異世界のアフレクションネクロマンサー425
『なにを…ふざけているんだ?』
自分達の住処に敵が来ている。
このままでは、巣は破壊される。
自分達の、最期の住処を破壊されるというのに、ドラゴンは空に上がって来ない。
例え、自分達の住処を守れなかったとしても、自分達を追い詰めた者に一矢報い、死ぬ時には、一人でもあの世へ道連れにするくらいの度量は、あるはずのドラゴンが飛んで来ない。
『『『ブゥゥゥゥゥゥ』』』
ドラゴンの巣の上に来たというのに、エンジン音しか聞こえない。
他の戦闘機達も、この状況に戸惑いを覚える。
戦う相手がいなければ、戦闘隊は役目を失う。
相手のいない戦闘機達は、ドラゴンの巣の上空をただ飛び回る事しか出来ない。
(どうする……)
戦う相手がいないのなら、この場に爆撃機を誘導するだけだが……この静かな時は、自分達が創った物では無い、ここに来たら静かな場所になっていたのだ。
(潜んでいるのか?こちらの動きを読んで……)
反撃する程の力を無くしたのか?それとも誘われているのか?
本当に…本当に微妙なライン。
一つ前の戦闘で総力戦を行い、その時にも退却したドラゴンはいたが、無傷では無かった。
ドラゴンの巣に残されているのが、怪我をしたドラゴンしかいないから飛び立てないのか、俺達を引き付けるだけ引き付けて、最期の戦いを挑もうとしているのか……
「降りよう」
『お前……』
この不気味な状況……何か打破する要因が無い限りは、爆撃機を呼ぶ事は出来ないが……それでも、その選択は……
「みんなはここまで。ここから先は、自分達の役目だよ」
『……英雄様の…勘ってやつか?』
「君も同意してるでしょ?だったら勘じゃ無いよ。行くべき道だよ」
その選択は、最高にイカしてる。
俺達二人じゃないと出来ない事、俺達がやらなければならない事。
『お客様!!着地の時は舌を噛まないようにして下さいね!!』
「なにさそれ」
いつもの掛け合い、いつものじゃれ合いの言葉……だけど今日だけは……
「信じてる……」
いつも心の中で想っていたであろう言葉を口にしてくれた。




