異世界のアフレクションネクロマンサー365
「よしっ!!」
『ざまぁみろ!!』
二人の気持ちが重なる。
散々、自分達を苦しめたドラゴンの最期……それを自分達の手で行った。
存在するだけで怯え、存在するだけで頭を悩ませてきたドラゴンが手を広げて、空か地上へと落ちていく。
もう覇者でも無ければ、頂点に立つ存在でもない。
これからは我々人間が、種の頂点に……
『グゥガァァァァァァァ!!!!』
「なっ!?」
立ったと思うのは、早とちりであった。
頭を撃ち抜かれて、力を無くして落ちていくと思ったドラゴンは、最期に心臓を燃やす。
脳が生き物の知性を授かるなら、心臓は命を授かる。
指令を出す脳を破壊されては、後は物言わぬ人形となり、生きていたとしても生きる屍。
頭を破壊するというのは死に近い事なのだが、
『ギャァァァァァァァァ!!!!!!』
必ずしもイコールでは無い。
もしも…もしも死の間際に、強い意志を体に遺したらどうなるだろうか?
地上へと向かっていたドラゴンの手が握りこぶしを握り、手から血が溢れる。
それは最後に遺された怨念の強さの表れ、自分の肉体を傷付けてでも、復讐を果たす。
息絶えるはずのドラゴンの翼が大きく広がり、飛び立つ準備をする。
『どうする!!』
「心臓を抜く!!」
遺された怒り、それを鎮める方法を考えろと言われたら、方法は一つ……最後の死力を尽くしてこちらに向かおうとする、ドラゴンの息の根を完全に止める。
脳が最期に託した、命の源である心臓を破壊すること。
心臓の場所は分かっている、ドラゴンを解体した時の資料を見せて貰っている。
分厚い胸板、分厚い骨に守られた心臓……真っ直ぐ狙うだけでは心臓には辿り立つかない……贅沢を言えば、腹の方から肩の方へと撃ち抜く射線を取りたいが間に合わない。
(やるしかない!!)
間に合わせるには、肋骨の隙間から心臓に弾丸を届かせる。
個体で違うであろう、肉体構造を想像する……そう、想像するのはそれだけ。
筋肉に阻まれて届かないとか、骨にぶつかって心臓を撃てなかったとか、そんなのは考えない。
(やらなきゃ死ぬ!!)
相手は、もう死ぬ……死ぬからこそ道連れにする事だけを望み、それ以外の事はどうなっても構わない。
だから、こちらも一緒なのだ。
こちらも、死に逝く者に狙われた時点で、死に体なのだ。




