冬休み、旅行先で同級生を拾った話。
「おまえ、なにしてんの?」
「、、、あなた、だれ?」
ー泣きたい。
俺の名前は永瀬一真。冬休みに託けて温泉目当ての旅行に来ていた天涯孤独の17歳。ふと寄ったコンビニ近くの公園で高校の同級生が制服のまま居たのでつい声を掛けてみたらこの仕打ちである。
「同じ高校の永瀬一真だよ。何?俺ってそんなに学校では空気なの?」
「、、、何かようかしら?」
「いや、用も何も制服のままこんな地元からけっこう離れた所に同級生、しかも女子がこんな時間に公園のブランコで死んだ顔してたら心配で声かけるだろ。」
「、、、」
「、、、」
ーなんか言ってくれない?
はぁ、めんどくさいなぁ、もう。
持っていたファイヤーマンコートを被せてやり、マフラーを着けてやる。
「飯まだなら一緒にどうだ?」
「、、、何が『ぐー』もくて」
「プハッ、悪い。そう睨むなよ。俺も腹減ったし行こうぜ?雪宮。」
「、、、」
「ああ、金の事なら気にするな想像通り身体でか『バチッ!』なんだウリしてた訳じゃないのか。」
一先ず安心である。え?確かめ方が最低?いや、面と向かって同級生にウリしてたの?とか聞く方が最低でしょ。いやどちらにしろ最低だわ。顔への一発は甘んじて受け入れよう。
ーそれよりも。
「おーい。此方が悪かったのは認めるから、せめて会話くらいしてくれー。」
「、、、放っておいて。」
「いや、この時期に知らない街中で見かけた顔見知りの女の子がいかにも訳ありですよって感じでいるのに、無視したら気になって夜も眠れないよ。まして、犯罪なんかに巻き込まれたら、、、。」
おお、そんな未来を想像しただけで良心がゾクゾクする。エロ同人か!エロ同人展開なのか!?
「まあ、取り敢えず奢るから飯食いにいこ。腹が満たされれば気持ちも落ち着くかもしれないし。」
「ちょッ!?離しなさい!」
「はいはい。取り敢えず何が食べたい物ある?ないなら俺が勝手に決めるけど。」
そう言って俺は雪宮小雪の手を無理矢理に引いて歩き始めた。
暫くの間は殴り蹴りと激しい抵抗を続けていた雪宮も微動だにしないカズマッスルの力を知り、諦めたようだ。
「キャー!誰か助けて!犯されるー!」
「ちょ!?それはシャレにならないから!?」
慌てて雪宮の口を塞ぐ俺の姿は側から見ればそっち系の犯罪者にしか見えないだろう。公園近くのコンビニにまで届いたのか店員さんと背広の男性が駆けつけてくるのが見える。コレ、詰んでね?
「「〜ッ!」」
「ちょっ、まって!流石にシャレにならん!ゆ、雪宮?ヘルプ!説明してぇ〜!」
あっという間に2人に取り押さえられた俺は雪宮の方に助けを願うと、流石に申し訳ないと思ったのか俺を取り押さえている2人に説明をして、誤解が解けた俺は雪宮と共に平謝りした。
「一応言っておくけど普通、俺の筋肉ならあの2人くらい跳ね飛ばしてたからね?」
「あなたは何をいっているのかしら。」
自分でもわかんない。
「ふふっ。」
「何笑ってんの?こちとら変態として前科がつきそうだったんだけど。」
「あな『ぐー』〜ッ!」
「もう笑わないから飯食いにいこうぜ。流石にこれ以上時間が経つと店が閉まる。」
「、、、施しは受けない、キャッ!?」
手を引くと今度は大人しくついてくる。食いたいものを聞いても答えないので、俺たちは俺が目をつけていた焼肉屋に入店した。
「はぐ、はぐ。」
「、、、」
余程腹が減っていたのか、良い食べっぷりである。あれ?何気に焼肉デートとかいう奴では?とドキドキするまでもなく焼肉奉行が如く肉を焼いては差し出していく。うぉん!さながら今の俺は高性能肉焼マシンである。今だにふた切れしか食べてない俺のお腹はぐるぐると次の肉を要求している。
「すみませーん!カルビとロース一人前ずつ追加で!」
ーは〜い。
暫くしてお腹いっぱいになった俺たちは元いた公園のベンチに座っていた。お互いに沈黙が続く。
「永瀬君、御馳走になってしまったわね。」
「気にするな、雪宮みたいな可愛い子と食事なんて此方も得した気分だしな。」
キメ顔で自分でもクサイと思うセリフに雪宮も顔を顰めていた。ひどいや。
「私ね、逃げてきたの。」
そして、雪宮は自身の境遇について語り始めた。要約すると好きでもないふた周り年上の男と政略結婚させられそうになったらしい。薄い本かな?鼻血出そう。そう言えば雪宮って社長令嬢だったしなぁ。
「辛かったんだなぁ。まあ、同級生なのに顔すら覚えられていなかった俺がいうのも何だけど。」
薄い本の事しか考えられなくなってしまった頭の中を端に置き真面目な雰囲気で話すと。後半の話が聞いたのか雪宮は目線を漂わせた。
「あれ?でもお前彼氏いただろ。いつも5人でラブコメ空間作ってイチャイチャしてた優斗くんはどうしたん?最終的に雪宮と付き合い始めたって聞いたけど。」
「あの優柔不断男なら付き合って一週間で浮気したわ。」
おぅ。
「まあ、なんだ。もう遅いし泊まるところないなら俺の泊まってる所にくるか?」
「、、、行くわ。」
あれ?もっと、なんかこう。そっち系の罵倒とか来るかなぁ。と覚悟してたのに。なんか嫌な予感が。
「お、おぅ。そうか。じゃあ行こうぜ。」
「、、、」
続きは任せます笑。僕はもう疲れたよ( ̄O ̄;)