異世界のアフレクションネクロマンサー335
「でも、これだけの物を運ぶとなると一大事ですね」
「まぁな。だが、こっちで戦闘機用の工房が間も無く完成するらしい。そうしたら、我々は徴兵される」
「……好きだったんですけどね。町暮らし」
「そうだな…街から来た人達を支える為に町に下ったが、これからは国の為に、街に戻らないといけない」
親方達はその昔、街の工房で働いていたが、町の方で職人が欲しいという願いに応える為に、志願して町に下った。
街から、町に下るというのは、基本的には夫を亡くした人達か、夫が病床に伏せていたり、戦争に参加出来なくなる程に怪我を負ったりする人なので、町には男手が少なくなるという問題を抱えていた。
なので、それを解消する為に、ある程度年を取った者には町へと移り住むように要請が来る事がある。
人によっては、街に残って余生を過ごしたいと願う者もいれば、親方のように最後の務めと言って、町に下ってくれる。
そして、町へと下った者達は、男手として労働をするだけでなく、体の傷や、心の傷を負った人達のケアをしていたりするので、
「あっ…親方、あの子は」
「んっ?おぉ、少年。今日は奉仕活動は休みの日か?」
ドラゴンに父親を殺された子供として、自分の事を知っていたりする。
「先生に呼ばれて、ここに来たんです」
親し気に、自分の方に手を振ってくれる工房の人達に一礼してから近付き、自分が先生に呼ばれてここに来たと伝えると、
「先生?先生を知っているのかい?」
「えっ?」
親方が目を丸くして、驚いたのだが、
「親方、助手さんの方ですよ……助手さんは、先生と呼ばれるのを畏れ多いと言ってましたが、先生と呼ぶに相応しい方ですから、みんな、自然と「先生」と呼んでいるんです」
「あぁ…そうかそうだったな……」
他の方から、何か耳打ちをされると納得したのか頷いて、丸くなっていた目が元に戻るのだが、元に戻った目が、今度は感慨深そうに自分の方を見据え、
「助…先生が呼んだのか……そう、お考えなのか……」
「確かに…それだったら乗れますよね……にしても、随分と思い切った事をされるのですね」
周りの人達も、何かに納得して顔を見合わせている。




