異世界のアフレクションネクロマンサー430
「しゃぶったのかってぐらいに、綺麗なもんだ」
落ちている骨を適当に手にして、クルクル回してから、肉片一つ付いていない骨が手渡される。
「…何が起きたんだろう」
白骨化した骨自体は問題無い。
大型の獣が死ねば、小型の獣が死骸を捕食し、そのおこぼれとして虫がたかる。
肉という肉は食され、腐った血は大地に吸われて、いつの日か、そこには生きていた物の証として骨だけが残る、これが命のサイクルなのだが、
「猫もネズミも骨と化して…血のシミも虫もいない……」
命のサイクルをする者達が白骨化して亡くなり、血が大地に吸われた後も無ければ、虫もいない。
普通な考え方をすれば、ここで人間が死んだのなら、その死骸を猫、ネズミ、虫が食べて、繁栄しているはずなのに、その痕跡が一切存在しない。
百歩譲ったとして、ドラゴンが食料として猫、ネズミを食べたとしても、虫までは考えられない。
「何かが、意図的に頭だけを持っていって、後は消した?」
手の中にある、生き物がいていた証を元の所に返してあげて……
「ねぇ…これ煤けてる?」
「煤けてる?」
骨を元の所に返そうと、地面にしゃがみ込んだ事で、地面にある変な跡を見付ける。
「そう…だな……長年の汚れというよりは、煤けてるな……」
さっきは適当に骨を拾ったから気付かなかったが、言われてしゃがみ込んでみると、確かに地面に煤けた跡が残っている。
「じゃあ…ここにある骨は、ドラゴンの炎で焼かれたって事か?」
「だとしても変だよね」
体が焼かれて、白骨化する程の炎を吐いというのなら、もっと地面が焼けて、人が焼かれた跡が残るはず。
「でもなぁ……」
「うん……」
二人は違和感を覚えながら、煤で出来た微かな跡を目で追うと、周りの建物にも煤けた跡が見て取れる。
「気を付けて行くか……」
「そうだね」
ここまで来たら、その煤けた何かが無関係では無いはず。
微かな手がかりである、煤けた跡を辿って前へと進む。




