂み? って、どこ見てるんですか。それが織田家嫡男のする事ですかっ! この大うつけ!」


「あら、アンタにはまだ刺激が強かったみたいね」


茂みの中では、若い男女が肌も露わに情事に(ふけ)っているのであった……。

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