異世界のアフレクションネクロマンサー417
まだ、全部は理解しきれない英雄の器に、異物感を覚えながらも駆けて行く。
どっちのお迎えが先に来るのかを心待ちにしながら、赤い雲に包まれ掛けている世界から、青い空へと。
(このまま…力尽きるまで、永遠と飛んでそうだが……)
このまま、どこまでもランデブーしてしまいそうで、青空の果てまで飛んで行けそうに思うが、
『まっ…それは、また今度の話だな』
自分達の前方から、一機の戦闘機が向かって来てくれている。
その戦闘機は、新型の戦闘機で、チーム分けとして俺達の天使のエンブレムが描かれている戦闘機。
『助かるな』
俺達の救援に来てくれているのは、副隊長。
その腕前は、俺達に勝るとも劣らない天才、これでこちらの方が有利になったという所で、
「だけど、あっちにも迎えが来たみたい」
ドラゴンの方にも迎えが来る。
これで二体二のイーブン、戦力は互いに揃って不利有利が無くなった所で、
『グルㇽㇽㇽ……』
『なっ…!?』
「帰る?」
真上を飛んでいたドラゴンが、小さく唸ってからトンボ返りをしたかと思うと来た方向へと向かい、それと呼応するように、あれ程まで殺気立っていたドラゴン達もとんぼ返りをして帰って行く。
『なんだよ…それ……』
あまりにも呆気無い幕引きに、戦う意思が不燃焼で燃えカスにすらならない。
この憤りとも言える感覚に、後一体くらいはドラゴンを地に落としてやろうかと思ったが、
「やっぱり変だよ」
『変?変って何がだよ?』
あいつは、この状況を変だという。
戦略的に不利になったからドラゴンは逃げ出した、それは、尻尾を巻いて逃げたという事。
敗走するというのなら、ここで追撃するのも手立てというものであるが、
「だって…今まで、ドラゴンが逃げ出した事なんて一度も無かったじゃないか」
『あっ…あぁ……』
あいつから言われた言葉で、頭に登った血が一気に引き下がった。




