会話記録P03
「今日は待ちに待ったルルとの楽しいデート、東に新しくできた遊園地に行って愛を育むつもりだったのに、どうして君がいるのかな?ララ」
「あはは、それは私のセリフだよ。ルルと二人っきりで休日を満喫できると思ったら、ルルの彼氏になれたと勘違いしてる可哀想な男がなぜか集合場所にいるんだよねえ〜。迷惑だから帰ってくれるかな?」
「……おい、迷惑なのは私だ。どうしていつもお前たちは事あるごとに私の研究室を集合場所にするんだ」
「え〜いいじゃないですか〜。マリー先生の研究室って私たちの研究室の丁度真ん中あたりにあるから集まりやすいんですよ」
「マリー先生からも何か言ってやってください。こいついつも僕たちの恋路を邪魔するんですよ」
「はぁ〜〜?邪魔してるのはそっちでしょ?いつもルルにベッタリくっついて、ルルは優しいから何も言わないけど、本当は迷惑に思ってるよきっと」
「わぁ〜すごい!お二人とも、話しながらこんなにも速く駒を動かせるなんて……!」
「……まったく、"天才"の世話は手が焼ける。ところでフラン、君はなぜ私の研究室に?」
「あっ!忘れてました!昨日焼いたクッキーが余ったので、皆さまに差し上げようかと思って」
「おっ!フランちゃん気がきく〜!ちょうど頭に糖分が欲しかったところなんだ〜。こいつに負けたくないからね」
「僕も1つ貰うよフランちゃん。この馬鹿に賢さというものを見せつけなきゃいけない」
「はい!お2人とも、頑張ってください!」
「それが終わったら出てってくれよ。フラン、すまないがコーヒーを淹れるのを手伝ってくれないか?クッキーと一緒に飲みたいと思ってな」
「喜んで!」
「さぁて、頭も冴えてきたことだし、そろそろ勝負を仕掛けようかな。いや〜アホの手は読みやすいからありがたいな〜!」
「君は本当にいつも僕の神経を逆撫でするようなことしか口にしないね。けど、口に反して盤面ではいつも追い詰められるのは君だ。ほら、陣形が崩れてきているよ」
「わざとだよー気が付かなかったの?それ、反撃!」
「マリー教授、ちょっと見てもらいたい論文が……って、お前たち、朝からまた喧嘩してるのか?」
「やあタオ。昨日ぶりだね」
「お前、ルルとのデートはどうしたんだ。さっき彼女とすれ違ったが、なぜか慌てた様子だったぞ」
「え?どうしたんだろう?何か忘れ物でもしたのかな?」
「そうかもな。それより、教授はどこだ?」
「私ならここにいる。悪いがこっちに来てくれ。今コーヒーを淹れているんだ。よかったら一緒に飲むか?フランのクッキーもあるぞ」
「では頂きます。少し話が長くなりそうですし」
「タオちゃーん、ついでにフランちゃんにクッキーのおかわり頼んできて〜」
「はぁ、わかった。あとララ、そこにその駒を置かないほうがいい。後々詰まるぞ」
「え、あ!ホントだ!あっぶねぇーミスるところだったよ!」
「ちょタオ!言わないでよそれ!」
「ふん、昨日お前が酔ってそのまま寝て、結局飯代払わされたからな。その仕返しだ」
「ぐぬぬ、、何も言い返せない……」
「タオちゃんありがとね〜〜!……さて、食い逃げ野郎さん?あなたまさかルルにデート代払わせる気じゃないよね?」
「まさか、全て僕が払うさ。それにタオの件だって後でちゃんと全額払うつもりだよ。だから君は安心して帰りたまえ」
「むっりー。今日は私がルルをエスコートする予定なんだから。まず最初にルルが前に気にしてたカフェに行って美味しいケーキを食べて、その後はルルと今度行く約束をしていたデパートに行って楽しくお買い物するんだ〜いいでしょ〜」
「ちょっと待って、君はそもそもルルと会う約束を本当にしているのかい?まさか今言ったこと全部君の妄想プランってことはないよね?」
「は?そんなわけないでしょ?あなたこそ、遊園地に行くって本当なの?ルルが私との約束を忘れるわけないし、やっぱりあなた方こそ妄想をみてるんだよ。可哀想に……」
「お二人とも、お待たせしました!クッキーのおかわりです!」
「お、ありがとう〜!」
「失礼しまーす……ふわぁ〜眠い……すん、すん、何かいい匂いする……」
「あ!ドリちゃん!おはよう!ドリちゃんもクッキーいる?」
「いる〜、けど、その前にタオさんを探してるんだ。タオさんここにいる?」
「やぁドリーム。タオならあっちでマリー先生と話をしているよ」
