異世界のアフレクションネクロマンサー399
「そうだよね…そういう考え方をしないとだよね……」
当初から家族の為に戦う決意をし、結果として世界が平和にする戦いに身を投じる事になり、戦う事が主軸になっていたから、戦闘機から離れ、銃を手放すという選択肢は自分には無かった。
「ほんと…前を見るのが……先を見るのが得意だよね」
『まぁな。戦闘機が前に進むのに、後ろを見てたら落ちちまうからな』
「その通りだ」
本当に、彼の前を見る力には救われる……父を亡くした時も、彼が前を見て歩んでくれたからこそ、悲しみに押し潰されて俯いていても、前を進む事が出来た。
戦闘機のパイロットに落ちた時だって、絶望からパイロットになるのを諦めようとしたけど、どんな形でも道はあると言って、先の見えない道を突き進んでくれたお陰で、銃手という道が開けた。
先を見つめて、まだ見えぬ先でも希望があると信じられる彼に、救われて来たが、
「そっか…きっと、楽しい事が待ってるね」
彼が戦闘機を降りて飛行機で飛び立つというのなら、自分も身の振り方を考えなければならない。
彼がパイロットを止めても、代わりのパイロットはいるかもしれないが、阿吽の呼吸でやれるかというと無理だし、他の人の操縦で飛ぶとなったら、射撃に集中出来ない……
(ダメだな…自分……)
彼がいなくなる……それだけで道が閉ざされる。
銃を扱う腕が一流だと言われ、指導する立場であるのに、彼がいなくなると言った途端に、どこに向かえば良いのか分からなくなってしまった。
「だったら…こっちは、猟師にでもなろうかな……」
そうだ、銃を貰って町に……いや、村に住むのも悪くない。
ドラゴンを始末し、平和に暮らせるようになったら、静かに余生を過ごす……悪くない。
きっと、母も姉さんも納得してくれるはず、街にいたら騒々しい事に巻き込まれるかもしれない。
激動の日々だったのだから、残りの人生が静かでも、先生と出会い、空を飛び、ドラゴンと戦った時を思い出せば、心は震えるだろうから……
道が閉ざされたのではない…終着点に辿り着くだけ……そう考えれば、心も救われる……そう思った時であった。
『何言ってんだよ?お前、こいつから降りる気かよ?』
彼は、自分の「猟師になる」という言葉に、驚いた声を出す。




