異世界のアフレクションネクロマンサー438
後ろから迫り来る赤いネズミ。
「しつこい奴等だ…そんなに俺達のケツを焦がしたいんかね?」
背中の方が熱くなる。
ジリジリ、ジリジリと背中が焦げ付くように炙られて、
「焦げたクッキーは食えたもんじゃねぇぞ……」
もう少しで追い付かれる……
コイツも一生懸命に走ってくれているが、やはり人一人おぶっていては、追い付かれてしまう。
『『『タタタタタタタタタタッッッ!!!!!!!!!!』』』
後ろから聞こえて来る、赤いネズミの足音も、さっきよりも大きく聞こえる。
もうそろそろ覚悟を決めて…走馬灯を見る準備をしないと、昔の記憶を思い出している暇も無く殺されてしまうだろうが、
「まだ行けるでしょ!!」
「だな……」
まだ、大丈夫だと信じる。
時間にしたら猶予は、数秒しかないが、それでも信じる。
ここでよく頑張ったと足を止め、ここまでで十分だと背中から降りても、大差は無いのかもしれないが、後、数歩だけ前に進む。
一歩…二歩……三歩……四歩………追い付かれる、その時まで……
「ごめんね。こうならないように、君達には話をしておくべきだったね」
赤いネズミに追い付かれる、その時よりも、
「先生!!」
先生に下に辿り着く方が、先であった。
瓦解した街の中で、先生の姿を見付けた途端に、走っていた足から力が抜けていき、ヨタヨタと歩き始めてしまうが、
『タタタタタッッ…………』
それに合わせたかのように、赤いネズミ達も追い掛けるのを止めて、その場で立ち止まるのであった。
執拗なまでに追い掛けて来た、赤いネズミ達の突然の制止は偶然では無い。
「さぁ、こっちへ」
「先生……」
まるで、雛鳥のいる巣を襲おうとしていた所に、親鳥が帰って来て、形勢が逆転したかのように、先生に対して警戒を……怯えを覚えている。
先生は、背中におぶっていた彼を抱き寄せ、所々が赤く染まっているの見て、
「随分、無理をしたんだね」
「そうすか…見た目程じゃないっすよ……」
彼の、痛々しい傷に触れないように、手をかざし、
「大丈夫、すぐに癒してあげるから」
先生の手から淡い光が灯ると、彼の傷が癒えていくのであった。




