異世界のアフレクションネクロマンサー429
「さすがだね…怪我をせずに降りられた……」
戦闘機の激しい着陸の衝撃で、身体が軋むが、それでも怪我をせずに地上に降りられた。
指先一本すら怪我をしていない事に感謝しながら、銃手席から銃を取り出して地面に飛び降り、後ろを振り返ると、
「……限界を超えて、守ってくれたんだね」
そこには、我が身をボロボロにしながらも、操縦席と銃手席だけは無傷で守り抜いた戦闘機の姿がある。
初めて乗ったあの日から乗り換える事無く、改修を続けて、共に成長して来たが、
「あぁ、こいつも納得してくれたんだろうな……この先の道に、何が何でも俺達を送ろうとしてくれた」
愛機は、ここで眠りに付く。
これからの事、これからの先の未来に一緒にいた愛機を失うのは、子供の頃からの愛馬を失ったような損失を心に与えるが、
「……前に進むぞ!!」
ずっと感傷に浸る訳にはいかない。
自分達の願いで、命を尽きさせたのだ。
感謝と、感傷を覚えるのは愛機に対する敬意であるが、
「……うん!!」
最大限の敬意は、燃えた命の灯に、自分達の命を燃やす事。
後ろ髪を引かれる気持ちを振り切り、愛機に背中を見せて、二人は前と進み出すのであった。
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愛機である戦闘機から離れ、横並びで周囲を警戒しながら進む二人。
どこの建物も例外無く半壊し、猫やネズミの小さな骨……それに人骨が散らばっている。
それは生き物という生き物が、ドラゴンによって駆逐された事を表し、もうドラゴンしかいない事を示唆しているのだが、
「変じゃない?」
「変じゃないか?」
二人はある異変に気付き、周囲を警戒していた目を互いに合わせ、
「変な所は二つ」
「あぁ、まず頭の骨がねぇ」
種族に関係無く、頭の骨が見当たらない。
首より下の骨は、あちらこちらに散らばっているのに、頭骨だけ見当たらず、
「ドラゴンがよっぽどのグルメで、頭だけを食べた…なんて、ありえねぇ」
「そう…父さん達は、グチャグチャに食い散らかされたのに、ここにある骨は、全て綺麗に肉が消えている」
しかも、残された骨から肉が綺麗に、舐めとられたかのように消えているのだ。




