異世界のアフレクションネクロマンサー396
(あの子達だったら…何事かと問い詰められていただろうな……)
汚した肩、あの子達ならこんな些細な事でも気に留めてしまう。
根掘り葉掘り聞かれては多少の事は答えてしまい、そこから大事な事がバレてしまったかもしれない。
「所で何か…陸戦隊の方で問題が?」
あの子達では無かった事に、胸をホッと撫で下ろしながら、別件で訪ねて来た元銃手の彼の要件を伺うと、
「先生…無茶を承知で言います。複座式の戦闘機で一緒に戦いましょう」
これまた難題を吹っ掛けられた。
「陸戦隊の指揮官に不満…という訳じゃないか」
「はい…先生のお陰で、先生と一緒にいたという功績のお陰で、私には勿体無い地位を与えられました。先生には感謝しかありません」
元銃手の言う通り、航空隊から外された事に不満が無いというのなら、これから何の話をされるかは察しが付く。
元銃手の、こちらを狙い付けるような真剣な眼差しを正面から受け止めると、
「先生、この戦いが終わったら隠居しましょう。先生は私達に多くの英知を、多くの才ある者達を導きました。後は、先生が献身的に尽くした苦労が報われる事だけが、残された事です」
元銃手の、まるで真っ直ぐに放たれた弾丸のように、素直な真っ直ぐな気持ちをぶつけられる。
包み隠さない言葉に想い、その言葉に揺るがないと決めていた心に弾丸が突き刺さり、目をつぶってしまった。
それは相手に、自分の心が撃ち抜かれ、心に響いた事を伝えてしまい、
「王様も…みんなも言っています。先生は常に最前線で戦い、常に皆と同じ苦しみを味わい……もう充分じゃないですか……安全な所にいて下さい。この戦いが終わった後を、考えて下さい」
元銃手は、貫いた急所を逃さずに狙って来る。
「そうか…複座式の戦闘機を望むのは……」
「そうです…先生が無茶をしないように、私の命を人質にする為です」
心に痛い程に言葉が、想いが突き刺さる……これ程までに人に慕われ、想われる事がどれ程価値があろうか?
私は目を閉じたまま、口を押さえ、
『ホッゴホッ!!』
「先生!?」
先程まで、我慢していた咳き込みを我慢せずにして、
「汚い物ですまないが……これを見てくれないか」
「こ…れは……!?」
広げた手の平は、濡れて輝いていた……そう、まるでドラゴンの秘石のように。




