異世界のアフレクションネクロマンサー381
どんな理由があるのにしても、子供を戦場に連れて行くなんて……
子供を孤児にして、街に残したのは帰りたいからでは無い、それは息子の未来の為。
この町が、いくら街の人達が流れて来たと言っても、一番良い教育を受けられるのは街の方。
何も立派な騎士になって欲しいとか、立派な商人になって欲しいとかでは無い、あの子が生きていく選択肢の数と幅を広げる為。
あの子が望むなら町でも村でも……静かに暮らして行く事を望むなら、それを受け入れるが、今はまだ早い。
まだ子供なのに、選択肢を兵士という道だけで狭めないで欲しい。
だから、話し合わなければならないのだが、
「……カーテンを開けて」
「それは……
「玄関に迎えに行くんじゃなくて、外を見て欲しいの」
「…………」
娘のすがりながらのお願い。
窓からあの子が帰って来るのを見るというのは、外に対する認識のリハビリになるかもしれない。
「……分かったわ」
それは一つのきっかけ…あの子が外にいるという理由でも無ければ、確かにカーテンを開けようとは思えない。
あの日、恐ろしいドラゴンを討伐したという話を聞いて、恐ろしいモノをはねのけたと聞いて、カーテンを一度だけ開けて、世界を見渡した日以来の事。
太陽の光を溢すカーテンを握り、
「……ふぅ」
そこにドラゴンがいないと分かっていても、緊張する手を理性で…息子が帰って来るのを迎える為と覚悟を決めて、
『シャーー……』
カーテンを開けると、外の光が部屋の中へと入り込んで来る。
いつもは暗く閉ざされている部屋が、光に照らし出されるだけで、ここが隠れる為の場所では無く、人が住むための場所だと教えてくれる。
「……眩しいわ」
久しぶりの太陽の光…それを直接浴びると目が眩んでしまうが、
「あの子は…どこかしら……」
外を見るのはまだ怖くて……娘に大体の場所で良いからと、息子のいる場所を教えて欲しいと頼むと、
「あそこにいるよ」
「あそこ?」
娘の指が差したのは、隣の家の屋根であった。




