異世界のアフレクションネクロマンサー422
争いを…戦いを求めている訳では無い、物足りないから、おかわりを要求している訳では無い、
「まだ終わってない……」
『お前がそう言うなら、そうなんだろうな……』
英雄が、戦いは終わっていないと言っているのだ。
『みんなには…言わなくて良いか……』
普通に考えれば、戦勝気分でいるみんなに、気を引き締め直すように言うべきなのかもしれないが、
「そうだね…みんなにとっては終わった事なんだと思う」
自分達が見ている物、感じている物と違うのかもしれない。
みんなの見えている未来では道が開けていて、人類がドラゴンに打ち勝っている世界が広がっていて……全てが希望に見えているのかもしれないが……
「だとしたら…自分達が見ている世界は何なんだ……」
いまだに見通しの効かない世界、人類が勝つのか、ドラゴンが繁栄するのか分からない世界。
『なぁ…もしかしたらだけど……先生は、本当の事を隠しているんじゃないのか?』
「本当の事?」
『あぁ、先生はドラゴンの巣を壊滅させる事が勝利を掴む為の方法だと言っていたけど、それは表向きの話で、本当はもっと違う何かがあるんじゃないのか?』
「それは……」
それは十分にあり得る事かもしれない。
最近の先生は、自分達だけでなく、周りの人ともあまり交流をしないようにしていた。
たまに話をすれば「忙しい忙しい」と言っては、みんなを遠ざけて。
『それに、出るだろ先生。功労者である先生を出撃させるのは、上の人達は難色を示していたけど、最後を飾る為にって我儘を通して』
「……」
『おかしいじゃないか。エースパイロットを探す時は、そっちが忙しいから飛べないと分別を付けていたのに。もしも、この後何かあったらどうするんだ?先生が、戦闘中に死んだら士気が落ちて、余計な被害が出るかもしれないんだぞ?そんな事は先生だって、分かっているはずなんだ』
「……」
もしかしたら、この開けない道を先生も見ているのかもしれない……開けない未来を切り為に……その事を思うと、今すぐ戦闘機から降りて、先生の所へと行きたくなるが……
「それでも…自分達は出撃する……」
その気持ちを抑えるために、銃を握り締める。




