異世界のアフレクションネクロマンサー331
その時の事を思えば、彼が言っているのは決して大げさでは無い。
恐怖に囚われている、母親の心を真に解放するというのなら、言っている事は正しい。
「必死なんだね……」
「はい」
いっそ嘘を付けばと思うかもしれないが、心に傷を負っている人達は、何故かそういう事に敏感で、我々が気遣った事を簡単に見抜いてしまう。
「……所で、君は明日の朝から仕事なんだよね?」
「えっ?あっ…はい。明日の予定は、朝は街のお店の奉仕活動か、街の清掃活動。午後からは鍛錬と勉学に勤しむ事になります」
「そうだよね」
前に彼から聞いていた通りの予定。
兵士になるまでは社会を学ぶ事と、街の造形に詳しくなるために清掃活動をし、その活動のお陰で、兵士になってからの一年間は、街からの優遇と免除も受けられるのだが、
「……ちょっと待っててくれるかな」
実は、孤児の中からもパイロット候補生は出ていて、その子達は、特別免除として兵士として認められ、パイロット候補生としてのカリキュラムを受けて貰っている。
もちろん、その子達は兵士として活動する事になるので、特例処置として奉仕活動を免除し、町にいる家族を呼び戻すなら援助いして、給与も一時的に割増しにしている。
パイロット候補生になれた者は特別な恩恵を受けているが、なれなかった者達は、いつも通りの生活をしなければならず、パイロット候補生になれなかった彼は、いつもの奉仕活動、勉学や鍛錬に勤しまなければならないのだが、
「これを、担当の方に私来てくれないか」
「これは?」
「嘆願書だよ」
私は、彼をしばらく、付き人として専属させたいという旨を書いた紙を一枚作っていた。




