第四話 『仲間』
何とか三人組を説き伏せて、一緒に街まで戻る事になった。
この三人組は冒険者ギルドに所属しているようだ。
その冒険者ギルドからの依頼で、この洞窟の調査に来たとの事だった。
先程、私に剣を向けたのは…エルフの魔法剣士だった。
リヴくんの前だから言えないが…肌は透き通る白色、翆色で切れ長の目のイケメンで、髪もウルフカットの綺麗な銀髪で、長身で細身なのだ…。
ファンタジー系作品でもエルフ好きな私には、もう…興奮してしまう程、ドストライクだった。
名前は、アヴィラズと言うようだ。
ヤバい…私の頭の中では、完全に…彼を欲していた。
「あの…。アヴィラズさんは、恋人とかいらっしゃるんですか?」
アヴィラズさんは、斥候役として先を歩いてくれていた。
今質問をしたのは、私の少し前を歩き護衛してくれている人間の騎士へだ。
彼は、少し浅黒い肌で、筋肉の塊のような体格で、髭面で長髪の金髪、右側が隻眼の碧眼だが、それでも滅茶苦茶…格好が良いのだ。
名前は、ウエンディルと言った。
「お?!アヴィラズ!!ユナさんがお前の事、興味ありそうだぞ?」
先程、洞窟から出てきた私に…剣を向けたのはアヴィラズさんで、制止したのはウエンディルさんだった。
それにしても、アヴィラズさんからの返事が無い。
「ウエンディルさんは…?」
たまらずウエンディルさんにも聞いてみた。
「マジか…。俺も脈アリって事かい?俺は、昔…想い人が居た。だが…魔王達に攫われてな?それからは居ない。辛いだろ?俺が…討伐依頼で町を留守にしてる間に、攫われちまったんだ…。」
私が話を振ったばかりに…。
ウエンディルさんの、辛い記憶を掘り起こしてしまったようだ。
凄いすまない気持ちになった。
「ゴメンなさい!!私…。」
「良いんだよ?気にしてくれる人が出来て、俺は嬉しいぞ?」
ウエンディルさんの不意打ちのような切り返しで、キュンとしてしまった。
そんな私の浮ついた気持ちが気に入らないのか…リヴくんは胎内を激しく蠢かせ始めた。
「あ゛く゛っ…。」
「おいおい?ユナさん、大丈夫か??アヴィラズ!!ストップだ!!」
「どれどれ?このボクが、診てあげますよ?」
先程、私に…身体の事や恋人の事等を真っ先に聞いてきたのは、この人間のフリをする…高位の悪魔の司教だった。
真紅の瞳に、ボブカットの真紅の髪、血の気の無い蒼白い肌、蛇のような舌、細身の小柄な身体、身震いするくらい綺麗な顔…文句の付け所がなかった。
名前は、ウエンディルさんからイヴェリザと呼ばれていた。
「ほうほう?なるほどなるほどぉ!!これは…とてもお辛そうですねぇ…。お身体に障るといけません。アヴィラズ?早く、街まで急ぎましょうか?」
その言葉に、アヴィラズさんは無言で先に進み始めた。
これは、絶対にバレている…。
イヴェリザさんは、高位の悪魔との事だ…。
だから、私が洞窟の入り口まで来た頃からかもしれない。
恋人の確認や指輪の確認をしてきたのも…身体目的ではなく、スライムが身体中に纏わりついている事を、きっとお見通しだったのだ。
恋人が居るとも居ないとも答えなかった事も、イヴェリザさんの確信を突いてしまったのだ。
「ちょっと。ウエンディル?良いですか…?」
私の側に居た…ウエンディルさんを、イヴェリザさんが少し離れた場所へと連れて行った。
そこで…イヴェリザさんが、私の方を見ながらウエンディルさんに耳打ちをしている。
すると…ウエンディルさんの表情が、みるみるうちに変わっていった。
「ユナさん?身体、辛いだろうが…街までもう少しだ。我慢してくれよ?」
もう、これ以上は心苦しくて…隠しきれないと思った。
「リヴくん…?私…言うから…。ゴメンなさい。」
――パチパチパチパチ…
イヴェリザさんが私の言葉に拍手をし始めた。
「そうですよ?素直に白状なさい!!何故、ユナさん?人間のアナタが…スライムを身体に纏っているのかを!!」
リヴくんが私の胎内で暴れ始めた…。
「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!痛いいいいいいいいっ!!」
私の…叫び声にリヴくんは暴れるのをやめた。
「ボクの事、裏切るんだね?ユナ…見損なったよ!!」
「私は…裏切るんじゃないのっ…!!怪しまれたまま…街まで行けば、恐らくリヴくんは…私ごと、退治されていたかも知れないよ?だから…ここで三人に知って欲しかった…。私とリヴくんの関係も!!」
――パチパチパチパチパチパチパチパチ…
「まさに滑稽ですねぇ!!スライム?お前は、護らなければいけないか弱き女性から…護られようとしているのですよ?それなのに、分からず癇癪を起こして…身体の中で暴れる?何と情けない…。反論出来ればどうぞ?」
本当にそうだ…。
イヴェリザさんの言う通りだ…。
正に…ど正論。
二度に渡る、リヴくんからの加虐行為には正直冷める…。
蠢くくらいでとどめておいて欲しかった。
