第八話 『指名』
意味が分からない…。
何で…。
何で…?
「ユナちゃん、体験入店にしては凄く良かったよぉ?今度は、シルバーかゴールドまで出来ると良いねぇ?じゃあ、また指名するね?」
――ガチャッ…
――ギィィィィッ…
そう言うと、おじさんは満足気に部屋から出て行った。
――バタンッ…
クレムパイズの接客サービスの流れは、先にお客さんを部屋に入れ、娼嬢のサービスが終わると、先にお客さんを部屋から出すようになっている。
接客サービスの内容によっては、娼嬢が失神して意識が無いような場合もあるようだ。
その為、サービス終了後にお客さんが部屋を出た後で、黒服さん達が部屋に入り、娼嬢のアフターフォローにあたると、レジーナさんから聞いていた。
私は放心状態だった…。
まさかフィニッシュ時に…あんな事されるなんて。
――コンコン…
「ユナちゃーん?大丈夫??入るねー?」
――ガチャッ…
――ギィィィィッ…
黒服さん達が部屋の中に入ってきた。
「あーあー。ユナちゃんも運悪いなー。体験入店一人目の指名でコレ…やらされたのかー。」
コレと言う時に…拡げるジェスチャーを黒服さんがしたので、私は頷いた。
「身体の外からだからさ?規約上…違反じゃ無いんだけどねぇ…。常連の間ではもう…やるのが当然なんだよ。」
そんな話、誰にも聞いても居なかった…。
「とりあえず、ユナちゃんの身体、起こすよ?」
――グイッ!!
無気力にベッドに横たわっていた私を、黒服さん達が抱き起こした。
「早く、アリサちゃんに薬貰って飲もうか?あと、処置担当呼ぶから待っててね?」
そう言えば…胎内で何か蠢いているような気がする。
リヴくんの一部が守ってくれていたようだった。
――――
「ユナ、災難だったね?ホントにゴメン!!すっかりそう言う話があるの忘れてたよ。ブロンズチップまでって子が希少だから意識しないんだよね…。大半がロックチップまでで、あとはゴールドチップかプラチナチップだから。」
なるほど…。
ロックチップまでなら、私が受けたようなハイリスクな行為をされる危険がない。
アリサみたいに対処法がある娼嬢なら、わざわざ報酬の低いブロンズチップを選ぶ必要もない。
「ユナちゃん?また、ご指名だよー?サービス内容は、トラウマになりそうだけど…ブロンズチップで頼むねー?」
ホントにさっきのおじさんはトラウマ級にキモかった。
キモいのに…凄く上手かった…。
だから心許し始めていたのに…最後のアレは許さない。
どうせ次も…体験入店を狙ったクズ野郎の指名だろう。
「はい…。」
――――
――コンコン…
「ユナです。お待たせいたしました。」
――ガチャッ…
――ギィィィィッ
お客さんが待っている部屋のドアを開けた。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。ユ、ユナたん!!こ、ここにきて、た、立ってろ!!」
言動からして、ヤバいオーラ全開だ…。
見た目も、テクノカット風で所謂…チ○牛系だった。
「はい…。本日はご指名下さりありがとうございます。」
返事をして、部屋の中の指示された場所まで歩いていく。
――――
私は、頭の中がぼーっとしてきていた。
さっきから…ずっとだ。
恐らく、もう十回目になる…。
私があと少しで…と言うタイミングで止められていた。
チ○牛系っぽいので慣れていないのかなとも思った。
でも…止めるタイミングは、明らかに私の様子を窺いながら判断しているようだった。
「ユナたん…ぼ、僕下手でご、ゴメンねー?ほ、本番なら僕も上手いんだよ?どうする?ゴールドチップにグレードアップしちゃおっかねぇ?じゃないとー、僕下手だからあと何回も続くかもしれなくて、ユナたんが辛くなるよー?」
このチ○牛系、急に早口になると吃りも消えた。
レジーナさんが私に気をつけるよう言っていた手口だ…。
――――
あれから、何度も何度も…止めないで欲しいと叫んだ。
だけど、無駄だった…。
「ほら?ゴールドチップにアップグレードします!って言ってごらんよ?」
私はレジーナさんが耳元で囁いた言葉を思い出していた。
「アウト!!」
「全く、アウトじゃないよ?アップグレードだよ?」
このチ○牛系はこの後、自分の身に何が起こるのか、想像すらしていない様子で、未だ私に言わせようとしていた。
――ガチャッ…
――ギィィィィッ…
部屋のドアが開いた。
「ま、まだ僕…ふぃ、フィニッシュし、してないぞ!!」
そういきがるチ○牛系の前にレジーナさんが現れた。
「これよりあなたは出禁です。今すぐ立ち去りなさい。」
「うるさい!!何が出禁だ!!」
――パチン…
レジーナさんが指を鳴らすと、チ○牛系の姿が消えた。
「ユナさん?辛い思いさせて、ゴメンなさいね?あなた達?ユナさんのアフターフォローお願いね?」
気がつけば、黒服さん達が私の背後に来ていた。
「ユナちゃん?ちょっとだけ…ベッド行こうか?」
――――
黒服さん達のおかげで、私の頭の中も身体もスッキリだ。
「あの…あと一人だけ、指名受けたらもう…体験入店終わりたいです。」
「さっきの相当酷かったもんねぇ?受付に伝えとく!!」
待機部屋で黒服さんと少し話をしていた。
「そんな、ユナちゃんにご指名だよー?サービス内容は、ブロンズチップで頼むねー?」
