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アフレクションネクロマンサー 序章  作者: 歩道 進
黒い海
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黒い海16

それは感覚が研ぎ澄まされたとか、超常的な何かに目覚めたとかという類ではない……


放り投げたバスケットボールが弧を描き、リングに触れずにストンっと落ちるようなイメージ……イメージを浮かべるという事がゆっくりとなった理由なのだろう。


無意識のうちに頭の中と体の感覚が、これから起きることをシミュレーションし、それを現実に起きていることになぞっていく。


一度見た番組をDVDでもう一度見直す行為、初めて見る時は映像を漠然と頭に入れることしか出来ないが、もう一度見る時には頭の中にある映像を合わせることにより、映像の詳細を見ることが出来る。


何度も捕食されかけるという行いが捕食の流れの理解を行わせ、一挙手一投足の動作が見える現象を起こす。


大きく開かれた大きな鯉の口、一瞬のうちに飲み込まれていたら何も理解することもなく終わっていただろうが、今は目の前の事が理解出来る。


大きな鯉の口の中には何もない、鋭く引き裂く歯も、すり潰す歯も、苦味を甘味を味わう舌も、あるものは何も無く、何も無い、この黒い海が明るいと思える程に、深い漆黒の闇が口の中に封じられている。


それがきっと、黒い海をより深い闇へと溶かすのだろう。


黒い海をも溶かす、真っ暗な闇が自分の眼前に広がり、周囲の黒い海が泣き声を上げる……それはもしかしたら、真っ暗な闇に溶ける自分への祝福の声だったのかもしれない。


悲しくて辛い事しか覚えてない者達、だから笑うことも歓声を上げることも出来ない……だけど、これから生まれ変わる命を祝福したくて、何とか出せる泣き声を上げたのか……


……生まれる変わる、もう一度運命を手にすることが出来る……それが人ならざる者になったとしても……


(あぁっ…………)


心が溢れる……無くなっていく腕を伸ばして向かい入れる……大きな鯉を……


大きな鯉は大きな口を開けて受け入れる、新たな命になる者……


「寝仏北百八万之命他種祈願安……我が身を寄り代にし、その力で我らを守り給え!!」

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