表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/46

ピッピとの再会

「リーナ!大丈夫か!?」


お父様とリオン兄様がこちらへ走ってくる。


「状況は?」


お父様が真剣な顔でリック兄様へ聞く。


「魔法について知りたがっていたので、俺の練習風景を見せました。そしたら、リーナがその真似をした時に髪がなびいて。止める様に言ったら、すぐに止めました。暴走した感じはありませんでした。」

「そうか。…リーナ、身体に異変は?」

「ないです。」

「それなら良かった。あのな、魔力操作は体調を崩す者もいる大変なものなんだ。だから、少しずつ練習をするんだよ。3歳で、しかも1回目で出来てしまうと言うのは、聞いたことがない。」


え?

私、出来てたの?

何かマズい状況?


「天才だ!魔法の才能がある!だからこそ、身体を壊さないよう少しずつ覚えよう。私が見ている時以外は練習をしてはいけないよ。」

「え?お父様が見ている時は良いのですか?」

「ああ。」

「駄目と言われると思っていました。」

「魔力爆発を起こしてもいけないからなあ。」

「魔力爆発?」

「1度、魔力が身体を回ったのだ。すでに魔力の道ができてしまった。放っておいたら詰まって爆発、暴走する事があるんだ。」

「そうなんですね。」


怖っ!


「リック、リオン。リーナを大切に思うなら、この事は他の者に話すな。」

「「?」」

「変な事に巻き込まれかねない。」


パトリックとダリオンは顔を見合わせた後に、同時に頷いた。


その直後、ジャックが勢いよく顔を上げ、空を見た。


「なにか来るな。」

「「「?」」」


パトリック、ダリオン、サリーナの3人もジャックの視線の先を見た。


「「「鳥?」」」


視線の先には、鳥が飛んでいる。


あれって、鷹?鷲だっけ?


「いや、魔力の気配がする。」

「そんな事も分かるんですか?」

「私はな。どうだ?すごいか?」


ジャックは鳥から視線を離さずにいるが、声から自慢げなのが伝わる。


「この状況で言うことか?」

「父上のこういう所だよね…。」


パトリックとダリオンは小声で話す。


「来た。」


鳥は鷹だった。4人の頭上を旋回している。


「私から離れるなよ。」

「「「はい。」」」


“いた!”


ん?


サリーナは声が聞こえた気がして、周りを見た。


「どうした?」


それに気づいたパトリックが声をかける。


「いえ、声が聞こえた気がして…。」


サリーナがパトリックに答えていると、鷹がこちらへ降りてくる。


ジャックは、そっと3人の子供と鷹の間に立つ。サリーナは、鷹をジャックの背中越しにみた。


鷹は、こちらをじっと見てステップを踏み始めた。


「「「「え?」」」」


踊ってる…。

このダンスって…


“わか”