息をつく暇もなく、指名が入ってしまった。
――――
――コンコン…
「ユナです。大変お待たせいたしました。」
――ガチャッ…
――ギィィィィッ…
恐る恐る、お客さんが待っている部屋のドアを開ける。
「えっ?!服屋でお会いしたお姉さん…ですよね!?」
そこに居たのは、領主の息子のエスデンド様だった。
「はい…。本日はご指名下さりありがとうございます。」
「ユナさんて…言うのですね。では…ユナさん?ベッドの上で横になって下さい。」
先程の事が頭の中でふと…蘇ってしまった。
すると身体が震え始めてしまった。
「先程の話は聞かせてもらいました。大丈夫です。僕はそんな卑怯な真似はしませんよ?ほら、ゆっくり?横になりましょう。」
エスデンド様にいざなわれるかのように、ゆっくりとベッドの上で横になった。
――――
何度も…何度も…。
私は…声をあげて果てた…。
今…エスデンド様により、あともう少しのところなのだ。
「ユナさん?僕は…あなたの恋人になれるでしょうか?」
「はいっ!!なれます!!お願いします!!」
もう…私の中の合格点はとうに超えていた。
それよりも今は…エスデンド様のする事に集中していた。
「それじゃあ…。ユナさん、一緒にいきましょうか?」
「はいいいいっ!!」
――――
頭の中が一瞬、真っ白になった。
身体の中がほのかに温かく感じた…。
「あの…。ユナさん?さっきの言葉、僕は本気にして良いのですよね?」
急に、エスデンド様の声が聞こえた。
一瞬、私に意識は飛んでいたようだ。
「はい…。でも…私には、エスデンド様以外に恋人が四人おりますが…平気でしょうか?」
私は…欲しがりの…寂しがりだ…。
だから…ありのままを伝えた。
「やはり…。こなれておりましたのは、そのような理由でしたか。僕は構いませんよ?いつか、僕だけを向かせて見せましょう。」
「では、宜しくお願いします。」
――コンコン…
「ユナちゃーん?もう良いかな?入るねー?」
――ガチャッ…
――ギィィィィッ…
黒服さん達が部屋の中に入ってきた。
――――
「何で、待機部屋にエスデンド様が居るの?!」
「だって…ユナさんが、精算終わるまで一緒に居てくれって言うから…。」
黒服さん達のアフターフォローが終わった私は、待機部屋でエスデンド様と、報酬の精算を待っていた。
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この話の主な登場人物
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名前:望月結奈 ふりがな:もちづきゆな
通称:ユナ
年齢:二十七歳
性別:女
種族:人間
職業:無職
魔法:不明
能力:不明
肌:肌色(ブルベ系)
髪:ロング(黒色)
目:焦茶
身長:百六十cm位
体重:五十kg位
バストサイズ:Dカップ
足の大きさ:二十三cm
その他:リヴ達五人の恋人、リヴの主人
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名前:リヴィルス
通称:リヴ
年齢:不明
性別:不明
種族:スライム
職業:暗殺者、召喚士
魔法:不明
能力:外見習得、機能習得、能力習得
擬態:ダークエルフ、ゴブリン
肌:水色
髪:―
目:◉
身長:変幻自在
体重:変幻自在
その他:ユナの恋人の一人、ユナの使い魔
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名前:アヴィラズ
通称:不明
年齢:三百二十歳
性別:男
種族:エルフ
職業:魔法剣士
魔法:不明
能力:不明
肌:透き通る白色
髪:ウルフ(銀色)
目:翆色
身長:百八十cm位
体重:七十kg位
足の大きさ:二十六cm
その他:ユナの恋人の一人。リヴを気に入っている
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名前:イヴェリザ
通称:不明
年齢:千歳以上
性別:男
種族:悪魔(高位)
職業:司教(自称)
魔法:不明
能力:不明
肌:血の気の無い蒼白い肌
髪:ボブカット(真紅)
目:真紅
身長:百六十cm位
体重:五十kg位
足の大きさ:二十四cm
その他:ユナの恋人の一人、蛇のような舌
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名前:ウエンディル
通称:不明
年齢:二十七歳
性別:男
種族:人間
職業:騎士
魔法:不明
能力:不明
肌:少し浅黒い肌色、髭面
髪:長髪(金色)
目:碧眼(右側が隻眼)
身長:百九十cm位
体重:九十kg位
足の大きさ:二十八cm
その他:ユナの恋人の一人、昔魔王に恋人を攫われた
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名前:エスデンド
通称:不明
年齢:不明
性別:男
種族:ハーフドワーフ
職業:戦士
魔法:不明
能力:不明
肌:肌色
髪:ショートモヒカン(黒色)
目:焦茶
身長:百五十cm位
体重:八十kg位
足の大きさ:二十三cm
その他:ユナの恋人の一人、街ユルシェドの領主の息子、実はウエンディルの舎弟