魔力操作
数週間後…
サリーナは、パトリックとダリオンと仲良くなっていた。愛称で呼び合うようにもなった。
「リーナ、ただいま。今日は診察の日だったよな?」
「診察はどうだった?」
「リック兄様、リオン兄様、おかえりなさい。問題なかったです。」
体調的には問題はないのだが、記憶の事もあり定期的に診察を受けている。
まあ、基本的には近況を話して終わりだ。
サリーナの中身が和菓に入れ変わったのか、前世の記憶が蘇ったのかは分からないけど、どうにもできないし、サリーナとして生活するしかない。
その為に、これは必須よね!
「兄様達は、魔法が使えますか?」
「学校で、勉強中だ。ちなみに、俺は風魔法が得意だ。」
「僕は、水魔法。」
「家族でも違うんだ…。」
私がボソッと言った言葉を拾って、リオン兄様が答えてくれた。
「魔法全般が使えるけれど、個人で得意不得意な事があるように、魔法も得意不得意があるんだよ。」
「なるほど。…それで、いつから練習できるのでしょうか?学校へ入らないとだめですか?」
「一般的には入学してからかな。魔力の操作だけなら、入学前から覚えておく人もいるけど。」
「学校への入学は何歳ですか?」
「あっ、そうか。知らないか。」
「7歳になる年に入学することになる。」
小学生か…。
「それで、何歳で卒業ですか?」
「飛び級や留年をしなければ、15になる年だ。」
中学生ね…。
飛び級や留年もあるんだ。
「その後は?」
「職業に就いて、その見習い期間に入る。」
「それで、18歳で成人だね。」
「仕事を覚えたら1人前と言う事だな。」
「…留年しちゃったら?」
「18で成人の儀が受けられない事もある。学生は受けられないからな。」
「飛び級したら、早めに受けられるのですか?」
「「それはない。」」
ふたりの声が揃う。
「魔力の操作を教えてくれますか?」
「それは、父上に許可を取らないと。」
「リーナはまだ3歳だぞ?早いんじゃないか?」
「兄様達は、いつから覚え始めたのですか?」
「5歳からだ。」
「僕も。」
「あと、2年…。」
「え?計算できるの?」
しまった…。
私、3歳!
「わ、分からないけど口から出ました。」
そう言うと、兄様達が話しあい始めた。
「どういう事だ?」
「さぁ?何かの魔法適性があるとか?」
「どんな魔法だよ。」
「僕が知るわけ無いでしょ。」
「父上に…当てにならないか。」
「親としてはあれでも、公爵で宰相なんだから、何か分かるんじゃないかな。」
お父様、酷い言われようなのだけれど。
………っと、待って!今、聞き流せない単語があったよね?聞き間違い?
いや。確か、
「宰相?」
「ん?それも知らなかったの?」
「誰も説明しなかったのか?」
メルを見ると、頭を下げられた。
「申し訳ございません。」
「きっと当たり前過ぎて、抜けたんだね。」
「我が家の説明をもう一度しておこう。」
「おねがいします。」
「スウィンティー家は、王家に連なる公爵家だ。父上は宰相。魔力も強く、少数派だな。」
「少数派…?」
「相手へ大きなダメージを与えられる程の魔法が使える。」
「なんと!」
「リーナ、口調が変になっているよ。」
「驚いてしまって…。」
「…続けるぞ?」
「おねがいします。」
「ここから離れた領地の運営は、お祖父様がしている。」
「お祖父様?」
「ああ。父上の父上だ。」
「ちなみに、お祖母様も健在だよ。」
「会いたいです。」
「そのうち会えるよ。学校の長期休暇には、領地に行くから。」
「楽しみです!」
「と、まぁ、こんなところか。」
「んー。多分。」
「兄様。ありがとうございました。」
「ん。」
私はその後、先程の事を不思議に思っていた兄様達に連れられて、お父様の所へ行く事になった。
なんて説明しよう…。
コンコンコン
「入れ。」
お父様の執務室のドアをノックすると、すぐに返事が返ってきた。
ドアを開けると、奥に置かれた大きな机にこちら向きでお父様は座っていた。
「3人揃ってどうした?」
「聞きたいことがあって来た。」
リック兄様が代表して、私の事を話す。
「計算か?う~ん、それだけでは何とも言えないな。しかし、記憶がなくなったことや、話し方なども3歳のそれとは思えないのは確かだ。ま、リーナが天才なだけだとも思うが…。何かしらの魔法が関係している可能性も否定はできない。」
どうする?
和菓の話をする?
そんな事、急に言われて信じる?
いや、信じないよね。
前のサリーナが、どうなったのかも分からないし、とりあえず黙っておこうかな…。
「その辺については、様子を見よう。記憶は無くなったものの、それ以外にリーナへの害は無さそうだし。また気になった事があったら、教えてくれ。」
「「分かりました。」」
「リーナも周りで何か起きたり、体調に異変があったら、すぐに言うように。」
「はい。」
夕食には、まだ時間があったので、私達はお父様の執務室を出て、外に向かった。
「魔法を少し見せてやるよ。」
「良いんですか!?」
「特に使う事は止められていないし、無理しなければ大丈夫だろう。練習がてら少しだけ。」
外に出て庭の開けた所につくと、パトリックは目を閉じた。そして、大きく深呼吸をする。
ドキドキ
どんな魔法だろう…。
パトリックが手をかざすと、足元に小さな竜巻が現れた。
「…可愛い竜巻。」
「兄上、すごいね!もうこんな事できるようになったんだ。」
「コツを掴めば、すぐだ。」
これってすごいんだ…。
うーん…。
目を閉じて魔力の操作って、魔力を巡らせるってやつかな?前に漫画で見たあれかな。
サリーナは、パトリックがした様に目を閉じて、深呼吸を始めた。
血が身体を流れるイメージで…。
「リーナ。真似してもすぐに出来るもので、は!?」
サリーナの髪が浮き、下から風を受けたように揺らめく。
「兄上!父上を呼んだほうが!」
「ああ!俺はここにいる。呼んできてくれ!」
「はい!」
ダリオンは、家に向かって走った。
「リーナ!ストップだ!それを続けたらどうなるか分からない。止めるんだ!」
サリーナが、ゆっくり目を開けると、髪も元に戻った。
「リーナ、大丈夫か?おかしい所はないか?」
「大丈夫ですよ?」
「そうか。今、父上が来るからな。」
「?」
なんで?
サリーナは、自分がどれ程の事をしたか分かっていなかった。