異世界のアフレクションネクロマンサー415
前を見て走る…絶望の中でも先を見る事が出来る……そんなのは当たり前の話だ。
前を見なければ、何も見る事など出来無いのに、周りは、何かあるとすぐに下を向いてしまう。
そこに、あるのは自分の足元だけなのに……その先に絶望があるからと、怖いから見たくないと言って……
時は刻々と進む。
下を見ているとその間に、先にあった、絶望に隠れて見えなかった希望の道が閉ざされてしまうのに、足元を見る。
それを理解しているからこそ下を見ない、だから恐れ無い。
それは周りから見れば、英雄のように見えるかもしれないが、
(だけど…それは抜けているんだよな)
それは、本当の英雄とは言い難い。
言い方を悪くすれば、感情が抜け落ちている。
グランドラゴンの件、アーマードの件、静観が出来る判断力の高いドラゴン、これらをおかしいと思えたのは、後ろにコイツを乗せているから……命を預かってから少しづつ変わった。
英雄とは、みんなの為に前に立つ者。
ならば、みんなを守る為にも危険を感じ取り、その危険な物から、みんなを遠ざけなければならないが、自分にはそういう感情は無かった。
これがもし、最初から新型の戦闘機で一人戦っていたら、ただただ、新しい敵が、手応えのあるドラゴンが現れた程度にしか思わなかっただろう。
『……飛んでみるか』
「行けるの?」
『どこまでも』
ハンドルを回し、エンジンの出力を上げてペダルを踏み込み、
『ブロォォォォォォォォォ!!!!!!』
戦闘機を加速させる。
『お客様!!振り落とされないようにして下さいね!!』
「なにさそれ」
内心では思っていた、俺は英雄になる器では無く、英雄になるコイツを導く者なのではと……それはそれで悪くないとは思ったが、
(とは言え…俺だって感じ取れたんだ……英雄が感じる感覚を!!)
導くだけでは性に合わない。
『ブロォォォォォォォォォ!!!!!!』
『…………』
戦闘機が加速したのに合わせて、ドラゴンも羽を羽ばたかせて、付かず離れずの距離を保ったままで付いて来る。
行き過ぎもせず、遅れもせずに、まるでお互いに息を合わせているかのように。
(随分と行儀が良いな)
こちらを落とそうとしているのは間違い無いが、狩り取ろうと舌なめずりをしたり、力に任せて襲って来ようとしてこない。
こちらが機会を窺うように、向こうも気配を窺っている。




