異世界のアフレクションネクロマンサー383
青い空…光り輝く太陽……白い雲……美しい世界ではあるが……そこはドラゴンの為の世界。
ドラゴンは空からの祝福を一身に受けて、そのおこぼれを私達は貰うだけなのに、空を飛ぶ何かはドラゴンと同じように空を飛び、ドラゴンのように空からの恵みを受けている。
不思議な存在。
初めて見る何かではあるが、それがドラゴン以外で、空を飛ぶ事を許された存在だというのは分かる。
優雅に、誰より力強く、空を我が物にして飛ぶ者を眺めていると、
「お母さん…あそこに、あの子達がいるの」
「あそこに……?」
娘が、空を飛ぶ何かが息子達だというが、それはどう受け止めたら良いのだろうか?
(空飛ぶ…馬車?そんなのがあるの……?)
自分の想像に及ばない何かに、唖然としていると、
「届いた手紙にはね。今日の早朝からドラゴンの討伐作戦が行われるって書いてあったの」
「だったら……」
さらに唖然とする事を教えられる。
もうお昼を回っている…という事は、今いるあの子達は……
「窓を開けて」
「それは……」
「あの子達は勝ったんだよ、ドラゴンに……それはお母さん達、ドラゴンに心を壊された人達を治す為に戦ったんだよ」
「…………」
あの子達が空を手にした…ドラゴンが支配する世界を奪い取った……
それは、栄光を手にするためでも、地位や報酬を手にする為でなく、ドラゴンによって、心の牢獄に囚われた人達を救う為に……
ドラゴンが牢獄の外で唸り叫び、永遠に牢獄の中で生きるしか無いと恐怖心を植え付けられていたが、
「まだ…ドラゴンはいるけど……それでもあの子達が……」
牢獄の外にいたドラゴン達を、あの子達が倒してくれた。
腰はまだ引けているが、それでも手を伸ばす。
窓の外では子供達が待っている…あの恐ろしいドラゴンを退治して……太陽が差し込む牢獄の出口へと手を伸ばし……
『カチャ……』
「お母さん……」
外が開け放たれて、牢獄に囚われていた心が解放された。




