異世界のアフレクションネクロマンサー345
「なに…君と少し話をしたくてね」
「御一人で?」
「いや、外で待たせてる」
王様は、自分の方へと近付くと、設計図が広げられている机の空いている所にバスケットを置き、
「それは?」
「夜食だよ……これは、銃の設計図かね?」
「はい、これのお陰でドラゴンと空中で戦えます」
設計図を眺める。
その目は真剣そのもの、物珍しいさに見ているというより、この設計図を理解しようとしている。
いつもなら、工房の人以外には見せないようにし、興味本位で部外者が見ようとした時には、ナイフを構えてでも阻止したが、
「……我々はドラゴンに勝てると思うかね?」
王様が興味本位で見ているのではなく、銃という存在と関わる事で話したいのだと分かるから、先生が残した設計図を見る事を許す。
「勝てるかどうかは…五分五分だと思います」
「五分五分か……私はドラゴンの方が勝つ見込みがあると思うがね?」
「それは恐怖心のせいですよ」
「恐怖心?」
「確かに、ドラゴンは素晴らしい生き物です。ありとあらゆる種の頂点に立つ事が許された生命体……ですが、人は決してドラゴンに劣っていません」
「劣っていない?」
「そうです。ドラゴンはその強靭な肉体を持つからこそ、お腹が空けばそこら辺にいる獣を狩り、強靭な肉体を持つからこそ、目をつぶればそこが寝床になります。それに比べ、人は弱い生き物だから、安定した生活を得る為に農作を行い、弱い生き物だから家を造ります」
「それでは、人はドラゴンに劣るのでは?」
王様の言う通り、ドラゴンと人を比べるのは甚だしい行為。
ドラゴンからしたら、人間という存在は、そこら辺の獣と変わらいように思われるいるだろうが、
「では、ドラゴンに、自分で食料を作る力がありますか?ドラゴンが家を造って住んでいる所を見た事があります?」
「うむ、それは無いな……弱いからこそ、手にした力か」
「人は、そこら辺の獣と違います。一つ先を進んでいるのです。生き物という観点だけで考えれば、間違い無く軍配はドラゴンに上がります……しかし、文化という意味では人は全ての生き物の頂点に立っていると言っても過言ではありません」
人間もまた、別の分野で頂点に立っている生き物なのだ。