「私は、一週間前…“人間のお姉さんと結婚したい”という願望をもったスライムに『主人召喚』されて、別の世界から来ました…。私は…恋人と別れたばかりで寂しくて、このスライム…リヴくんと…身体の相性を調べた後で、恋人関係になりました。私は人間の子供が欲しいので聞いたところ、人間を倒せば…人間になれるからと言う事だったので、元人間で…悪い人間の魔王達を倒そうと言う事になり、冒険の旅に出る事になりました。ですが、召喚時に私は裸だった為、街に寄り服を買ってからと言う話になり…スライムを服代わりに纏って、街に向かう為に洞窟から出てきました。」
リヴくんに出逢った経緯を最初から話した。
私が話している最中、イヴェリザさんと、ウエンディルさんに目を向けると…何度も何度も頷いてくれていたのだ。
「なぁ?ユナさんにリヴ?俺達と一緒に、憎きアイツ…倒しに行かないか?」
「あー。ウエンディル、アナタなら…そう言うとずっと思ってましたよ?それに、スライム?ユナさんへの…加虐行為はやめておきなさいよ?ユナさんの結婚相手の座をめぐるライバルが一気に三人も増えたんですからね?」
ただの人間の私と、スライムだけでは…魔王達を倒す未来は絶望的だった。
けれど…この三人が居てくれれば、何とかなるかもしれない。
その為には…彼らに私の身体を差し出すことも厭わない…。
最後にリヴくんと…その子供と一緒に笑い合える未来なら…良いのだから。
「ボクからも…よろしくお願いします。魔王達を倒せるまでは…四人がユナの恋人という事で、手を打ちませんか?」
「はああああああああっ…?!」
――――
一気に彼氏が…四人となってしまった私。
早速、リヴくんが私達だけの隠語の”甘える“の意味を…二人に教えていた…。
「なぁ?リヴ?今、お前さんは人系には何の種族に擬態できるんだ?」
「えっと…。ダークエルフとゴブリンですね…。」
「マジかよ!!ダークエルフは貴重だろ?何の職業の相手だった?」
「暗器持ちの暗殺者です。」
「ふざけんなよ!!リヴお前、最高だよ!!」
ウエンディルさんの中のリヴくんへの評価が鰻登りになっていくのを感じた。
「ダークエルフの暗殺者。姿を現さず毒攻撃、範囲攻撃、遠距離物理攻撃、遠距離魔法攻撃。凄いぞ?」
「おいっ!!アヴィラズ!!前に居たんじゃ無いのかよ!!」
斥候役で先頭を歩いていたアヴィラズさんが、いつの間にか、私の横に来ていた。
「いや、ダークエルフと聞いて、エルフの私が…黙って聞いてられるか!!スライムくん?どこで倒したんだい?」
流石に…エルフから離反した種族であるダークエルフについては、アヴィラズさんも黙っては居られないのだろう。
「あの洞窟に…手負いで逃げ込んで来たんです。ある時から、ダークエルフがあの周囲で暴虐の限りを尽くしておりましたので、周囲に居た者達の仇と…討ちました。」
「そうか。でも、スライムくんは幸運だった。冷酷無比なダークエルフの暗殺者を…殺されず倒せたのだからな?」
お母さん…私、頑張って…旦那さん連れて帰るから…。
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この話の主な登場人物
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名前:望月結奈 ふりがな:もちづきゆな
通称:ユナ
年齢:二十七歳
性別:女
種族:人間
職業:無職
魔法:不明
能力:不明
肌:肌色(ブルベ系)
髪:ロング(黒色)
目:焦茶
身長:百六十cm位
体重:五十kg位
バストサイズ:Dカップ
足の大きさ:二十三cm
その他:リヴ達四人の恋人、リヴの主人
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名前:リヴィルス
通称:リヴ
年齢:不明
性別:不明
種族:スライム
職業:暗殺者、召喚士
魔法:不明
能力:外見習得、機能習得、能力習得
擬態:ダークエルフ、ゴブリン
肌:水色
髪:―
目:◉
身長:変幻自在
体重:変幻自在
その他:ユナの恋人の一人、ユナの使い魔
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名前:アヴィラズ
通称:不明
年齢:不明
性別:男
種族:エルフ
職業:魔法剣士
魔法:不明
能力:不明
肌:透き通る白色
髪:ウルフ(銀色)
目:翆色
身長:百八十cm位
体重:七十kg位
足の大きさ:二十六cm
その他:ユナの恋人の一人。リヴを気に入っている
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名前:ウエンディル
通称:不明
年齢:不明
性別:男
種族:人間
職業:騎士
魔法:不明
能力:不明
肌:少し浅黒い肌色、髭面
髪:長髪(金色)
目:碧眼(右側が隻眼)
身長:百九十cm位
体重:九十kg位
足の大きさ:二十八cm
その他:ユナの恋人の一人、昔魔王に恋人を攫われた
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名前:イヴェリザ
通称:不明
年齢:不明
性別:男
種族:悪魔(高位)
職業:司教(自称)
魔法:不明
能力:不明
肌:血の気の無い蒼白い肌
髪:ボブカット(真紅)
目:真紅
身長:百六十cm位
体重:五十kg位
足の大きさ:二十四cm
その他:ユナの恋人の一人、蛇のような舌