「ピッピ?」


どこからか聞こえた声と、サリーナの声が重なる。


鷹は嬉しそうに羽をバタつかせた。


「やっぱりピッピなんだ!」


サリーナは、鷹に駆け寄ろうとしたが、ジャックに止められる。


「リーナ、待ちなさい。…知っている鷹なのかい?」

「知っている子は鷹ではなかったけれど、本人…いや、本鳥?だと思います。」

「しかし、まだ安全とは言えん。」

「安全に決まっている!」


私達4人とは別の声が聞こえた。今度は私だけに聞こえたのではなかったようだ。お父様も兄様たちもキョロキョロしている。


サリーナは、声の主に気がついた。ジャックの横をすり抜け、鷹に腕を伸ばした。


「ピッピ!どうして?なんで?どうなっているの?」

「わか。随分可愛い姿になったね。きちんと説明するから落ち着いて。」

「今の私はサリーナよ。リーナと呼んで。」

「分かったよ、リーナ。」

「リーナ。どういう事か説明してくれるか?」

「あ…」


お父様に後ろから声をかけられた。


忘れてた。

どうやって説明しよう…。


私達は、場所をお父様の執務室に移した。

そこにいるのは私達4人と1羽だ。


「さて、説明してもらおうかな。」


お父様に話しを促される。


「説明と言われても、どう話したらいいか…。」

「それなら質問をするから、それに答えてくれるか?」

「はい。分かることでしたら。」

「その鷹と会ったのはいつだ?」

「うーん。ずっと前?」

「記憶を無くしているのに、そこは覚えているのか?」

「はい。不思議な事に。」


前世的なものは覚えています。


口には出さず、心の中で付け足した。


「それは僕達のせいかも。」

「僕、達?もしかして…」

「うん。あんこと、きなこもそのうち来るよ。」

「本当なの!?」

「わ…じゃなかった、リーナに嘘は言わない。」

「そっか。会えるのが楽しみ。……でも、ここに来るということは。」


前世で亡くなってしまったと言う事よね…。


「それは違うよ。」

「ん?私、口に出てた?」

「ううん。僕達は繋がってるから。」

「どういう事?」

「そのままの意味だよ。」

「ちょっと待ってくれ。話を戻してもいいか?」


私とピッピが話していると、お父様は脱線した話を元に戻そうとする。


「あ、お父様ごめんなさい。つい…。」

「いや、今の話にも聞きたいことはある。だからこそ、順番に聞いていきたい。」

「記憶がないのが、君達のせいとはどう言う事だ?」


“リーナ、前世の話をしても良い?”


頭の中に声が響いてくる。


「え?」


ピッピがこちらをじっと見る。


テレパシー?

これが繋がっているということなのかな?

この事も説明して貰わないと…。


前世に遡らないと説明ができないなら仕方ないのかな…。


“リーナに危害を加えるようなら僕達が守るから安心して。”


「そういう事じゃないんだけどな…。」

「リーナどうしたんだ?」

「何でもありません。…ピッピお願い。」

「それじゃ、リーナの前世まで遡るね。」


ピッピはあの日あった事を話し始めた。


「リーナは、前世で僕達の主だった。でもあの日の夜、眠りについたリーナはそのまま起きなかった。僕達が呼んでも、揺すっても動かなかった。どれ位経ったか僕達には分からないけど、ある日男の人と女の人が来た。その人達はリーナ…その時は和菓だね。和菓に抱きついて泣いてた。」


きっとお父さんとお母さんだ…。


「僕達はそのふたりに引き取られたけど、度々元の家へ和菓を探しに行ったんだ。道が分からなくて、いつも辿り着けなかったけど…。何かしてあげることができたんじゃないか。僕達がいたから、あんなになるまで頑張ってしまったんじゃないか。毎日考えてた。」

「ピッピ…。」

「そしたら、光る人が出てきて僕達に言ったんだ。『そんなに思っているなら、生まれ変わった和菓を助けてあげて。』って。」

「光る人?」

「そう。もちろん、僕達は即答した。その瞬間、目の前が明るくなって、知らない場所でこの姿になっていた。その時にふたりと離れたみたい。だけど、僕の中に和菓を感じる事ができたから寂しくなかった。」

「私を感じる?」

「うん。」


私はお父様へ視線を移した。


「……お父様。私はこちらへ生まれ変わってからの記憶はありませんが、生まれ変わる前の記憶はあるのです。まるで、中身が入れ替わったようだと感じていました。すぐに話せなくて、ごめんなさい。」

「謝らなくていい。リーナはリーナだからな。」


兄様たちも頷いている。


「ありがとうございます。」


少し、涙が出た。


「事の流れは分かったが、サリーナを助ける為に来たというのは、どういうことだろうな。君が来たのと、記憶を無くしたのは関係があるんだろう?君の中にリーナを感じるのも気になる。そして、君が『達』と言っているからには、まだ仲間がいるんだな?」

「あんこと、きなこがいるよ。僕がここに一番近かっただけ。」

「あんこと、きなこ?」

「犬と猫です。でも、ピッピもインコから鷹に変わっているから、どんな姿かは分かりません。」

「僕もこっちでは会ってないから分からないよ。」

「そうか。どうしてここが分かったんだ?」

「今日、来た時には感じなかった和菓?サリーナ?の魔力を感じたから。」

「さっきのあれか。」

「うん。後の事は、なんとなくとしか言えない。」


それ以上は分からず、今日の所は終了となった。


「お父様。あの…ピッピですが、部屋で飼っても?」

「飼うという表現が正しいかは分からないが、リーナの助けになる者だ。近くにいた方がいい。それと名前だが、不要な詮索を受けない為に、こちらの言葉の呼名も付けた方がいいと思うぞ。」

「そっか。ピッピは別として、あんこやきなこはないか…。」

「そうなの?」

「うん。」

「良く食べていたのにね。」

「餅もないの…。」


サリーナは、肩を落とした。





ピッピの呼び名は、『アル』に決まった。こちらでは一般的に使われる。


元の世界のどこかの国で、鷹の事をアルコンと言っていたし、ぴったりだと思う。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