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何も大きな出来事がなく一週間が過ぎた頃だった。どうも最近佐々木が病院に来ない。テストという可能性もあるが、この時期にテストはない。彼女ができたのだろうか。
「やっほ〜」
病室を開け、佐々木がにこにこしながら話しかけてくる。
「何かあったの?」
「んやぁ?何にも」
明らかにいつもよりにやにやしている。これは何かあったな・・・。
「もしかして・・・、彼女できた?」
「だったらいいけどな」
彼女ができたわけではない・・・。だとしたら何があったというのだろうか。
「気になる?」
「気になる」
「んじゃ教えない」
「なんで!?」
どうやら佐々木は僕には教えたくないらしい。どんなに頼み込んでも教えてくれることはなかった。
「そういえばお医者さんが六月頃には退院できるかもだって」
「おお!やったね」
「うん」
「この頃体調良かったもんな」
そう言われればそうだ。前に比べて熱も出なくなってきたし、辛く感じることが少ない。これも治療のおかげだろうか。
「じゃあ俺は帰るとします」
いつも通り多愛のない話をした後、佐々木は立ち上がった。今日も早い。
「うん、またね」
「おう」
佐々木が病室を出ていくのを確認し、ほっとひと息をつく。この頃は本当に対応が分からなくなってきた。変に思われていないといいな。
深く深呼吸をしそっと目を閉じる。
目を開けると僕は魂魄部屋にいた。蝋燭を消し、議論部屋へ向かう。
①「ただいま」
②「お疲れ」
いつもなら三番や五番たちが大きな声で雑談をしているはずだが、今日はやけに静かだった。何かあったのだろうか。
①「・・・何かあったの?」
②「それが、ちょっと深刻になっていてね」
①「深刻?」
③「0番のことよ、目が覚めそうなの」
①「えー・・・、まじか」
0番が起きたら多分とんでもないことになる。0番が起きないようにするのも僕たちの役目だ。
⑤「いっそのこと起こせば?」
③「はぁ?あんた正気?起こしたら死んじゃうじゃない」
⑤「うーん、アレから結構経ったし、大丈夫じゃない?」
③「自分が知らぬ間に時が随分過ぎてたらパニック起こしてすぐ死ぬわよ」
五番の言う通り、アレからは結構な時間が経った。だけどその分の時間は本人が起きていない限りカウントされていない。だから0番が起きて時間を過ごさなければ時間が経っていないことになる。難しい・・・。
②「この先、いつかは0番を起こすことになる。それが今でいいのか、駄目なのかを決めよう」
③「絶対今起こすべきではないわよ」
⑤「いや、今起こした方がいいと思う」
①「・・・僕はまだ起こさない方がいいと思う」
②「四番は?」
④「私は・・・、今起こすべきだと思います。あまり時間が経ってしまってから起こしてしまうとパニック症状が倍になりそうですし、」
①「確かに・・・」
②「取り敢えずこの話は各自持ち帰って考えてくるように」
①③⑤「はーい」