異世界のアフレクションネクロマンサー336
「あの…乗れるというのは?」
明らかに自分を見て、合点がいくという風な顔をしているが、自分はそんな何かのキーパーソンとなるような人物では無いが、話の流れ的には戦闘機に乗せて貰えるというより、乗れるようになるという雰囲気。
「もしかして、新しい戦闘機が造られたんですか?」
先生が自分を呼んだのは、戦闘機に乗りたくても乗れない兵士の為に新しく戦闘機を造ったからで、そのテストパイロットとして選んでくれたのかもしれない。
そう考えればこの雰囲気も、自分が選ばれたのも納得出来る。
「見せて頂く事は出来ませんか?」
気がはやる。
諦めずに、パイロット候補生になる為に、自分なりの努力をして来たのは事実だが、だからといって、常に前向きだったわけでは無い。
同期の彼は、ドラゴンを始末するという願いを叶える為に、見事にパイロット候補生になったのに、自分は吐き気を催して戦闘機の操縦がままならなかった。
戦闘機に乗って酔うのは、個人の差があったが、それでも自分は酷い方で、
「仕方ねぇよ。大人だって酔っちまうんだから……戦闘機は俺に任せておいてくれ、お前はお前の方法でドラゴンを追い詰めて欲しい」
戦闘機に乗れなかった時は、彼の言う通り、戦闘機の整備とか補給とかの裏方に徹しようとも思っていたが、それは戦闘機に乗るという決意を諦めるという事。
薬を用意するというのは、戦闘機に乗る為の前向きな意思とも言えるかもしれないが、自分の才能の無さに苦悩して、何とかパイロット候補生になろうという悪足搔きの結晶でもあった。
手の届かなかった希望に、手が届くかもしれない……心に混ざり込んでいた屈折していた思いが、浄化されるかもしれない。
はやる気持ちを抑えきれず、その戦闘機を見せて欲しいとお願いすると、
「あぁ…準備をするから、ここで待ってなさい。先生もすぐに来るから」
工房の人達は、自分にここで待つように言うのであった。




