異世界のアフレクションネクロマンサー332
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朝が来る。
いつもなら、朝の奉仕活動の為にエプロンか、箒を持って出掛けるけれど、
「薬は飲んだ」
今日は、それらを持たずに、先生に指定された場所へと来るように言われている。
新しい戦闘機の納品される日。
まだ誰かのパートナーになっていない戦闘機。
その戦闘機が納品するのを手伝って欲しというのは、顔合わせをさせてくれるという事で、自分にパイロット候補生としてのチャンスをもう一度くれるという事のはず。
まだ少し残る眠気を、手洗い場の水で顔を濡らして洗い流しながら、この後に起きる事を想像する。
今度こそは上手くやる、上手くやって戦闘機を貰い、ドラゴンスレイヤーとなって……
「よっ!!朝っぱらから、元気だな」
「んっ?あぁ、おはよう」
濡らした顔を拭けと、タオルが渡されたので、遠慮無く受け取ってゴシゴシと顔を拭いていると、
「先生からお呼びだって?やったな、これで晴れてパイロット候補生の仲間入りだ」
「いや、そうじゃないよ。パイロット候補生として、もう一度試験をしてくれるという事だと思うよ」
自分が今日、先生に呼ばれているのを知っている同期が、話掛けてくれる。
「何言ってんだ。こっちは今日一日、先生抜きでの飛行訓練なんだぜ?戦闘機の納品で忙しいと言っても、午前中までだろうし……午後からは付きっきりで面倒見て貰えるんじゃないのか?」
「だと良いけど」
これからの事を思うと、顔を洗っただけなのに、もう労働をした後のような疲労感を感じたが、
「リラックスだ」
「だね」
同期の、心を察しての言葉のお陰で緊張に耐えられる。
「飯は腹八分目にしたか?」
「もちろん」
「キャラメルと紅茶は持った……いや、それはこれからか」
「そうだね。まだ、正式なパイロット候補生じゃないから支給されていないんだ」
まるで母親が、子供が忘れ物をしていないかチェックをするかのように、二人で気になる事を短くチェックしていたのだが、
「父さん達を殺された復讐心は、忘れていないよな?」
「忘れたりする訳無いじゃないか」
渡されたタオルを籠の中に放り込んで一息つくと、お互いに顔を向き合わせる。




