異世界のアフレクションネクロマンサー395
我々が飛躍したように、ドラゴンにも飛躍されてしまったら、人類に再び飛躍する奇跡が起きなければ、滅ぼされる……その事を、みんな分かっているからこそ、反論せずに聞き入れる。
難解な作戦内容では無い、ただただ、ドラゴンの巣へと突き進む作戦だが、その作戦の中身は過酷を極める。
「明日の明朝、日が出始めた頃に陸戦隊が出る。その後、陸戦隊からの合図があり次第、我々も出撃する事になる。各自、整備が終わり次第、休憩を取って明日に備えて…欲しい……」
明日の作戦が始まれば、終わるまでは休む事は出来ない……今からの休息で、明日の作戦全ての体力を養わないといけない。
先生は全てを喋り終わり、無言のまま敬礼する。
これ以上の指示も、伝える事も無いという意味。
先生の無言の敬礼に、全員が同じように黙って敬礼すると、会議室に集まった者達が順番に出て行くが、あの子達は、何かを話し掛けたいのか、こちらを名残惜しそうに見ていたが、私が首を横に振ると、渋々と会議室から出て行った。
会議室に一人残された所で椅子に座り込み、
『ゴホッ…ゴッホッ……』
口を押さえると、喉が震えて手の平が濡れた。
「……見られなくて良かった」
最後の無言の敬礼。
指示する事は伝え、言う事が無くなったのも事実だが、本当はこの喉がつかえて、口から吐き出した物を見られたくなかったから。
手の平が濡れている…無理をした……体の限界の限界まで……
「はぁ……」
喉のつかえがとれて、息を吸うと落ち着ける。
役目を果たす時が来る…目を閉じてイメージする……この先の事を……
『コンコンッ』
「?」
「先生、失礼致します」
この先の事をイメージしている時に、自分の銃手を務めていてくれた者が、訪ねて来たのであった。
こちらが声を掛ける前に扉が開かれ、慌てて濡れた手を肩で拭くと、
「…先生それは?」
「あぁ…単なる汚れだよ」
「そうですか」
汚れた肩を見てた、銃手は何かと思ったらしいが、何でも無いと言う言葉で気に留めなかった。