「ホントだ、ありがとう〜」
「あ、ちょっと待ってドリちゃん!また寝癖ついてる!もう、ちゃんと直さなきゃだめだよ?」
「だってフラちゃんがやってくれるんだも〜ん」
「まったくもう、次からは自分でやってね」
「今日はよく人が来るね。けどルルはまだ来ない。うーん、ちょっと探しに———
「フランちゃーーん!!どこーー!!ヌコの餌やりってどうやるんだっけーー??」
「うるっさ!!ニール!もう少し声のボリューム抑えられないの!?」
「はーい!今行きまーす!」
「フランは大変だね。みんなに必要とされて」
「まったくだよ。少しは自分でできないのかな?」
「君だってさっきフランにクッキーを持って来させていたじゃないか。それにフランがいなかったら君前回の論文の提出遅れるところだったよね?」
「あー、アレはホントに危なかった。フランちゃんが朝気づいて叩き起こしてくれなかったら学会に怒られるところだったよ。結構自信がある論文だったし」
「あれは僕も見たけど、行動経済学の権威とも呼ばれてるくせに、まだ"現代"の価値観に縛られているなんて、今人民の心は幻素に釘づけだよ?"幻代"的な価値観を身につけないと権威の椅子はすぐに空け渡すことになるね」
「はーやだやだ、自分が見つけた幻素がそんなに愛しいんですねー。不確定な要素が多い幻素に対して今はその莫大な利益になる可能性にみんな目が眩んでいるけど、きっとすぐに危険性に気づくことになる。危なっかしい幻素と知り尽くした資源、人はどっちをとると思う?」
「幻素はこの世の最小単位であり、それを自在に操れる者がいる。まるでおとぎ話のようなことが現実でも実現できる。それは人を傷つけることもあるけれど、人を救う力になれる。その魅力に人は抗えない。かつて蒸気機関が発明された頃のように、この可能性の塊に対して、僕たちはあらゆる発想をぶつけずにはいられないんだ」
「君みたいな科学者だったらそう思うかもしれないけど、大衆は皆自分の生活、自分の家族、自分の命を優先して行動する。幻素が制御不能の"怪物"を生み出すことになるなら、幻素は便利な資源から、有害な毒へと認識が変化して、大衆は幻素を排斥しようとするだろう。そうなったとき、真の勝者は誰になると思う?」
「はは、君みたいな価値観の人間だろうね。有益なときはとことん使い、不利益になったらすぐに捨てて、目先の利益とこれからの利益、その両方を得ようとする、傲慢な人間」
「あはは、とっても人間らしい素敵な考えだと思わない?」
「………人間の美しさは、利他の心にある」
「……否定はしないけど、その心が欠落してるあなたに言われてもねー?」
「それは君もだろう?ララ」
「………」
「………」
「ふふっ、2人はほんとに仲良しだね!」
「「ルル!?」」
「遅れてごめんね2人とも、館長に外出届を出し忘れてたの」
「そ、それは全然いいよ。それより、どうして僕とこいつが仲良しだと思うんだい?むしろ真逆だよ」
「そうだよルル!私がこのアホと仲良くなるなんて天地がひっくり返ってもあり得ない!」
「うーん、けど、2人が一緒にいるとき、2人とも本音で話してるでしょ?それって仲良しじゃないとできないことだよ。ほら、喧嘩するほど仲がいいって言うじゃない?」
「「………」」
「……ところでルル、どうしてこんな朝早くに集合する予定にしたんだい?たしか遊園地は午後から行くって計画してたような……?それにララが君と遊ぶ約束をしてるみたいだけど、それって本当なの?」
「うん、そうだよ。午前中はカフェとデパートに行って、午後は遊園地に行くの。もちろん、3人でね!」
「「え!?こいつも一緒なの!?」」
「うん!あれ?言ってなかったっけ?」
「「聞いてないよ!」」
「ごめんごめん!けど、3人で遊ぶ機会って中々なかったから、私は楽しみだよ?2人はどう?」
「……………まぁ、ルルがいいなら良いかな。こいつがいるのは癪だけど」
「私も、ルルと一緒ならなんでも楽しいよ!こいつは例外だけど」
「ふふっ♪、それじゃあ決まり!さっそく……あれ?もしかしてボードゲームしてたの?勝敗つけてからいく?」
「……いや、いい。僕の負けだよ、ルル」
「私も負け。ルルには敵わないや」
「???……じゃあ行こっか!2人とも!」
「うん」「うん!」
———記録終了