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未完成信号  作者: 山田
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①「・・・ただいま」

ドアを開けると同時に話し声が聞こえてきた。既に議論が始まっているようだ。

②「静粛に」

暗い部屋の真ん中に蝋燭が立てられその周りが仄かに明るくなる。

⑤「おいおい何いちゃついてんだよー」

③「距離が近すぎないかー」

⑤「そうだそうだー」

②「話を聞け馬鹿二人」

③⑤『馬鹿とはなんだ』

二人の声が同時に重なる。仲が悪いのかいいのか・・・。

③「おっ、おかえり〜一番」

①「ただいまー」

⑤「お疲れ様〜」

今どう言う状況なのか説明しよう。ざっくり言うと僕たち穂村は多数の人格をもつ多重人格者なのだ。詳しく言うと基本人格も合わせると六つの人格がある。

基本人格者(⓪)|この体の基本の人格者。自殺未遂を繰り返すため眠らせている。年齢は十三歳。       

第一人格者(①)|一番表に出ることが多い人格者。押されると弱く、何にでもイェスと答えてしまうイェスマン。性別は不明、年齢は十六〜十八歳。

第二人格者(②)|それぞれの人格者をまとめる人格者。六人の中でも一番真面目でおかん的な存在。性別は男で、年齢は大学生。

第三人格者(③)|気が強く、思ったことを何でも言ってしまう性格だが何かと優しい。性別は女、永遠のJKと語っている。

第四人格者(④)|表に出ることが少なく、極度の人見知り。絵を描くことが得意とする。いわゆるヲタク。性別は女、十六歳。

第五人格者(⑤)|空気を読めないが場を和ませてくれるので悪いやつではない。性別は男、十七歳。

第六人格者(⑥)|過去に居た人格者。消失した。

それぞれの人格は互いに一番や二番など、番号で呼び合っている。みんな自由に過ごしているこの空間は『心空』と呼んでいる。心の空間という意味だ。心空には十個の部屋がある。そのうち五個は個人部屋で六個目はこの議論部屋、七から九個目は空き部屋で、十個目は魂魄部屋と呼ばれる部屋だ。魂魄部屋とは、それぞれの人格者の一人が入ると体を動かしたり、意思を表に出すことができる、いわゆる魂を入れれる場所だ。一人以上は入ることができず、出入りは自由にできる。誰も居ない状況の場合、向こうでは『睡眠』という状況だ。ざっとこんなもんだろう。

③「いやぁー、今回も難敵わね、あいつ」

①「だねー」

佐々木に関しては皆んなもこの頃危機感を察している。日に日に距離が近くなっていくのだ。

③「仕方ないよね・・・」

②「まぁ、私達がバレては少し面倒だからな」

二番が言う通りだ。佐々木は穂村の幼馴染と言うこともあり、避けざるえないのだ。

③「とりま様子観察ってとこかしらねぇ・・・」

①「だねー」

⑤「お前はそれしか言えないのかよ」

①「ハハっ」

五番のツッコミを軽く交わし、再び考える。流石に自分も佐々木の異変に気がついている。佐々木が何を考えているのかは全然分からない。

②「取り敢えず、佐々木君が何か仕掛けて来ない限り反発するのはやめておこう」

①③⑤『はーい』

僕と三番と五番が了承する。二番の言うことを素直に聞くのは当然だ。何故ならば怒った時の二番は強烈なほど怖いのだ。

僕たちは朝になるまで雑談したり、自由な時間を過ごす。起床時間の少し前になると三番が合図をしてくる。

③「んじゃ、一番まかせたっ」

表に出るのはほぼ僕の役目なのだ。嫌な訳ではないが責任を感じるので少し怖い。まぁそう言っても強制的にやらされるのだろう。

僕は議論部屋を出る。廊下を歩き進み、一番奥の部屋の扉を開ける。ここが魂魄部屋だ。真ん中には椅子と蝋燭がある。椅子に座り、蝋燭に火をつけると僕の意識は失われていく。

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