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P379 魔王が倒せない場合の対処法

「ほう、まだ生きているとは、なかなかしぶといな。」

目の前の魔王は嘲笑の笑みを浮かべながら、傷一つない王座に座ったまま俺を見下して言い放った。


「くそ、何だこの強さは、四天王とは格が全く違うぞ。」

俺は右目に映るUIから回復薬(大)を使用した。途端に体が光り、体中の傷がみるみる治っていった。

これで4度目だ。HPを1残して致死ダメージを肩代わりする“身代わりの人形”がなかったらとっくに4回死んでいた。それでも、貴重な人形は後1体しか残っていない。

こちらの全力の攻撃は魔王のHPバーに髪の毛くらいのダメージくらいしか与えないのに対して、魔王の攻撃は一撃必殺。勝てる未来が全く見えない。

「どうすればいいんだよ…くそ…」

前世では重度のゲームオタクだったから、この世界に転生した時はすぐに適応することができた。魔王城まで長い道のりだったが、レベル上げやアイテム回収も怠らず、高難易度ダンジョンもクリアして隠しアイテムの光の聖剣も手に入れた。それでも、魔王には全く歯が立たない。

俺はUIで自身の装備アイテムを見直しながら、魔王に効きそうな特殊アイテムを必死に探した。その時、目に浮かぶUIの右端に小さな?マークがついているボタンがあることに気づいた。

今までまったく気づかなかったそのボタンを脳内で推す。すると、小さなウィンドウが浮かび出た。

「『初心…異世界ガイドブック…』?何だこれ、チュートリアルか?」

こんなんあったなんて知らなかった。最初の何ページか開いてみると、すでに把握済みの基礎知識が書かれていた。全然ページの終わりが見えない。今知りたいのは魔王の倒し方だっていうのに。

俺の考えを読み取ったかのように、ウィンドウが高速でページを飛ばして、とある内容が記載されているページで止まった。


〈初めて魔王に遭遇した場合、魔王の絶望的な力で圧倒される場合があります。このような時、まずは落ち着いて、考え方を切り替え、戦うということに固執する必要が本当にあるのか、そして、逃げるという選択肢も存在することを認識しましょう。〉


「何をボーっとしている、われの力に怖気づいてたか?」

攻撃をしばらく止めた俺を見て、魔王は余裕の顔で煽ってきた。俺は突撃しようとする衝動を抑え、再度ページに意識を向けた。


〈まず、自身の成したい目的とその手段を見直し、魔王を倒す以外でも目的を達成できる、代わりの手段が存在するかどうか考えてください。もし別手段が取れる場合、勝機の薄い魔王を倒す手段は諦めることをおすすめします。〉


そうか、俺の目的は魔王と王国の戦争を終わらせることだ。この戦争で、多くの兵士や民が死んだ。そしてこの戦争を止めるために、俺は魔王を倒そうとしていた。

「あんた、なんで王国に侵攻した?」

突然問いかけてきた俺に魔王は少し驚いた顔をしたが、すぐに不遜そうな笑みを浮かべた。

「ここまでたどり着いた猛者として、特別に教えてやろう。単純な話だ。」

「我の目的は、魔物が支配する世界を作ることだ。魔物は知恵を持たないゆえ、長年人間に虐げられてきた。貪欲な人間は貴重な素材欲しさに、山奥に静かに暮らしていただけの我が臣民を殺し、その体を無残に荒らして、角や目玉などを持ち帰った。」

「我はすべての魔物を統べる王として目覚め、魔物が虐げられることのない、魔物が支配する世界を作りたいと思った。憎き人類を根絶やしにし、魔物が生きる楽園を作るのだ。」


俺は突然語り始めた魔王に驚きつつ、彼の筋の通った主張に反論できずにいた。今更人間と魔物の共存など提案しても無駄であることを察した俺は、魔王を倒すしかないことを理解した。今この瞬間でも、多くの民が魔物に蹂躙されている。このまま逃げることはできない。


〈次に、今直面している戦闘が負け戦と知りながら、挑んで敗北することが、今後の魔王撃破に繋がるかどうかを判断してください。統計データによれば、魔王によって勇者が殺された事例の内、57.6%は勇者死亡により人類側の戦力が大きく削がれ、そのまま人類側は敗戦しました。ただ、23.6%は勇者の犠牲により魔王の力が大きく削がれ、最終的に人類側が勝利しました。魔王打倒に繋がる自己犠牲は尊いですが、魔王の勝利の一助になる自己犠牲は魔王を味方すると同義であることを認識し、撤退をするかどうか再考しましょう。〉


俺は歯を嚙み締めた。今自分がここで死を覚悟して挑んで散っていっても、魔王にまともな傷一つ与えられないだろう。間違いなく意味のない犠牲になってしまう。



「どうした、言い返す言葉もないのか?」


「ああ、あんたはちゃんとした理由で戦争をしかけた。あんたは俺が絶対に倒す。」


「そうか、ならば来い!貴様の全力をみせてみろ!」

魔王は嬉しそうに手を広げた。


「ああ、次会うときにな。」


「え?」


長い準備時間がやっと終わり、テレポートが発動した時の白い光の中、俺が最後に見たのは魔王のぽかんとした顔だった。


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