異世界のアフレクションネクロマンサー446
全てが終わったと、切り捨てるには早過ぎる。
絶望の種が、世界に芽を出してしまったかもしれないが、希望の種だって、息吹くかもしれない。
「そうか……」
私の希望的観測な発言に、ドラゴンは肯定もしなければ否定もしないが、受け入れはしてくれる。
もしかしたら、ドラゴンの中でも、その僅かな希望を信じている節があるのかもしれない。
「そろそろ始めよう、この先の未来を占う戦いを」
「その傷は……」
戦いの準備を始める為に、ドラゴンが羽を広げたのだが、その翼膜には銃創の痕があった。
誰かに撃たれた、戦闘機に撃たれた……可能性はいくつもあるのだが、
「可能性はいくつもあるかもしれないが、事実は一つだ……「そろそろ」の僅かな時間だが、別れを済ませると良い」
そう言うと、先にオレンジの液体の方へと羽ばたいていく。
「そうか…変わったんだよな……」
運命が変わった日は、ずっと前にあった。
あの日、村を襲って来たドラゴン。
本当なら、私はあの日に死んでいて、あのドラゴンは家族で今も、仲良く暮らしていて、
「先生……」
「俺達も……」
そして、成長したドラゴンは、この子達と戦ったのだろう。
「私は…多くの運命を変えてしまったが……それで、良かったと思う」
二人の頭を撫でると、剣を携え、弓を背負って、鎧を着込んだ二人の勇者と、山の麓から姿を現す巨大なドラゴンが視える。
「私の役目は、英雄になる事では無く紡ぐ事……」
二人の勇者は息を合わせ、多くの人々を不幸の淵に立たせ、哀しみの底へと叩き落とした、ドラゴンへと立ち向かう。
「私の行いで、この世界は狂ってしまったけど…それでも、君達という希望が生まれた」
矢を的確にドラゴンの頭に当てながら、自分の方へと気を引き、もう一人の勇者は、その隙に大木へと登る。
「これからの世界は…大変な事になるけれど……君達なら未来を掴める」
後もう少し…もう少し……こっちに来ればという所で、弓を引いていた勇者が、ドラゴンの手で吹き飛び、爪で体が裂かれてしまう。
「私は、もう…君達の側にはいてあげられないけど……」
友をやられた勇者は怒りに任せて、大木から飛び降りてドラゴンの頭に剣を突き刺すが、脳までは届かない。
「君達二人なら、どこまでも行ける……」
頭を突き刺した、人間を掴み殺そうとドラゴンが手を上げた所で、ドラゴンにやられた方の勇者が、最期の力を振り絞って、ドラゴンの目を矢で射貫く、
「なぜなら、君達は運命が変わって生まれた……」
ドラゴンは突然の痛みに、首を振って暴れると、残された方の勇者はドラゴンの角を掴んで大木の方へと体を傾け……
「希望の種だから」
ドラゴンの頭を大木に叩き付けさせると、剣はドラゴンの脳に達して悲鳴を上げさせて、地面に伏せさせたが、そこには大木とドラゴンに挟まれて、息を引き取った勇者の亡骸があった。




