第五話 『街』
街の入り口の両脇に聳え立つ監視塔が見えてきた。
さっきまで本当に大変だった。
街へあと少しと言う場所で、三人組と一悶着起きたのだ。
それが理由で、私とリヴくんの仲に…亀裂が入りかけた。
ありのまま全てを三人組に話すと、理解してくれた。
すると、街まで同行するだけの三人組が、仲間になった。
今の私の仲間達はと言うと…。
無職の人間女の私を除いて、変幻自在のスライム、魔法剣士のエルフ男、騎士の人間男、司教の悪魔男。
こんな感じで…全て違う種族だ。
しかも、リヴくんが暗殺者のダークエルフを倒していた事が判明し、それに擬態できるという話で…もう大盛り上がりだった。
私が服を買えたら、早速…リヴくんはダークエルフの暗殺者になるようだ。
「ユナさん?ほら、あそこが商業と歓楽の街ユルシェドだ。」
「て言うかさ?ユナさん入れるのか?よその世界から来たんだろ?」
「『状態表示』使えますかねぇ?」
アヴィラズさん、ウエンディルさん、イヴェリザさんがそれぞれ別のことを喋り出した。
「はい!!『状態表示』使えます!!」
とりあえず重要そうだったので私は、イヴェリザさんの話にのってみた。
「今誰でしたっけ?パーティリーダーは??」
「ん?俺だ。ああ!!そうか、ユナさんとリヴをパーティに入れようか。」
――ピロン!
――「新着メッセージ」
――「ウエンディル さんから パーティ の招待が来ています。」
――「承認しますか? はい/いいえ」
と言うか…リヴくんと今までパーティ組んで居なかった。
結構、そのショックが大きかった。
――ピッ!
――「ウエンディル さんの パーティ に加入しました。」
「正式に、宜しくな?って…マジかよ!?ユナさん、俺と同い年なのか?!もっと歳下かと思ってた。スゲェ親近感わいたぜ!!」
もっと歳上のお兄さんだと思ってた…とか言えない。
でも…良いな。
「因みに、アヴィラズこう見えて三百二十歳だからさ?でもあれか、イヴェリザとか千歳超えてるからなぁ…。」
何十人、何百人の女性達と情を交わしたんだろう…。
「個人情報漏洩ですねぇ?ウエンディルは、困ったものです。ほら!ユナさんが困った顔されてますよ?私、何人目なんだろうって顔を…ね?」
「じゃあ、行こう。」
全く意に介さない感じなアヴィラズさんが、街の入り口の左右にある監視塔に近づいて行った。
「おーい!アヴィラズ?待てよ!!」
私達はアヴィラズさんの後を追って歩いていった。
「守衛?ここを通るが良いか?」
「その女はどんな理由でこの街に入るんだ?仕事探しか?」
「そうだ。金に少々困っているようでな?」
えっ?
仕事探し?!
歓楽とあるので…飲み屋さんとかあるのだろうか?
バーのウエイターならアルバイトした事があった。
「お姉さん、なかなかの上玉だなぁ?それなら、幾らでも稼げるだろうよ?働く店、決まったら教えてくれよ!!お姉さんの居る店なら、絶対行くぜ?よしっ、通っていいぞ!!」
――ギイイイイイイイイッ…
商業と歓楽の街ユルシェドへの門が開き、私達は街の中へ入ることを許された。
「マジで、ユナさんはさぁ?この街でひと稼ぎしてった方が良いかもなぁ?」
「ユナさん?私も…お客としてお店、顔出してあげますよ?働かれてみたら如何ですか?」
私達は、門をゆっくりとくぐりはじめた。
歩きながら、ウエンディルさんとイヴェリザさんに、この街のお店で働くように…猛プッシュされてしまった。
「二人はそう言うんだけど…。リヴくんは、どう思う?」
「ユナさんの服と靴が幾らかかるかだよね…。値段によっては、ボクのお金無くなっちゃうから…。」
確かに…。
ひとまず魔王達を倒すまで、私とリヴくんの婚約は白紙になっている。
これからの食事代や宿代、それに…装備を買うお金も必要になる。
そうなると…やはりお金はあった方がいい。
とりあえず、服屋さんに行ってからだ。
そこでの結果で…私がどうしたいか伝えようと思う。
――――
門を抜けるとそこは、近代都市でよく見る街そのものだった…。
例えて言うなら…新宿と渋谷を足して割った感じだ。
街のど真ん中には大通りが南北に真っ直ぐに通っている。
大通りを起点に碁盤の目のように道が縦横に延びていた。
更に、大通りを挟み、左側が繁華街、右側が歓楽街と分かれているようだ。
因みに大通り沿いには、宿屋、銀行、冒険者ギルド、等主要な店が立ち並んでいるのが見える。
「この大通りの突き当たりに、領主の館があるんだ。」
アヴィラズさんが急に喋った。
掴みどころなく、急に反応したり急にスルーしたりする。
「歓楽街にですが、領主本人や息子が店を利用する姿が、度々目撃されてるようです。なので、ユナさんは働きはじめたらですが、くれぐれも見初められないように、気をつけて下さいね?」
イヴェリザさんは丁寧に教えてくれるので助かっている。
恐らく皆は、私がお店で働く事前提なのだろう…。
「じゃあ、ユナさんは服見ておいで?俺たちは一度、冒険者ギルド行って、洞窟の件報告してくるからさ?んじゃ、終わったら、あそこに見える宿屋の前集合にしようか?俺らの常宿だからさ?」
「はい!!では、皆さんまた後で!」
