異世界のアフレクションネクロマンサー382
一体何のサプライズなのだろうか?
あの子なら玄関を開けて、プレゼントを持って来きてくれる……けれど、あの子の友達の彼が一緒なら、
「何があるのかしら……」
何かしらのサプライズをしてくれるはず。
彼は、いつも元気一杯な子だった……父を亡くしても気丈に振舞い、哀しみに打ち勝つために手を握り締めて、唇を噛みしめていた。
前を見つめる強さ…光り輝く世界だけでなく、暗闇に閉ざされた恐ろしい世界でも、睨み付ける事の出来る彼の力強さを知ったからこそ、あの子を町に連れて行こうとせずに、街に残す事が出来た。
そんな彼が一枚噛んでいるのなら、塞ぎ込んで前を見れない私達に、外の世界を見せようと何かのサプライズをしてくれるているはず。
久しぶりに開けたカーテン、差し込む太陽の光……怯えながらも、あの子達が外にいるならと、身体を後ろに仰け反らせながらも、視線は外に向けて、
「あの子達はどこにいるのかしら……」
子供達を探す。
娘の指差す通りなら、屋根の上にいるはず、一つ一つの屋根を丁寧に見て、そこにいないと隣の家の屋根を探していると、
「お母さん、あそこにいるの」
「あそこ?」
娘がさらに高い所を指差したので、そこを見ると何かが飛んでいた。
「……あれは?」
空を飛んでいる何かは…ドラゴンではない。
怯える程にドラゴンを、脳裏にこびりつく程にドラゴンの姿を想像出来るからこそ、空を飛んでいる何かがドラゴンじゃないと分かる。
しかし…だとしたら、あれは何なのだろうか……空を飛べるのは他にも鳥がいるが、空を恐れずに飛べるのはドラゴンだけ。
あんなにも堂々と空を飛べば、ドラゴンの怒りを買う。
怒りを買うのを分かっているからこそ、あんなに空高く飛ぶ事は無い。
何が飛んでいるのか不思議に思いつつも……
(私…空を見ている……)
二度と見る事が無いと思っていた空を、怯えずに見ている。




