異世界のアフレクションネクロマンサー346
「種としての差に怯えて、自分達を過小評価しているという事か」
王様は、銃の設計図から目を離し、置かれている銃を手にして、
「こうやって使うのかね」
ボルトをスライドさせて、今朝の孤児のマネをする。
見よう見まねの動きであるが、
「これで、ドラゴンを殺せるのか」
「かなり、熾烈な戦いにはなるでしょうが」
その、ただの見よう見まねの動きで戦える。
今回の戦いの要、人間とドラゴンの覇権を争う戦いに勝った方が、この世界を支配……
「……それで、君が危惧しているのは、子供でも、玉座に座るのが仕事の私でも、ドラゴンを殺せる力を授かる事が出来る銃を、同じ人に向ける事であろう?」
「気付いて下さりましたか」
雌雄を決する戦いに人類が勝った時、次に起きるのは人同士の殺し合い。
我々には銃があるから、一方的に相手を蹂躙し、負け知らずで領土を広げる事が出来るかもしれないが、
「あの飛行機もまた素晴らしい…とても遠くの国まで行けるのだろう……所でだ。そのバスケットの中の物を手にしてくれ」
「バスケットの中ですか?これは…サンドパンですか」
「そうだ。君はそれを見てどう思う」
「これを見てですか?」
チーズとハムとトマトをパンで挟んだ、パイロット候補生の食べ物。
キャラメルと紅茶だけでは力が出ないという事で、食堂の人達と合同で造った食事。
パッと食べられて、お腹も膨れる一品に、パイロット候補生達は大喜びで……
「我ながら、良い物が出来たと」
「私は、そのサンドパンを見た時、ゾッとしたよ」
「ゾッと…?」
王様はバスケットの方に目を向ける。
「戦争の時には、そのバスケットの中に配給の食事が入っている。それはそのサンドパンと同じように、パンにチーズ、ハムに野菜、それらがバスケットの中に入っている」
「はい…」
「中身は、ほぼ一緒かもしれない。しかし、そこには大きな違いがある。それは食事をするという事だ」
「食事をする…ですか?」
自分が持つサンドパンに目を落とす。
これだって食事だ、何も味が悪いとかそう言うのは無いのだが……
「サンドパン。それは決して悪い物では無いが、食事の簡略化……戦争に特化した食べ物と言っても良い代物では無いのかね?」
「戦争に特化した……」
「そうだ。戦いの合間に取る食事をいうのは、兵士にとっての安らぎの時間だ。食事が入ったバスケットを受け取り、中身を広げて食べ物を楽しむ……それは食べるという行為だけでなく、食事をする時間すらも味わう」
そう言われてからサンドパンを見ると、王様の言う通り、サンドパンは食事を簡略化した食べ物であった。