ウエンディルさん達はそう言うと、冒険者ギルドの方に向かって通りを歩き始めていた。
「リヴくんは…服屋さんに行った事ある?」
「あるよ?そのお店、行こっか?ユナに似合いそうな服多いんだよね。」
そうとなれば善は急げで、私もリヴくんに案内してもらいながら、その服屋さんに向かって歩き始めていた。
――――
――ギィィィッ…
――カランカラン…
服屋につくと扉を開け、お店の中へ私は入っていった。
「いらっしゃいませ!!」
店内に入ると中々センスのいい服が沢山目に入った。
全てハンガーみたいなものにかけられて陳列されている。
どの服も、金貨六十以上の値札がかけられていた。
店に入る前にリヴくんから、金貨百枚あると渡されているので、それ以内に収めなければいけなかった。
靴も、と見ると…こちらも金貨三十枚以上の値札がかけられている。
服と靴を買ったら…リヴくんのお金はゼロに近くなる…。
やはり私は…歓楽街のお店で働いてお金を稼がなくてはいけない事が確定した。
「これと…これ…試着する事、出来ますか?」
「いえ。当店では服の試着はお断りさせて頂いておりまして…。申し訳ございません。ただ靴に関しましては可能でございます。」
お高い服だからなのだろうか?
それとも、私が…一見さんだから?
「あれぇ?この店、試着可能だよぉ?お姉さん、僕が保証するよ!!」
「エ、エスデンド様?!申し訳ございません…。」
誰だろう…。
人間の男性にしては背がかなり低い…ドワーフだろうか?
外見はと言うと、肌色の肌、ショートモヒカンの黒髪、焦茶の瞳、憎めない顔立ちで、全体的にかなりぽっちゃりしているが、身なりはかなり良い若者だ。
急に謝るくらいだ…権力者の子供だろうか…。
「駄目だよ?初めて来るお客さんでも、冷やかしじゃなくて、本当に欲しい方だって居るんだよ?このお姉さん服と靴持ってるじゃない?ね?」
「大変失礼いたしました!!領主様にはこの事は…どうか…。」
「普段ならここで、即お仕置きさせて貰うんだけど。お姉さんの前だし、僕格好つけちゃうね?今日は、僕来なかった事にするから。と言うか、次は無いよ?早く、お姉さんに試着させてあげて?」
ここに来る前、気をつけろと言われた、領主の息子だ…。
「エスデンド様、ご慈悲賜り感謝致します!!」
私にウインクすると店から出て行ってしまった。
「どうぞ…ご試着くださいませ。」
――――
この話の主な登場人物
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名前:望月結奈 ふりがな:もちづきゆな
通称:ユナ
年齢:二十七歳
性別:女
種族:人間
職業:無職
魔法:不明
能力:不明
肌:肌色(ブルベ系)
髪:ロング(黒色)
目:焦茶
身長:百六十cm位
体重:五十kg位
バストサイズ:Dカップ
足の大きさ:二十三cm
その他:リヴ達四人の恋人、リヴの主人
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名前:リヴィルス
通称:リヴ
年齢:不明
性別:不明
種族:スライム
職業:暗殺者、召喚士
魔法:不明
能力:外見習得、機能習得、能力習得
擬態:ダークエルフ、ゴブリン
肌:水色
髪:―
目:◉
身長:変幻自在
体重:変幻自在
その他:ユナの恋人の一人、ユナの使い魔
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名前:アヴィラズ
通称:不明
年齢:三百二十歳
性別:男
種族:エルフ
職業:魔法剣士
魔法:不明
能力:不明
肌:透き通る白色
髪:ウルフ(銀色)
目:翆色
身長:百八十cm位
体重:七十kg位
足の大きさ:二十六cm
その他:ユナの恋人の一人。リヴを気に入っている
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名前:イヴェリザ
通称:不明
年齢:千歳以上
性別:男
種族:悪魔(高位)
職業:司教(自称)
魔法:不明
能力:不明
肌:血の気の無い蒼白い肌
髪:ボブカット(真紅)
目:真紅
身長:百六十cm位
体重:五十kg位
足の大きさ:二十四cm
その他:ユナの恋人の一人、蛇のような舌
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名前:ウエンディル
通称:不明
年齢:二十七歳
性別:男
種族:人間
職業:騎士
魔法:不明
能力:不明
肌:少し浅黒い肌色、髭面
髪:長髪(金色)
目:碧眼(右側が隻眼)
身長:百九十cm位
体重:九十kg位
足の大きさ:二十八cm
その他:ユナの恋人の一人、昔魔王に恋人を攫われた
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名前:エスデンド
通称:不明
年齢:不明
性別:男
種族:不明
職業:不明
魔法:不明
能力:不明
肌:肌色
髪:ショートモヒカン(黒色)
目:焦茶
身長:百五十cm位
体重:八十kg位
足の大きさ:二十三cm
その他:街ユルシェドの領主の息子